西村京太郎のスーパービュー踊り子連続殺人! 2015.03.28


(フラメンコの演奏)
(ため息)
(佐々木貢)俺なんか…死んだ方がいいんだよ…。

(フラメンコの演奏)死ぬさ…死んでやるんだよ…。
死ぬ…死ぬ…。

(フラメンコの演奏)
(十津川警部)じゃあみんなご苦労さん。
(亀井刑事)あ〜うまいなぁ!
(西本刑事)あ〜この1杯が天国!
(一同の笑い声)
(三田村刑事)事件が片付いたあとっていうのはまた格別ですよね。
言ってくれるじゃないの若えの。

(フラメンコの演奏)
(フラメンコの演奏)おい!すいませんじゃねえのか?なあ当たったらすいませんじゃねえのかおい!おいコラ!立てオラ!
(松山刑事)やめろ!やめろ!やめろコラ!警察だコラ!大丈夫?ケガしてないですか?あーあ…。
(松山)立てるか?よいしょ…。
ああー!ほっといてくれよ!生きようが死のうが…俺の勝手だ。
(松山)気をつけろよ!
(佐々木)生きようが死のうが…俺の勝手だ。
まだ若いのにねえ。
酔いがすっかりさめちゃいましたね。
平日なのに随分乗客が多そうだねスーパービュー踊り子は。
ハハ季節はよしこれが仕事じゃなきゃこんないい事ないですね警部。
あれ?あいつ…。
ああ…あの時の酔っ払いか。
この世の事はどうでもいいって顔してるな。
ハハハ…。
なんだあいつ…。
あっ失礼。
ちょっと!おい!なんだよあの男。
いい大人がぶつかっといてあいさつもしないで。
警部何か?あっああ…いやいや。

スーパービュー踊り子は東京と伊豆急下田を結ぶ人気の高い特急電車だ
全席指定席で2階建ての1号車と2号車はグリーン席になっており2号車の下の階には個室もある
新宿を9時25分に発車したスーパービュー踊り子3号は武蔵小杉横浜熱海伊東伊豆高原伊豆熱川伊豆稲取河津に停車し終着伊豆急下田には12時12分に到着する
相模湾から伊豆半島への海岸沿いをひた走りスーパービューの名のとおり素晴らしい眺めを満喫出来る2時間47分の旅である

(佐々木)《遺書…》
(ため息)
(池辺康夫)あ…ああ…。
(アナウンス)「あと5分ほどで終点伊豆急下田駅に到着します」助けて…。
うわっ。
助けて…。
こ…これを…。
(車掌)申し訳ありませんすいません失礼します!お客さん!お客さん!そのまま!触らないで。
警視庁の者です。
死んでる。
すぐに下田署に連絡を。
あっはい!
(車掌)すいませんどいてください!あれあんたは…。
(パトカーのサイレン)
(田島刑事)下田署の田島です。
警視庁捜査一課の十津川です。
こちらは亀井刑事。
亀井です。
こんなものがねポケットに入ってました。
(田島)池辺興産社長池辺康夫…。

