土曜サスペンスドラマ「多摩南署たたき上げ刑事・近松丙吉6 仰角の写真」 2015.03.28


(近松春子)あなた!あなた!
(近松丙吉)ん…?おはよう。
署の方が見えてますけど。
署?
(田中)おはようございます!誰?
(田中)本日より八王子中央署地域課から多摩南署刑事課強行犯係に配属されました田中猛29歳です!よろしくお願いいたします!!はぁ…君か。
話は聞いてたよ。
あと2時間もすりゃ署で会えるじゃないか。
いえ諸先輩より近松主任の人となりを聞いておりましたので一刻も早くご挨拶にと伺ったしだいでございます!あぁそう…。
まぁ頑張って。
はい!〜
(作業員)おい!!人が死んでるぞ!おい!!初めて強行犯係に配属されて気持が高ぶってたんでしょうね。
そうだな。
きれいな目をしてましたね。
ん?さっきの人。
穢れなんてまるで知らないって目で…。
初めのうちは誰でもそうだ。
ん…?いくつもヤマ踏んで人の命が軽いと錯覚していくうちにきれいな目もだんだん曇ってくる。
・あぁ…いい。
俺が出る。
・・はい近松です。

(村越)近さん殺しだ。
・現場は多摩市諏訪南の山林。
・木工センターの裏から若い女のホトケが出た。
・そっちに車回すよ。
わかりました。
事件ですか?うん。
着替え出してくれ。

(湯のみが割れる音)
(パトカーのサイレン)〜
(山形)ご苦労さん。
(村越)山形管理官ご苦労さまです。

(山形)扼殺ですか。
(村越)はい。
死後およそ丸1日経過しています。
身元は?それはまだ…。
所持品も見当たりませんでしたし身分を証明するようなものは何ひとつ身につけておりませんでした。
第一発見者は?
(村越)このセンターの作業員です。
(村越)朝一番でここへ来て作業を始めようとしたときに発見したそうです。
着衣は汚れておりますが付近に争った形跡はありませんし…。
ということはここで殺されたかどうかもわからないんですね。
おう近さん!ご苦労さん。
例えばどこか別な場所で殺害されてあの上から投げ落とされた…。
そういう可能性もあるということですか。
そりゃまだわからんよ!〜
(田中)あっ!主任。
先ほどは大変失礼いたしました。
いやしかし配属されて初めてのヤマが若い女のホトケなんてツイてるのかツイてないのかわかりませんね!やっぱり強姦目的でしょうかね。
でも抵抗されて絞め殺して死体を捨てた…よくある手口ですよね。
でもそうか…そうなるとなんでガイシャの所持品が!?ということは強盗の線ですかね!少し静かにしてくれんか。
すみません…。

(村越)では司法解剖の結果から。
(浅井)はい!死因は手で頚部を圧迫しての窒息死。
監察官の所見ではかなりの力で締められていてホシは男性の可能性が高いということです。
(浅井)死亡推定時刻は昨日14日の午前11時〜午後1時の間と見られます。
生前および死後の情交凌辱の痕跡は認められません。
以上です。
身元はまだ割れんのか?
(刑事)現在都内各方面に家出人捜索願の照会を行っています。
並行して歯の治療跡から都内の歯科医を当たっていますがまだ身元は…。
まずガイシャの身元割り出しに全力をあげてください。
痴情のもつれあるいは怨恨の線も捨てきれませんが所持品が紛失していることから強盗目的の線も考えられます。
従って前歴者の手口捜査等…。
ちょっとすみません。
よろしいでしょうか?なんですか!?ガイシャはどの方向から首を絞められたんでしょうか?前からです。
そうなると顔見知りの犯行とは考えられませんか?一概には言えないでしょう。
ああそうですか…。
(山形)それから殺害現場を早急に特定してください。
付近に争った跡がないこと車のタイヤ痕が複数あったことから見てガイシャは車の中で殺されて捨てられたかあるいは別の場所で殺されて現場に遺棄されたかどちらかの可能性が高いと思われます。
たびたびすみません。
現場付近で発見された毎朝新聞のボールペンからは指紋は出たんでしょうか?釘を刺しておきますがお得意の見込み捜査で不用意に毎朝新聞に近づくのは慎んでくださいいいですね。
ですが管理官…。
(村越)近さん!近松さんあなたにはガイシャの身元割り出しに当たっていただきます。
この本部に残って家出人捜索願いを調べてください。
(山形)お願いします以上です!
(村越)田中くんちょっと!はい!〜
(田中)すみません!昨日このへんで不審な車見かけませんでしたか?いや見てないですね。
そうですか…。
ではこういった女性は?
(刑事)この女性なんですがね…。
(店員)この店には来なかったですね。
(ドアが開く音)ただいま戻りました!お疲れさまです!主任当たりはありましたか?そっちは?ダメです。
死亡推定時刻に現場付近に来ていた作業員に当たってみましたが何も目撃していません。
あの…近松主任にお聞きしたいことがあるんですけれども。
捜査本部が立つたびに湯飲みを割るというのは本当でしょうか?それでホシが割れるというゲンかつぎだとか。
すみません。
(ドアが開く音)
(婦警)主任もしかしたら身内じゃないかという方がお見えになってるんですけど。
お身内といいますと?
(悠子)典子っていう妹なんですけど3日前から旅行に出かけたまま連絡が取れなくなって…。
(田中)よろしいでしょうか?〜典子…どうして…!?
(悠子)典子…典子!いや…!
(村越)ガイシャは木村典子25歳。
住所は東京都大田区北蒲田8の24の8メゾンドール蒲田205。
職業はフリーのカメラマン。
ご苦労さまです。
妹さん写真をやってらしたんですか?ええ…昔から旅が好きでルポもできるカメラマンになりたいって言ってたんです。
短大を出てからも旅の雑誌で仕事をしながらあちこち出かけては写真を撮っていたみたいです。
(田中)あっこれ小田原城ですね。
なんでわかる?この城は本来五層で作られるはずの天守閣を三層に縮小したんで他の城と比べて大きいのが特徴なんですよ!へぇ…。
今度も仕事だったんですか?いえプライベートだって言ってました。
どちらへ行かれたかご存じですか?東伊豆方面に行くとだけ…。
東伊豆ですか…どなたかお連れは?いいえ…仕事でもプライベートでも妹はいつも1人で動いてました。
昔から人見知りで友達も数えるほどしかいませんでしたから。
あの…恋人のような方は?…いなかったと思います。
典子は…殺されたんでしょうか?はい…残念ながら。
お願いです!捕まえてください!まだ25歳だったんです。
妹の人生はこれからだったんです!それなのに…お願いです…お願いします!
