子供を亡くした哀しみは終生癒えることがないという。苦労して育てた存在が自分より先に、この世からいなくなる。最大の親不孝とも言われる。超高齢社会を迎えた現在、決して他人事ではない。
長生きなんかしなければ
「50歳の次男が交通事故で亡くなって2年になりますが、自分の体の一部を切り取られたような哀しみに変わりはありません。何度、『私が代わりに死ねばよかったのに』と思ったことか……。
息子が亡くなったとき、孫はまだ高校1年生でした。中学から私立の名門校に通い、部活のサッカーも頑張っていました。息子も、子供の成長をとても楽しみにしていたんです。その孫や息子の嫁のことを思うと自分がしっかりしなければ、とは思いましたが、息子を亡くした直後は眠れない夜が続きました」(篠崎信二さん・仮名・79歳)
逆縁—。親が子を弔うことを指す。
65歳以上の高齢者が人口の4分の1を占める長寿社会であるがゆえに、不慮の事故や病気で子供のほうが先に亡くなってしまうケースが増えている。冒頭の篠崎さんも、次男が高校生の子供を遺して非業の死を遂げた。
「長男家族は離れたところに住んでいるので、年に3回くらいしか会いませんが、次男は近所に住んでいたため、頻繁に遊びに来ていたんです。息子が亡くなってから半年くらいは孫も遊びに来ていましたが、最近はほとんど顔を見せなくなりました。もっと大きくなったら、どんどん離れてしまうんでしょうね。ますます寂しくなるんでしょうね。長男に迷惑をかけないために、せめて介護が必要な病気にならないよう、それだけを祈って生きている日々です」
息子を、娘を喪う。当事者にしかわかり得ない哀しみに暮れ、「もし生きていれば」、「なぜ死んだのか」と自問を繰り返す。答えはない。あるのは、「こんなに辛い思いをするくらいなら、長生きなんかしなければよかった」という後悔だけだ。
身を抉られるほど辛い
ドラマ『家なき子』や『スウィート・ホーム』などで一癖ある女性を演じ、名脇役として評価の高かった深浦加奈子さん。彼女ががんで亡くなったのは、'08年のことだった。享年48。最期を看取った母・京子さん(86歳)が苦しみを打ち明ける。
「加奈子が亡くなってからというもの、生きることがとても苦しかった。娘に先立たれることは、体が抉り取られるほど辛い。娘を喪ってなお生きる意味が見出せず、食事が喉を通らなくなり、何を食べても砂を噛んでいるように感じました。毎晩、加奈子のことを思い出し、悔恨の念が押し寄せてくる。母親として加奈子に何をしてあげられたんだろうって、自問し続けているうちに夜が明けていました」
加奈子さんに腫瘍が見つかったのは'03年。摘出手術は成功したが、すでにリンパに転移し、病状は進行していた。両親や加奈子さんの姉、その夫が一丸となって闘病を支えた。「私、大丈夫。もういいの」が、家族に遺した最後の言葉だった。
京子さんが続ける。
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