イラン:覇権拡大の背景にIS台頭…イラクやシリアが支持

毎日新聞 2015年03月12日 22時00分(最終更新 03月13日 01時38分)

 【テヘラン田中龍士】イランはISの脅威に対抗する形で、同じイスラム教シーア派中心の隣国イラクなどで存在感を増している。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)に北部から西部を支配されるイラク政府は、欧米からも空爆などで支援を受けているが、肝心の地上戦ではイランの後押しを受けたシーア派民兵や、北部を地盤とするクルド人部隊が頼みの綱なのが実情だからだ。

 「ISの台頭がきっかけで、イランはパワフルな国として認識された」。中東の治安情勢に詳しいテヘラン大のハッサン・アフマディアン准教授はイランの覇権拡大の背景をこう分析し、「イランが貢献している地域の安定化は、欧米などの他国のためにもなっている」と語った。

 シーア派を異端視するイスラム教スンニ派の過激派ISは、欧米だけでなくイランにとっても不倶戴天(ふぐたいてん)の敵。イランは米国が主導する有志国連合の空爆を「有効な手段でない」と批判する一方、革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ」の最高司令官らをイラクやシリアに派遣し、ISと戦う両国軍に「助言」を行うなど支援を続けている。

 テヘランにあるイマムホセイン大のゴルバンアリ・マフブビ教授(国際関係)はイラクでのイランの活動について、「当初、(シーア派と対立する)スンニ派住民が反発し、クルド人も警戒したが、最近はイランに対する信用が増してきた」と分析する。

 ただ、イランが宗派や民族の違いを超え、全幅の信頼を得ているとは言えない。「IS掃討」の共通目標の下で協調を保っているに過ぎない。イラクではアラブ人のスンニ派住民が人口の20%、同派が多いクルド人が約15%を占める。スンニ派の影響力は大きく、イランのイラクへの深入りは、再び宗派対立を顕在化させる危険性もはらむ。

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