(悠子)どうぞ…。
恐縮です。
(佐竹)おかえり。
来てくれたの?お義母さんに呼ばれてね…大変だったね。
失礼ですがこちらは?佐竹といいます。
この悠子さんの婚約者といったところです。
ねぇ母さんは?今奥で横になってる。
忠雄くんがついてるよ。
(忠雄)母さん寝てなきゃダメだよ!母さん!?母さん起きてきて大丈夫なの!?
(敏江)こちらの方は?刑事さん…。
じゃあ…あぁ…。
典子が死んだ…典子があの子がなんで…。
典子が向こうからこれを送ってきたんです。
それなのにこれがウチに着いたときにはもう典子が死んでたなんて…あんまりです…。
お母さん少し休もうね?…あの。
お辛いときに大変申し訳ないんですが典子さんが旅行に出かけられた前後何かお気づきのことはありませんでしたでしょうか?…あの子が突然家を出てもう1年半になるんです。
母親として気付いてやれることなんて何もありません…。
だから一人暮らしなんかやめてって言ったのに…。
お母さん…ね。
電話…。
あの子が出かけたあくる日男の人から電話がありました。
男の人ですか?ええ。
たしか大友とかいう人でした。
いないって言ったらすぐ切れてしまいましたけど。
大友さん…心当たりは?…いいえ。
そうですか。
失礼します。
はい田中です…え?…わかりました。
主任ちょっとすみません。
…失礼。
ガイシャの靴の裏に付着した土の成分に現場のものではない土が混じっていたそうです。
そうか。
(内儀)どうもありがとうございました。
またどうぞよろしくお願いいたします。
すみません。
こんにちは。
東京の多摩南署の者なんですが
(内儀)はい。
4日前の13日。
この女性はこちらに来ました?
(内儀)ええ。
この人だったら確かにウチに来ましたよ。
お一人で見えていろいろ買っていただいてよく覚えてますよ。
どこへ泊まるかなんて言ってませんよね?いや…たしかねプチホテルでアルシオンだって言ってましたけど。
(田中)間違いありませんか?
(フロント係)ええ。
13日にこちらで1泊されてますが何時頃着いたか覚えてらっしゃいませんか?
(フロント係)少々お待ちください。
すみません。
(フロント係)3時半頃ですね。
伊東のほうを回ってきたとおっしゃってました。
チェックインされたあとは…。
すぐにまたお出かけになりました。
どこへ行ったかわかりますか?城ヶ崎だと思います。
吊り橋まで歩いて4時に着けるかとおっしゃってましたから。
その吊り橋というのはここから30分ぐらいで行けるところなんでしょうか?ええ。
道に迷いさえしなければ。
(田中)でお戻りになられたのは?たしか…7時過ぎでしたか。
1人でですか?
(フロント係)ええお一人で。
あくる朝9時過ぎにチェックアウトされてリュックを背負ってお元気な様子で出ていかれましたけど。
ホテルを出てからの足取りが途絶えてましてね。
それでこちらにご協力をと。
(三沢)やはりこちらで殺害されたとお考えですか?はぁその可能性は高いとにらんでます。
…なるほど。
木村典子ねぇ…。
おい岡島君この写真大至急焼き増ししてくれ。
(岡島)あわかりました。
…あれ?係長これあの女じゃないですか?ん?ほら2年前に深奈で起きた水難事故の目撃者ですよ。
ああ!すみませんその水難事故というのは?ええちょうど2年前の今頃でした。
伊豆の深奈の渓流でバーベキューに来ていた女子中学生が1人水死するという事故がありましてね。
(岡島)川にあったボートに乗って遊んでいたところ繋いでいた綱が外れてボートが流されたんです。
水死したのはバイオリン教室に通っていた中2の少女でもう1人はなんとか助けられたんですがその子の話ですとなんで綱が外れたのかわからない知らないうちにボートが流されていてその時はもう…。
弓枝:目ぇ開けて!真由美ちゃん!
(岡島)引率していたのは成島弓枝というバイオリン教室を主宰していた女性で一緒に来ていた同級生の自分の娘も助けようとして転んで右の足首を複雑骨折する大ケガをしたんです。
当時母親の弓枝はずいぶん叩かれましてね…。
監督者のはずの弓枝が目を離した隙に起きた事故だということがわかってその責任を問われたんです。
それを大手の毎朝新聞沼津支局の記者が大々的に書き立てましてね…。
毎朝新聞…。
(岡島)しかも間の悪いことに成島弓枝の夫というのが地元の有力紙駿河日報という地方紙の事件記者だったんです。
その事故を木村典子が?
(岡島)ええ…。
弓枝さんも娘の美保さんも危険を承知で流された2人を助けようとしていた。
私はちゃんと見ていたと言って写真も撮ってました。
これがその記事ですね。
でもこの記事が出たのを境に弓枝も夫の成島も救われたんです。
言ってみれば美談の主人公に変わったんですね。
(海老原)成島はあいにく出張に出ていますが…。
あぁ…。
いつお戻りに?
(海老原)今夜自宅に戻るって言ってましたが…。
お手数ですがこの記事どなたが書かれたかわかりますか?
(柚木)確かにこの記事を書いたのは僕ですよ。
もっとも去年交通事故に遭って社会部はお払い箱になりましたけど…。
どうぞ。
文芸部…。
あっじゃあ今は成島さんと?
(柚木)ええ。
先輩も社会部から文芸部に移ったんです。
そうですか…。
実はこの木村典子さんなんですが…。
知ってます。
殺されたんでしょ?えっ…。
(柚木)あっいえ…。
通信局の配信記事を見たんです。
…で容疑者出たんですか?いやそれはまだ…。
まさかこの事故と関係があるとでも?あっすみません。
この記事なんですが誰が書いたかわかりますか?
(柚木)あぁ大友っていう記者です。
大友?敏江:男の人から電話がありました。
たしか大友とかいう人でした
(柚木)なるほどね。
大友さんなら動機があるかもしれないな…。
それどういうことでしょう?えっ?いやだってこの記事が原因で大友さん社会部外されたんですよ。
(柚木)木村典子の目撃証言が出て取材不足の中傷記事だということになりましてね…。
まぁ腕利きの記者でしたからいずれ本社に戻ってキャップになるんだろうって話だったんですけどね。
あぁそうか…。
それで逆恨みしたのかな?大友さん今どちらに?東京の多摩通信部にいるって話ですよ。
多摩ですか…。
(柚木)えぇ。
これで決まりじゃないですか?動機は十分ある。
伊豆にも多摩にも土地勘がある。
うん!近松主任と組ませていただいたうえにホシまで挙げられるなんて感激です!お前は先に戻って大友の身辺洗ってくれ。
は?俺は今夜成島に会って明日は城ヶ崎を回ってみる。
城ヶ崎って…お一人で動かれるつもりですか?ホテルで聞いた話が気になるんだ!