(パトカーのサイレン)どうしたんだ?カメさん。
あっ…ああいえなんでも…。
(佐々木)さっきから何度も言ってるでしょ!全く知らない男だって!私は関係ないんですから。
こっちへは何しに?おい!何しに来たと聞いてるんだ!死ぬつもりだったんですよ石廊崎で。
何?警察バカにしてんのか!まぁまぁまぁ…。
あのねあの男は死ぬ前に何か言わなかったのかね?
(田島)何か言い残さなかったかと聞いてるんだ!何も聞いていませんよ。
たとえ聞いていたとしてもあんたなんかに話しませんよ!何?念のため身体検査させてもらうよ。
さっきお見せした運転免許証と財布です。
死ぬ気だなんていい加減な事を…。
いやいやまんざら嘘じゃないかもしれませんよ。
おおカメさん。
ああ警部。
こっちの用件は終わったよ。
あっ十津川警部…。
署長から正式に要請されました。
捜査協力させて頂きます。
よろしくお願いします。
わかりました繰り返します。
池辺康夫住所が世田谷区沢北東4の15の2。
で発見者が佐々木貢35歳。
本人の話ではテイワ商事を一身上の都合で辞めたばかりで現在は無職だそうだ。
わかりました。
早速2人の身辺捜査始めます。
なんとなくあの男…何か隠しているような気がするんですがねえ。
うん…。
どうぞ。
警部補亡くなった池辺社長の奥さんと弁護士さんです。
ああどうも。
この度は…。
あっ!あなた確か新宿駅でスーパービュー踊り子のホームに…。
(池辺冴子)ええ…主人を見送っておりました。
突然一人旅がしたいと言いまして家を出たものですから…。
心配で…こっそり見送りに…。
でも…。
こんな事になるなんて…。
(森谷孝三)顧問弁護士の森谷です。
人を犯人扱いしやがって…。
(池辺の声)「私の名前は池辺康夫である」「年齢45歳池辺興産株式会社の社長をしている」「私は遠からず殺されるに違いない」「一年後か一ヵ月後か或いは明日か」「誰が私を殺すかは判らない」「妻の冴子かもしれないし冴子の兄の檜垣かも知れない」「副社長の柴田という事もありえる」「ただ誰が私を殺そうと動機だけははっきりしている」「私の財産だ」「少なくとも二百億はある私の財産だ」「だがこの事を誰に相談していいのか…」「顧問弁護士の森谷も信用出来ない」「私は妻の美しい顔の下に恐ろしい邪心がひそんでいるのを知っているし妻の兄が大学教授で野心家で金に目がない事も知っている」「副社長の柴田は誠実そうな顔で私の妻と不倫の関係にある事も私は知っているのだ」「警察も弁護士も頼みにならない」「友人は…私の性格や今までの私の生き方のせいで友人はいない」「従って私は何の面識もないあなたに頼むより仕方がなかった」「もちろんただで頼む気はない」「同封したカードとキィは貸金庫用のものだ」「暗証番号は“二〇一一”」「妻たちには内密に作ったものでその貸金庫には一千万円が入っている」「あなたにはその一千万円を使って私を殺した犯人を見つけ出して欲しい」「お願いします」「池辺康夫」一千万…。
(電話)もしもし?私に面会?池辺社長はあなたの方によろめき倒れてきてそのまま亡くなったと聞いていますが…。
その時何か渡しませんでしたか?何かってなんです?いやいや…。
残された奥様にしてみれば何か自分への伝言か何かなかったかと…。
残念ですが私は何も…。
失礼ですが佐々木さんは以前から池辺社長のお知り合いでしたか?警察でも同じ事を聞かれましたが全く知らない人です。
そうですか…。
これは些少ですが…。
奥さんから言付かってきました。
最期を看取ってくれたからお礼を差し上げてくれと。
こんなものを頂く理由はありません。
失礼。
おはよう。
警部!お帰りなさい大変でしたね。
ああ…現場の状況から池辺社長は自殺じゃなくて他殺と断定された。
死因は青酸性毒物による中毒死だ。
毒殺ですか。
警部池辺社長かなりの財産家ですよ。
(清水刑事)池辺興産は池辺社長が一代で築いた会社でして不動産から貸しビルパチンコ店など広くやってる会社です。
池辺社長個人に限っても財産は二百億をくだらないだろうという事です。
へえ…二百億か。
(久保田刑事)家族は元女優だった奥さんの冴子さんだけで子供も兄弟もありません。
って言うとその二百億って財産はあの奥さんに?遺言書がなければそうなるね。
遺言書か…。
あっそれと…池辺社長の最期に立ち会った佐々木貢なんですが1週間前にテイワ商事を一身上の都合で退職しているのは間違いありません。
どうやら仕事上のトラブルの責任を彼一人に上司たちから押し付けられて嫌気がさして辞めたようです。
(北条刑事)それと前後して離婚届が提出されています。
子供はいません。
離婚した奥さんは若いギタリストを追ってアメリカへ行っています。
なるほど…。
死ぬ気だと言っていたが…絶望的になっていたわけだ。
それと警部殺された池辺社長と佐々木貢なんですがいくら調べても2人の関係性は何一つ出てきません。
関係はなしか…。
ここで死ぬつもりだったんだよなあ…。
(西条美保)危ないわ。
そこから落ちたら生きては帰れませんよ。
だからここへ来たんだ。
えっ?一生懸命会社のために働いた揚げ句裏切られおまけに妻には離婚届を残して家を出て行かれ…。
(ため息)何もかも嫌になって…。
私をご存じなんですか?いえ…ただ下田駅で刑事さんたちとご一緒のあなたをお見かけしたものですから。
実は私下田駅で池辺社長と落ち合ってこの石廊崎へ来る予定だったんです。
一体あなたは…?西条美保と申します。
佐々木です。
佐々木貢。
失礼ですが池辺さんとは…?お友達です。
というより私の足長おじさん。
足長おじさん?お願いです最期の様子を教えてください。
死ぬ間際何か言いたかったに違いないんです。
しかし私は通りすがりの人間だ。
そんな人間に大事な事を言い残すと思いますか?池辺社長は誰も信じていませんでした。
多分私の事も…。
(美保)そんな人なんです。
お知り合いの方ですか?いや…。
私失礼します。
ちょっと!
(佐々木)うわっ!
(水田征治)あの女と何話してたんだ?あんた…一体…。
うわっ!うわっ!オラッ!
(話し声)うっ…うぅっ。
どうしました?大丈夫ですか?
(佐々木)大丈夫です。