(佐竹)なあ…典ちゃんホントは男がいたんじゃないのか?何度同じこと聞いたら気が済むの?相手の名前聞いてないのか?いもしない人の名前聞けるわけないでしょ…。
いもしない相手か…。
突然伺いまして申し訳ありません。
どうぞ。
(雅代)じゃあ弓枝さん失礼するわね。
お客さんでしたか。
すみません。
少しお待ちください。
はい。
でもよかったわよね遠くの高校に行って!
(雅代)地元の高校に行ってたらまた美保ちゃん昔みたいにイジメられてるとこよ!
(弓枝)大友さんて毎朝新聞の大友さんですか?はい。
その記者の書いた記事でかなり迷惑を被ったとお聞きしましたが…。
私がいけなかったんです。
ボートが流されたのは私が目を離している間のことでしたから…。
それを木村典子さんの証言で救われた…。
本当に申し訳ないことをしたと思ってます!だから…どんな非難も甘んじて受けるつもりでした。
けど木村さんにはいくら感謝しても足りないくらいに思っています。
それがあんな形で亡くなるなんて…。

(美保)ママ?
(弓枝)美保ちゃんどうしたの?
(美保)雅代おばさんもう帰ったの?えぇ…。
娘さんですか?ええ。
高校1年生なんです。
あぁ。
(扉が開く音)
(成島)おっただいま!東京の多摩南署の近松と申します。
申し訳ありませんこんなところで。
あの事故のことはなるべく思い出させたくないもんでね。
いやわかります。
家内の言うとおり木村さんのおかげで私たち家族は救われたんです。
それがあんなことになるとは…。
ご存じだったんですね彼女が殺されたことは。
実は大友さんという記者のことなんですが。
あの事故の後東京の通信部に配属されたとか。
そのことで木村典子を恨んでいたようなことは…?彼を疑ってるんですか?どう思われます?うん…。
確かにきっかけは彼女の証言だったかもしれません。
けどそんなことでいちいち相手を恨んでたんじゃ記者なんかやってられません。
そうは思われませんか。
しかしお互い因果な商売ですよね。
自分のものさしを信じていても時としてそれが曲がってることもある。
そんなご経験はありませんか?あっ…失礼。
お話というのはそのことですか?もう一ついいでしょうか?奥さんはなぜあそこまでご自分を責めてらっしゃるんでしょう?美保…。
娘を止めたんです。
キャーッ!誰か!助けて!
(成島)そのとき異変を知って駆けつけた家内が自分の娘かわいさに止めてなければ美保が綱を放すこともなかった。
そしたら誰も死ぬことはなかった。
家内はそんなふうに思い込んでいます。
そうでしたか。
《典子は4時に誰と待ち合わせをしていたんだろうか?大友なのか?それとも…。
いずれにしてもここで誰かと会っていた可能性は強い》悠子:お願いです捕まえてください。
まだ25歳だったんです。
妹の人生はこれからだったんです
(田中)いかがでしたか?城ヶ崎のほうは。
うんまぁ…そっちは?えっ?大当たりでしたよ。
大友の勤めている通信部死体発見現場とはすぐ近くでしたし大友の行きつけの飲み屋でおもしろい話が聞けましたよ。
店主:大友さん奥さんと別れたんだよ。
2年前の事故の記事がもとでうまくいかなくなったって話でね。
あぁ…。
こちらによくみえるんですか?1人で来ちゃグチばっかりこぼしてるよ。
俺はハメられたんだ。
駿河日報のヤツらにハメられたんだとか言ってね駿河日報にハメられた?わかりましたじゃあ基本的にはその線ってことで。
おぉ近さんご苦労さん。
お手柄だったな田中から聞いたよ。
今その線で動いてるとこだ。
えっ?これから大友を任意同行します。
任意同行?死体遺棄現場は大友の生活圏。
ガイシャとは面識もあるしもちろん動機も十分あります。
指紋こそ出ませんでしたが毎朝新聞のボールペンっていう物証もある。
ちょっと待ってください管理官。
(村越)なんだい近さん。
なんかできすぎだとは思いませんか。
どういうことです?はぁ。
はっきりとは言えないんですが今大友をホシと決めつけるのは早すぎるんじゃないでしょうか。
だってネタ引っ張ってきたの近さんだろう。
はぁ。
いやしかし自分に疑いがかかることを承知でわざわざ近くに遺体を捨てますかね。
それに木村典子は城ヶ崎で誰かと待ち合わせをしていたフシもあるんです。
その相手を突き止めてからでも…。
(山形)確証はあったんですか?はっ?典子が誰かと会っていたっていう証拠ですよ。
いやそれはこれから…。
得意の刑事の勘ってやつですか。
話になりませんね。
いやしかし管理官。
(大友)なんすか?
(浅井)大友隆彦さんですね。
そうですが。
木村典子殺害の件でお聞きしたいことがあります。
(山形)早速ですが木村典子さんご存じですね?
(大友)さっき刑事さんから聞いたばかりですよ。
この近くでホトケになってた女だとか。
(山形)それだけですか?言ってる意味がわかりませんね。
(山形)2年前伊豆で起きた水難事故の目撃者ですよ。
伊豆?あぁそういえば。
あなたにとっては忘れられない名前のはずなんですがね。
なるほどそういうことですか。
彼女の目撃証言のせいでこちらに配属されたとか?よくご存じですね。
確かに彼女を恨んだこともありましたよ。
けど私は彼女とは一度も会ったことがないんですよ。
その女をどうやって殺したというんです?彼女はあなたの目と鼻の先で亡くなっていたんですよね。
偶然でしょ!それとも誰かが…。
(浅井)では当日のアリバイを聞かせてもらいましょうか?14日の午前11時頃から1時頃どちらにいたのか。
その時間なら毎日あの部屋でつまんない記事書いてますよ。
その日も朝から閉じこもって誰とも会わなかったと思いますよ。
(柚木)先輩!おっ!
(柚木)大友が典子殺しの参考人として警察に呼ばれたそうですよ。
お前どうしてそんなことを?あ…ある筋の情報です。
やっぱあれっすかね?逆恨みですかね?大友が?あなたの記事で成島弓枝と娘の美保が非難されて義憤にかられた木村典子が目撃情報を提供した。
それであなたは失脚した。
そこまでは間違いないですね?今「義憤」と言いましたか?冗談じゃない!
(机を叩く音)
(山形)どういうことです?あの女はただ自分の写真を載せてもらいたくてネタを流しただけですよ。
(大友)駿河日報に電話する前にウチの支局にも電話をかけてきたんです。
「現場の決定的な証拠写真がある。
それを載せてくれないか」ってね。
けど電話に出たヤツのミスで写真は結局駿河日報に横取りされたんですよ。
おかげで非難の渦中にいた成島母娘はあっという間に美談の主人公に変わった!
(山形)これが現場に落ちてました。
(山形)このボールペン毎朝新聞のものですよね。
あなた今どきパソコンも使わないそうですね。
アナログ派のあなたの愛用品だったんじゃないんですか?へぇ…そうでしたか。
これと同じ物がね…。
典子が殺された日アンタが彼女の実家に電話をかけたこともわかってる!
(山形)なんかのアリバイ作りのつもりだったんじゃないのかね!へぇ…電話までね。
(扉を開閉する音)
(婦警)主任。
被害者のお姉さんがお見えになってます。
(悠子)今日妹のアパートに伊豆の写真屋さんから送られてきたんです。
連絡したら「いつになっても取りにこないから送った」って言ってました。
刑事さん何か手がかりにはならないでしょうか?妹さんが写真を出したのはいつのことなんですか?死んだ前の日だそうです。
閉店間際に来て「明日の昼頃には取りに来る」。
妹はそう言ってたらしいんです。
すみませんネガを見せてください。
いえデジタルですから。
デジタル?
(悠子)デジカメです。
これがメモリーカードといってネガの代わりなんです。
はあ…。
どうも。
妹さん他にも三脚を持ってらしたんですね。
えっ?いや部屋に古い三脚があったもんだから…。
フロント係:城ヶ崎だと思います。
吊り橋まで歩いて4時に着けるかとおっしゃってましたから城ヶ崎か…。
・あなた。
おう!どうした?着替えですよ。
おっすまんな。
な春子。
お前セルフタイマーで写真撮るとき笑うか?なんですか?いきなり。
いやだからジーカチャッて写真撮るときだよ!さあどうかしらね。
あんまり経験ないけどそんなに笑わないんじゃ…。
そうだろう。
俺もだ!1人でやってて笑うって変だもんな。
ところがこの人見て!笑ってるんだよ。
こっちの2枚と比べてくれよ。
この2枚はどう見てもセルフで撮った写真なんだがこっちのはポーズまで取ってるんだ!この写真だけはセルフで撮ったんじゃないと思うんだがどう思う?誰かに撮ってもらったとか?ああ。
まあ観光地ですからね通りがかった人にでも…。
いや人見知りであまり家族の前でも笑顔を見せなかったらしい。
そんな女が赤の他人の前でこんなポーズまで取るか?ほら。
いわれてみればこんな自然な笑顔知ってる人に撮ってもらったんじゃなければ出来ないのかもしれないわね。
うん。
あっそれに人にシャッターを押してもらうときってもうちょっと簡単な場所選ぶんじゃないかしら?普通は。
ここだな。
典子はここに立っていた。
するとカメラは…。
よし!え〜…タイマー…。
シャッターこれか。
(カメラのシャッター音)ダメか…。
撮りましょうか?え?いやご心配なく。
ちょっと確認してるだけだから。
どうもどうも。
…そうですか。
(カメラのシャッター音)やっぱりダメか…。
ということは誰かに撮ってもらったとしか考えられんな。
誰なんだ…そこにいたのは。

(主人)この女の人は見たことないです。
けど13日の日にでしたね?その日はね…そうですよ!刑事さんと同じようなことを聞きにきた男の人がいましたよ。
男…。
えぇあの…この女性を見かけなかったかと言って。
どんな男でした?いやどんな男って言われても…。
…そうだ!あのね首のこの辺にねホクロがありました。
ここにホクロですか…。
えぇ。
(浅井)へらず口たたいてないでいいかげん本当のことしゃべったらどうなんだ!フッ…そりゃ私もまだブン屋のはしくれのつもりですから捜査にはいっくらでも協力しますよ。
けど…やってないものはやってないって答えるしかないでしょう!
(ドアの開く音)
(田中)主任!どこ行ってたんですか!?ったく食えないブン屋ですよ。
やれ典子の交友関係はどうなんだとか…主任!
(ノック)失礼。
〜ありがとうございました。
どうも。

(雷鳴)どうぞ中で…。
(お鈴の音)ありがとうございました。
あの…どなたか妹さんの友人だとか仕事関係の男の方見えませんでしたか?いいえ一人も…。
そうですか。
どうもご苦労さまです。
葬儀屋さんが打ち合わせしたいって。
えぇ。
失礼します。

(忠雄)刑事さん!あぁ君はたしか…。
忠雄です。
弟の。
なんでしょうか?見たんです。
典子姉ちゃんが旅行に出かけた日の朝…。
あ…ちょっと典ちゃんに用があってね。
留守みたいだな…。
どこ行ったか知らない?旅行に行きましたけど…。
(佐竹)旅行…。
どこに?…東伊豆だって言ってました。
東伊豆…1年ほど前から典子姉ちゃんなんか明るくなったような気がして…。
それで思いきって聞いてみたんです。
彼氏でもできたのかって。
それが佐竹さんだと?僕だって信じたくありません。
けど…典子姉ちゃんの相手が佐竹さんだったら悠子姉ちゃんにも言うに言えないだろうし悠子姉ちゃんには悪いけど…。
僕…あの人のことが大嫌いなんです。
典子姉ちゃんのことを殺したのももしかしたら…。
(岡島)はいわかりました。
みそのですね。
はいはい了解しました。
はいどうも。
(出前の男)まいど!ありがとうございま〜す。
あどうも。
どういうつもりですか!単独捜査は許さないと言ったはずでしょう!私の指示を無視するつもりですか!…近さんどういうことなんだ。
黙ってないでなんとか言ってくれよ!・はい多摩南署。
…私です近松です。
どうでした?間違いありませんか…。
そうですか。
お手数おかけしました。
ありがとうございました。
やっぱり佐竹でした。
木村典子が伊豆で会っていたのは佐竹なんです。
だからといって典子を殺したことにはならないでしょう。
いやしかしこれだけ…。
(扉の開く音)管理官!ガイシャのものと見られるリュックが発見されました。
典子の死体の発見された日の朝近くのホームレスが拾ったそうです。
(浅井)場所は大友の会社のすぐ近くのゴミ置き場です。
(山形)よし!明日の朝一番で姉の悠子を呼んでくれ。
典子のものだと確認したら大友の逮捕状を請求する。
近松さんお聞きのとおりです。
今後勝手な行動を取った場合今度こそ捜査から外れてもらいます。
〜近さん…これ以上かばいきれんよ。
ボールペンにしろリュックにしろ大友の状況はもう真っ黒なんだからさ…。
村さん…典子は間違いなく伊豆で誰かと会ってます。
それもこの佐竹の線が濃厚なんですよ。
(村越)しかし佐竹ってのは姉の婚約者なんだろう?まさか姉を裏切って佐竹と…そう言いたいのか!?そういう関係で典子を撮ったのが佐竹だとすると写真のこの笑顔の謎も解けるんです。
ということはこの写真を撮った翌日佐竹は2人の関係を清算するために…?可能性のひとつです。
〜それが事実だとしたら…。
…わかった。
やってくれ。
とにかく佐竹の傍証を固めよう。
近さん…時間ないぞ。
はい。
(従業員)14日ですか?