(発車ベル)
(笛)
(警笛)
(アナウンス)「ご乗車お疲れ様でした」「熱海熱海です」「車内にお忘れ物落とし物のないようご注意ください」
(車掌)すいません!車掌さん急いでください!お客さん!お客さん!大丈夫ですか!ちょっとすいません!
(車掌)お客さん!
(アナウンサー)「今日午後4時20分頃熱海駅に到着する寸前の特急踊り子号の車内で男性が背中を刺されて死んでいるのが発見されました」「所持品からこの男性は水田征治さん30歳と判明しました」「亡くなった水田征治さんは東京の新宿で探偵業を営んでいる事からなんらかの仕事上のトラブルに巻き込まれた可能性もあると思われ捜査当局は仕事関係で水田さんと接点があった人物を対象に捜査を進めていくと発表…」佐々木貢が!?はい…はいわかりました。
こちらも調べてみます。
熱海中央署からだ。
今度の殺人現場にも佐々木貢が居合わせたそうだ。
なんですって!身元確認の時所轄の署員に運転免許証を見せて彼は立ち去ったそうだが。
するってぇと池辺社長殺害と今度の殺しとはなんか関連がありそうですね。
うーん…。
警部…。
これちょっと…良心的な会社とは思いにくいですねえ。
うん…。
警部管理人さんの話では殺された水田征治は一人暮らしで訪ねてくる客もほとんどいなかったようです。
そんな水田征治がわざわざ伊豆に行くなんてやっぱり仕事ですかねえ。
そう考えた方が自然だな。
(久保田)それが殺されたって事は…?
(松山)やっぱり佐々木貢が事件に関係してたんですかね。
思ったとおりだ。
昨日踊り子が熱海に着く前にあなたの姿がなかったもんだから途中下車して熱海から新幹線で帰るんじゃないかと思ったら大当たりだ。
大丈夫あなたの事は警察には話してません。
なんの事でしょう?昨日踊り子の車内であなたがいなくなったあと大変な騒ぎだったんです。
ほら石廊崎にいたあのサングラスの男が殺されましてね。
私熱海の手前の来宮で降りてお友達の家に一泊してたんです。
(佐々木)あの殺された男は何者なんです?ニュースでは水田とか言ってたけど…。
知りません。
私はただ池辺社長の死の真相が知りたいんです。
なぜ殺されたのか誰が殺したのかって。
死ぬ間際犯人の名前を言ったんじゃないかって。
それであなたにもお聞きしたんです。
あなたは池辺社長のなんなんです?ここらでお互いの手持ちのカードを見せ合いませんか?失礼ですけど佐々木さんお年は?35ですけど…。
35歳…。
兄が生きていたら…ちょうど同じ年です。
前に足長おじさんだって言いましたよね池辺社長の事。
私には両親がいません。
たった一人の兄も私が大学卒業を目前にした3年前に亡くなりました。
(美保の声)大学も辞めなければと六本木のクラブでアルバイトをしていたらそこへお客で池辺社長がいらしたんです。
君のような学生がこんなところで働いてちゃいかん。
学費を出してあげるから勉強に専念しなさい。
(美保の声)その日から私の足長おじさんになってくださったんです。
おかげで私は大学を卒業して大手食品会社のOLになりました。
その池辺社長が殺されたんです。
恩返しというとおかしいですけどなんとか犯人を見つけたいと思って…。
そうだったんですか…。
今度は佐々木さんあなたがカードを見せてくださる番です。
池辺社長は死ぬ間際犯人の名前もなんにも言わなかった。
ただ僕に…遺書のようなメモを渡したんです。
メモ?自分は近いうちに殺されるかもしれない。
もし殺されるとすれば犯人は妻か妻の兄か副社長だとね。
顧問弁護士も油断出来ない…そう書いてありました。
まあ…。
そのメモは持っているがあなたにもお見せするわけにはいかない。
彼が死ぬ間際に必死の思いで行きずりの僕を信じて渡したものですからね。
彼を殺したのは誰かわからない。
けど僕は犯人を見つけ出してみせます。
佐々木さん…。
東京に戻ったら四谷のヒルシティホテルに泊まるつもりです。
何かあったら連絡ください。