(従業員)あ夕方くらいに出てきたんじゃない?社長。
夕方ですか?
(従業員)あそう!覚えてる。
手形が落ちる前の日だったんじゃない?ほら!朝から金策に走り回ってたって言ってたじゃない。
うん。
いや俺も気が気じゃなかったんですけどなんとかメドが立ったっていうからホッとしたんだよな。
で…今日は社長さんは?午後出社だって言ってたけど…。
(田中)佐竹のヤツ会社が借金で火の車だっていうのに何人も女抱えちゃって…。
おまけに仕事で何度も多摩地区に来ている。
ということは土地勘もある。
…やっぱり大友じゃなくて佐竹かもしれませんね。
でも佐竹がやったとして動機はいったい何なのか?やっぱり妹のものでした。
中身は処分されてましたけど間違いなく典子の…。
あの…ちょっとよろしいでしょうか?お金を貸してたんですか?佐竹の様子がおかしいので一度問い詰めたことがあるんです。
そしたら会社がうまくいっていないので妹からお金を借りたって…。
返すあてもないのに…。
アタシたちもう別れようと思ってたところだったんです。
アタシはただ利用されてただけだったんです。
区役所の総務にいる人とつきあえば仕事を回してもらえるかもしれない…。
フフッ…バカですよね。
あ…すみませんこんなこと刑事さんに…。
あの人のこと疑ってらっしゃるんですか?
(田中)はい田中です。
少々お待ちください。
主任村越係長です。
代わりました。

(村越)近さん佐竹のヤツ典子に何度か電話かけてるぞ。
やっぱり…。
会社の電話の発信記録に典子のケータイの番号が何べんも記録されてるんだよ。
で大友の逮捕状は?・今本庁の連中が裁判所とかけあってる。
近さん時間ない。
事と次第によっちゃこっち引っぱってきてもいいぞ。
俺が責任とる!わかりました。
お出かけですか?
(佐竹)えぇ。
何でしょう?えぇ…少しお聞きしたいことがありましてね。
亡くなった木村典子さんとはどういうご関係だったんでしょうか?どういうって…もうすぐ義理の妹になる人だった…それだけですよ。
本当にそれだけですか?どういう意味ですか?金を借りてたんじゃないですか?おっしゃるとおりです。
彼女金回りがよくなってたみたいなんで…。
でもたいした額ではありません。
それだけじゃないでしょう?彼女に何回も電話をかけてますよね?え?調べはついてるんです。
事件の前日弟さんが彼女のアパートの前であなたと会ったと言ってます。
何をしに?あの日は仕事で近くに行ったのでちょっと寄ってみようと思っただけです。
お姉さんの目を盗んで彼女に言い寄っていたんじゃ?
(佐竹)冗談じゃありませんよ。
ただの金の貸し借りそれだけです。
とにかくもう少し詳しい事情をお聞きしたいんですがね。
お時間を取らせません。
どこか近くの喫茶店でも…。
(佐竹)それって任意ですよね。
そうですが?じゃお断りします。
これからちょっと大事な人と会うので。
急いでるんで。
(佐竹)ああっ!!
(衝撃音)主任…。
(刑事)今のところ事故なのかあるいは他殺なのかまだつかめていません。
逮捕状ですか?しかし警察の捜査っていうものがここまで一方的なものだとは思いませんでした。
あきれ返りましたよ。
何が言いたい?実は大切なアリバイを忘れてましてね。
アリバイ?たしか14日の11時から1時の間でしたね。
その時間なら保険屋と一緒にいましたよ。
(山形)なに!?なんでそんなこと今まで黙ってた!だから忘れてたって…。
(山形)名前は!?すみれ保険多摩支店の有田光夫とかいう名前だったかな…。
セールスに来て2時間ほど勝手なことしゃべって帰っていきましたよ。
村さん逮捕状が出たんですか?近さんえらいことになった大友のヤツ今になってアリバイがあるって言い出したんだ。
今浅井君が裏取りに行ったところだよ。

(浅井)裏が取れました間違いありません。
アリバイ成立ですか?お手間をかけて申し訳ありません。
けどお陰でいろいろと参考になりましたよ。
いずれ私が受けた扱いについて書かせてもらいますよ。
(机を叩く音)厄介なことになったな。
大友のヤツ間違いなく記事にするぞ!「これから大事な人と会う…」。
大事な人?ええ…いや昨日佐竹が別れ際に私にそう言ったんです。
ちょ…ちょっと待ってくれ…。
近さん佐竹が典子を殺したと目をつけた?はい。
じゃいったい誰が佐竹やったんだよ?自分の読みが間違っていたとすると2つのヤマは同一犯によるものかもしれません。
もう一度木村悠子に会ってきます。
佐竹さんは妹さんからお金を借りていたのはいつ頃からかわかりますか?2年ほど前からだったと思います。
少しずつ写真が売れ出してときどき家にもお金を入れてくれるようになったんです。
2年前というと…あの伊豆の水難事故があった頃ですよね。
ええ…。
写真が売れ出したのもちょうどあの事故がきっかけだったと思います。
最近佐竹さん何かおっしゃってませんでしたか?事件のことだとか妹さんのことだとか…。
いいえ…。
あ…そういえば典子の通夜の夜刑事さんが帰られたあとに駿河日報の柚木さんという方がみえました。
柚木さん?あっ!あの若い人?
(岡島)ええ柚木ならよく知ってますよ。
やっこさんとは県警時代の知り合いでしてね。
ええ。
なんだか知りませんけどねこのヤマにえらくご執心みたいで何度も電話をかけてきちゃいろいろと尋ねてきますよ。
・「遺留品はないのか?」とか「ガイシャの写真に何か写ってなかったのか?」とかもううるさいぐらいでね。
・あっ!柚木のヤツお宅にも迷惑かけてるんですか?え…いやそういうことは…。
どうもありがとうございました。
《伊豆で佐竹は典子と一緒にいた柚木を目撃した。
そのあと通夜の席で柚木をみかけて正体を知った。
そういうことか?だったらなぜ佐竹はそのことを言わなかった…。
金か?それでもめて柚木が佐竹を…》
(成島)そっかそれは残念だな。
初めての仲人だったんでそれなりに準備をしてたんだが。
おっ!柚木のヤツ仲人をたてないことにしたそうだよ。
あっそうですか。
申し訳ありません。
なんか勝手なことばっかり言って。
いいえ気になさらないでいいお式になるといいですね。
ありがとうございます。
大友が釈放されたそうですよ。
別の参考人も死んだそうです。
フッ!君はやっぱり事件屋根性が抜けてないようだな。
俺いずれ社会部に戻りたいと思ってたんです。
できれば成島さんと一緒に。
(柚木)成島さんは事実から目を背けたことがなかった。
いつも真正面から受け止めて絶対に逃げるようなことはしなかった。
俺そんな先輩見てブン屋魂叩き込まれましたから。
おいおい…ちょっと買い被りすぎじゃないのか?俺は君が思ってるような人間じゃないよ!そんな…。
(ドアが開く音)・
(美保)こんばんは!よう!美保ちゃん!柚木さん結婚するんですって?おめでとう。
ありがとう。
元気そうだね。
どう?バイオリンやってる?バイオリンはやめたの。
それより柚木さんの奥さんどんな人?えっ!?いやまあ普通の人だよ。
可もなく不可もなくって感じかな。
(美保)かわいい人なんでしょ?それはどうかな?私お願いがあるの。
(柚木)何?怖いなぁ。
結婚しても奥さんのこと大切にしてあげてね。
えっ?
(美保)仕事仕事って言い訳にして家のこと全部奥さんに押しつけるようなことだけは絶対しないでね。
約束して。
うん約束する。
でも急にどうしたの?別に。
おやすみなさい。
(成島)柚木と木村さんですか?えぇまあ…事故の件で取材をしてますからね。
面識はありますよ。
変なことを聞きますがその後2人が会っていたというようなことは…?いったい何を調べてるんですか?えぇ。
木村典子さんがこの伊豆で殺された可能性がありましてね。
そのときに撮った写真の中に妙な一枚があるんです。
これです。
これが何か?えぇ。
セルフで撮ろうとするとですねこの位置に着く前にシャッターがおりてしまうんです。
何回やっても…。
いやいや実際私がやってみたもんですから。
あぁ…つまり木村さんには連れがいた。
その連れが犯人だとそう言いたいわけですね。
偶然知り合いに会って撮ってもらったんじゃないですか。
だったらなぜその相手は名乗り出ないんですかね。
彼女が死んだことを知っている可能性は十分あるはずなんです。
うん…。
(田中)これですか現場百遍って。
でも鑑識が完璧に調べたんですから何も落ちてないんじゃないですかね。
人のやることに完璧なんかない。
おっしゃるとおりですがもう少しで日も暮れますし署に戻られたほうが…。
わかったわかったうるさいよ。
(物音)そこで何してらっしゃるんですか?
(田中)待ちなさい!〜おとなしくしなさい。
柚木さん?失礼かとは思いましたが持っていた携帯電話も調べさせてもらいました。
半年ほど前木村典子にかけてますよね?ねぇ!?何も答えてはくれませんか。
社会部でもないあなたがあそこで何を調べていたのか教えてくれるとありがたいんですがね。
沼津城ヶ崎深奈。
《柚木は逆玉の婚約者を手放したくなかった。
それで邪魔になった典子を…。
いやしかし…》
(村越)ダメだ。
(引き戸が開く音)場所がつかめん参ったよ。
村さん…村さんも柚木がやったと思いますか?近さん何言い出すんだ!?いや。
私もそう思いたいんですがね。
なんだい?なぜ隠さなきゃいけなかったんでしょうか?えっ?柚木が典子の恋人だったとしたらなぜ典子は2人の関係をひた隠しにしていたんでしょうか?それは柚木に婚約者がいたからだろ。
なぜなんだろう…。
う〜ん…。
村さんならどこで会いますか?え…えっ?いや村さんが沼津に住んでいるとして付き合っていることを隠したい女が東京に住んでいるとして。
どこで会います?それはお互い地元はまずいから俺だったら間とるな。
なるほど。
いやいやいや俺はそういう経験ないよないけどね。
田中:あっこれ小田原城ですねだな。
おそらく。
〜この1年の間にこの女性がこちらに宿泊したことありませんか?
(従業員)ええこちらにはお泊まりになられてませんですね。
そうですかありがとうございました。
この女性がこちらで食事をしたことありませんか?よく見てください。
たしかですか?
(従業員)えぇ。
この方でしたら男性の方と一緒に何度か。
相手というのはこの人ですね?
(従業員)いえこの方じゃありませんね。
違う?すみませんもう一度よく見てください。
違います。
それじゃあこの人だったですか?違います。
もっと年配の方です。
年配…。
《年配の男…。
典子は不倫でもしてたのか?だとしたら隠していた理由もうなずける。
じゃあ柚木はどうなる?何のためにコソコソ嗅ぎ回ってる?しかもひと言もしゃべらん…。
どういうことだ…》
(海老原)2人の関係ですか?ええ。
ひと言で言うと兄弟みたいなものかしら。
兄弟ですか?ええ。
社会部にいた頃から成島さん柚木くんのこと弟みたいにかわいがってたんですよ。
柚木くんのほうも心酔してたみたいで…。
「事件を見る成島さんの目には一点の曇りもない」柚木くんことあるごとに興奮してそればかりで!成島さんが文芸部に移ったのはどういう理由なんですか?2年前の娘さんの事故がきっかけですよ。
それまで成島さん家のこと放り出して事件ばかり追いかけて…。
これからは家族との時間を大切にしていこうってそう思ったんじゃないかしら。
そうでしたか…。
あの…こんなこと言っていいかしら?何か?成島さんお金に困ってるみたいなんですよ…。
お金にですか?海老原:2年前の娘さんの事故がきっかけですよ。
(浅井)あなたの記事で成島弓枝と娘の美保が非難されて義憤にかられた木村典子が目撃情報を提供した。
それであなたが失脚した…義憤にかられた…。
あの女はただ自分の写真を載せてもらいたくてネタを流しただけですよ!居酒屋の主人は大友がハメられたと言った…。
あの言葉はどういう意味なんでしょう?教えてくれませんか?言ったとおりですよ!義憤どころかあの女は僕の記事を読んでもなかったんですよ。
え…?あの記事が出た頃には木村典子はもう東京に戻ってたんです。
それに記事は静岡版にしか出なかった…。
どう転んでもあの女に読めるわけがないんですよ!ほう…。
(大友)このヤマをスクープしてまた事件屋に戻るつもりで黙ってたんですけど一つだけ教えてあげましょうか?木村典子の記事をお膳立てしたのは柚木なんかじゃありません。
成島です。
典子と成島の間には何らかの取り引きがあった。
僕はそうにらんでますよ。
《取り引き…いったい何の取り引きがあった?成島と家族を救った取り引き…。
典子は他にも何かを目撃した。
それを写真に撮っていた…》悠子:少しずつ写真が売れ出してときどき家にもお金を入れてくれるようになったんですしかしあの写真が金になるか?金か…。
成島さんお金に困ってるみたいなんですよ…あっおい!大至急だ!消費者金融の情報当たってくれ!あ?成島の借り入れ状況だよ!おい!どうだった?主任!たった今入手しましたよ!おう!まず最初が2年前の9月に100万円!これって事故のすぐあとですよね?…で最後が先週の20日に100万円!20日…。
20日って佐竹が死んだ日ですよ。
そうだったのか…。
佐竹が伊豆で目撃したのは柚木じゃない。
成島だ!ということは佐竹が成島を脅してたってことですよね?じゃあ典子の金も成島から…?しかし典子のほうは理由がわからん。
あの事故で奥さんか娘さんが何か…。
雅代:地元の高校に行ってたら美保ちゃんまた昔みたいにイジメられてるとこよ!イジメられてる…そう言ってた。
イジメ…?・娘さんがイジメられていたというのは本当でしょうか?・もし本当でしたら相手の名前を教えていただくわけにはいきませんか?・娘さんにも決してご迷惑はおかけしません。
・どなたの名前も出しません!約束します!秋山真由美遠藤佐知子…。
2人とも事故のときに居合わせた友達だ。
じゃああの事故の裏に何か!?こっちにもありませんね…。
デジカメはネガもないしお手上げですね…。
なに?
(田中)えっ?ちょっと待ってくれ…。
悠子:これがメモリーカードといってネガの代わりなんです
(田中)主任!?メモリーカードですね。
ありました!おい!このへんもっと大きくならんか?
(田中)はい。
この女の子大きくして。
(田中)はい。
これまさか…美保が舟を。
おい。
はい。
今の前に撮った写真ちょっと大きくしてくれ。
はい。
そこに杭があるだろう。
そこんとこ大きく。
田中…これは確かにこれよりも前に撮られた写真なんだな?
(田中)間違いありません。
3秒前に撮られたものです。
(弓枝)出張っていつお戻りなんですか?
(成島)あぁ伊東の支局から横浜回ってあさってには帰ってくるよ。
そうですか。
はい。
あありがとう。
すまなかったなぁ。
何もかもお前に押し付けて。
あなた…。
けどこれだけは信じてくれ。
俺は俺なりに美保のこともお前のことも愛してた。
いや今でも愛してる。
それなのに俺は…。
私だっていけなかったんです。
自分のことを責めるばっかりであなたのことを何も考えてあげられなかったから。
…弓枝お前。
木村典子さんから電話があったときすぐにわかりました私だって女ですから。
でもあなたに何も言えなかった。
そうか…知ってたのか。
なぁ弓枝頼みがある。
思い出してほしいんだ昔の強いお前を。
俺のためじゃなく…美保のために。
頼んだよ。
(村越)成島と木村典子の関係に気づいていたんだな?…はい。
会社に電話がかかってきたこともありましたし…。
出張先のホテルで偶然2人が会っているのを見かけたこともありましたけど信じられなくて彼女に電話をかけたこともありました。
だから彼女が殺されたって聞いたときすぐに成島さんじゃないかって。
けどあの人は僕にとって特別な存在なんです。
(柚木)何の証拠もない以上告発するなんて…。
でもせめてそれが事実なら自首だけでもしてもらおうってそう思ったんです。
自首を促すために証拠集めをした。
…死体遺棄現場に現れたのもそういうことなんだな?伊東から横浜方面に行かれたんですね?ええ。
あの…。
ご主人は娘さんがイジメられてたことをご存じだったんでしょうか?でも主人がどこまで信じてくれたかは私には…。
美保があの子たちにイジメをうけていたというのは本当なのか?本当です何度も言ったはずです。
あなた?まさかそれで美保が?…違うわ私この目で見てたんです!ちゃんとそう言ったでしょう!?木村典子さんとの関係は?ママ!パパの書斎にこれが!刑事さん!
(田中)主任これって…。
ちょっとどいてくれ。
(田中)主任どこ行くんですか!?奥さんこれはどこですか?
(弓枝)伊東の産衣石です。
家族の思い出の場所です!…田中!
(田中)はい!〜美保:仕事仕事って言い訳にして家のこと全部奥さんに押し付けるようなことだけはしないでね弓枝:あなたのこと何も考えてあげられなかったから
(パトカーのサイレン)〜美保:パパ!パパ慌てて転ばないでね!大丈夫だよほらいくぞ!
(弓枝)あなた気をつけてよ!
(成島)そろそろ…!よしもう1枚!パパ…!私決めた!ママみたいに音大に入ってバイオリニストになる!成島さん待ちなさい!娘さんのことを疑ったまま死ぬつもりですか!来るな…来ないでくれ!違うんです…あなたは誤解してたんですよ!もういいんだ…もういいんだよ!ダメですよ死んじゃ成島さん!離せ…離せよ!田中!成島さん!あなたは腕利きの事件記者だった。
誰よりも命の重さを知ってるはずじゃないんですか!違うんですよ!娘さんがやったんじゃないんです!あなたの一人相撲だったんです!証拠は…これです。
木村典子の写真の中にあったんです!おいっ…!これが最初の写真です。
このときにはもう綱は外れています!ですから美保さんが外したんじゃないんです!典子はこれをあなたに見せなかった。
あなたに見せたのは…この写真ですよね!しかし…私が受け取ったメモリーカードにこっちの写真は…。
パソコンでコピーした上に消したんです!成島:ありがとうございました。
あなたの写真のおかげで私も家内も救われました。
ホントに感謝のしようもありません。
この前は柚木さんもいたので出しそびれてしまったんですがもう1枚…こういう写真があるんです。
(典子)その子が外したようには見えないでしょうか?お嬢さんですよね?…忘れてもらえませんか。
金なら用意します100万円。
それで忘れてもらえませんか。
このとおりです!おそらくあなたが初めての恋だった…。
そんな典子にしてみれば金はあなたとの間を繋ぐたった1つの絆だと思ったんでしょう。
初めから事実を受け止めていればその勇気さえあれば…典子の心に魔がさすこともなかったんです。
なぜなんですか!?守ってやりたかった…。
それまでの償いに美保だけはどうしても守ってやりたかった!けど美保はいつまで経っても心を開いてはくれなかった。
家内も自分を責めるばっかりで…。
その逃げ場が木村典子だった…そういうことですか?成島:お母さんが入院するんじゃ大変だな…。
はい…。
僕も少し用立てさせてもらうよ。
いえ私もうそんなつもりじゃ。
いいんだよ。
今度会うときまでに用意しておくから…ねっ?
(成島)それじゃ…そろそろ行こうか?帰らないとダメですか?もう少し一緒にいてもらえませんか?もう…会わないほうがいい。
(典子)やっぱり嫌いになったんですね。
初めて会ったときから好きでした。
必ず約束は守ります!だから会うだけでも会ってください約束は守る…。
その言葉が私の首を絞めつけてきました。
娘のためにも家内のためにも典子の要求に応え続けるしかなかった…。
そんなとき…典子が家内に電話をかけてきたんです。
(成島)殺すしかない…。
この手で典子との関係を絶ちきるしかない!そう思ってしまったんです…。
成島:ホントに別れる気はないのか?
(典子)いやです。
(成島)それでも別れるって言ったら?
(典子)わかりません…自分でも何をするか。
(成島)警察に行って2年前の事故のことをしゃべる?そんなことさせないでください!私成島さんのことが好きなだけなんです!いつまでもこうしていたいだけなんです!殺してくれませんか?えっ…?別れるくらいなら死んだほうがいい!成島さんの手にかかるんだったら幸せなまま死んでいけます。
お願いです殺してください!少しでも愛してくれてるんだったら私を殺してください!やっぱり好きじゃなかったんだ…。
私…成島さんの言うとおり警察行きます。
典子!
(成島)典子を殺したあとどうすればいいのかわからなくて…。
そのとき大友の顔が浮かんだんです。
奴があんな記事さえ書かなかったら典子の写真を使うことも典子と出会うこともなかった…。
(田中)それで大友の名前を騙って典子の実家に電話をかけた。
そのあと典子の遺体と一緒に毎朝新聞のボールペンを多摩の山の中に捨てた。
そして最後に典子のリュックを大友の会社の近くに投げ捨てた。
佐竹を殺したのもあなたですね?佐竹:アンタのこと見たんだよな。
城ヶ崎でね。
(佐竹)典ちゃんのことやったのアンタだよな?3,000万円でいいよ。
それですべて忘れてやるよ。
ハハハ…。
(成島)すまん。
今日のところはこれしか…。
(佐竹)なんだよこのはした金は!おい!!これで俺の肚は決まった…。
一生アンタにまとわりついてやる!
(成島)離せ!
(佐竹)アンタを生かすも殺すも俺にかかってるんだぞ!わかってるのか!?
(成島)離せ!
(成島)もう勘弁してくれ!
(佐竹)うわ〜!!申し訳ありませんでした…。
(弓枝)あなた!あなた!どうして信じてくれなかったんです!?なんで美保のこと疑ったりしたんです!?誰が何と言おうと美保のことさえ信じてくれてれば何もそこまで…そこまで思いつめることはなかったでしょう!違うの!私だって同じ…。
私もあの子たちを殺そうとしてたの!美保…。
パパは私たちのことを思ってしたことでしょう?でも私は違うの!ボートが流されたのに気づいたとき私迷ったの。
このまま流されればいい。
2人ともひどい目に遭えばいいってそう思ったの!美保ちゃん…。
でも結局怖くなって綱を取った。
けどママに止められてそれを言い訳みたいにしてすぐに手を放しちゃったの。
だから…だからママが止めたせいなんかじゃないの!美保…違う違う!お前のせいなんかじゃない。
みんなパパがいけなかったんだ!お前は何にも悪くない!!そうよ!美保ちゃんだって助けようとしたじゃない!
(成島たちの泣き声)成島さん…2年前なぜこうして真正面からぶつかり合おうとしなかったんですか?あなたの仕事は真実に近づこうとすることだったはずです。
なのにあなたは真実から遠ざかろうとばかりしていた。
こうしてぶつかり合って本音で疑いを突きつけていれば少なくともこんな結果を招くことはなかったんです。
あなた…きっと戻ってきてくださいね。
私たちのところへ戻ってきてください。
待ってますから。
美保と一緒にずっと待ってますから。
(成島たちの泣き声)
(成島たちの泣き声)〜やっぱりここにいたか。
どうでした?明日10時から謝罪会見をやることになったよ。
そうですか…。
ところで妙なこと聞くけどさ近さんデカになってなかったら何になってた?私は…刑事以外には考えられませんね。
やっぱりな。
近さんだったらそう言うだろうと思ったよ。
実は俺ね…ブン屋になりたいと思ってたんだよ。
村さんが?笑えるだろ?ハハハ!いや…。
でも今はデカになってよかったってつくづくそう思ってるよ。
そりゃやりきれんときもあるがブン屋よりはヤマに踏み込めるしそれだけ命の重さも身に染みる。
それにこうやって近さんみたいなデカに巡り会えたしさ。
ちょっと…それ勘弁してくださいよ!どう?今夜1杯。
いいですね。
行きますか。
じゃ7時にいつものところで。
はい!〜こんにちは八嶋智人ですさてこれから皆さんを不思議なアートの世界へ2015/03/28(土) 14:00〜16:00
テレビ大阪1
土曜サスペンスドラマ「多摩南署たたき上げ刑事・近松丙吉6 仰角の写真」[字]

死者の微笑みは何を語る?美談の裏に不倫スキャンダル!?愛が殺意に変わるとき!老刑事200キロの追跡…。

詳細情報
番組内容
多摩市内の山林でフリーカメラマンの女性の遺体が見つかった。事件の謎をたたき上げのベテラン刑事が解く。写真家・典子が静岡・東伊豆で殺された。刑事・近松が典子の足取りを追うと、典子は2年前の水難事故の目撃者で、新聞記者・大友の報道により確執があったと判明。大友による犯行が濃厚になる中、近松は一人旅と思われていた典子が交際相手の佐竹と伊豆で会っていたと知る。
出演者
伊東四朗、角野卓造、福本伸一、川野太郎ほか
原作脚本
【原作】日下圭介

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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