(ロックが解除される音)バカな…。
(ノック)はい。
ああ警部!こちらです。
あっ間違いなく森谷弁護士ですね。
はい。
発見したのは違法駐車を撤去していたレッカー車の作業員です。
警部車は森谷弁護士所有のものです。
凶器は恐らくナイフと思われますがまだ発見されてません。
死亡推定時刻は?昨夜の11時前後だろうという事です。
森谷さんの昨日の行動ですがわかりますか?
(内田弁護士)午後からはずっと外出していましたがちょうど僕たちが7時頃に帰ろうとした時事務所の方に見えましたが…。
それじゃあゆうべ7時頃お二人はここからお帰りになった。
そのあと森谷さんだけだったんですか?ええ。
事務の者も帰っていましたし。
(小野寺京子)失礼致します。
あなたも事務の方ですか?昨日は何時頃お帰りになりましたか?
(京子)はい。
昨夜は特別急ぐ仕事もありませんでしたので他の事務の者と定時の5時半には事務所を出ました。
森谷所長は昨夜誰かと会う約束をされていたっていう事は…?さあ…。
(津村弁護士)私も聞いてません。
あ…小野寺君何か聞いてないかな?彼女所長の秘書の仕事もしておりましたので…。
森谷所長の昨夜の予定は何もありませんでした。
森谷所長の部屋ですが見せて頂けませんか?警部。
こんなものが…。
差出人の名前はなしか…。
ええ。
「私の名前は池辺康夫である」「年齢45歳池辺興産株式会社の社長をしている」「私は遠からず殺されるに違いない」「動機ははっきりしている」「二百億に上る私の財産だ」「間違いなく私は殺される」…。
「もし私が殺された場合一番怪しいのは顧問弁護士の森谷だ」「この男は私の家族か誰かに頼まれて私を殺す可能性が一番強いと思われるからだ」「池辺康夫」…。
問題はこれが池辺康夫本人が書いたものかどうかだ。
(チャイム)これがそのコピーですが…。
こんな手紙主人が書くはずがありません。
筆跡をまねた偽物です。
(ノック)
(和枝)失礼します。
(柴田)悪質な嫌がらせですよ。
あっ申し遅れました。
私池辺興産の副社長をしております柴田です。
今日はちょっと会社の事で奥様にご相談がありまして…。
(冴子)これ見てくださいな。
主人は家族を愛してましたし森谷先生を信頼しておりました。
信頼していたからこそずっと顧問弁護士をお願いしていたんです。
その弁護士さんの事を主人がこんなふうに書くはずがありませんわ!これはひどい。
亡くなった社長と奥様は大恋愛で結ばれたんですよ。
ところでご主人の遺言書はあるんですか?それが見つかりません。
きっと主人はこんな事になるとは思わず遺言書を作っておかなかったんだと思います。
遺言書がないとなると法定相続人の奥さんが唯一の相続人という事になりますね。
遺産なんか残してくれなくても主人さえ生きていてくれたら…。
さすが元女優。
美人ですね。
その分芝居がうまいという事なのかもしれんぞ。
これ。
私のところにも同じような手紙が…。
中身は森谷先生宛てに届いたものとほぼ同じ。
違うのは森谷弁護士と名指ししているところが私になっているところ。
一体誰がこんな事を…。
…俺?まさか俺の事を疑ってるわけ!?ほら俺のところにも!誰が…私…。
私…。
落ち着いて。
とにかく落ち着いて。
心配ない。
財産は全て君のものさ。
池辺冴子の兄がここで法学部の教授をやってます。
(檜垣成一郎)まあ誰かが悪意でこんなものを送ったんでしょうがね。
私には心当たりは…。
立ち入った事を伺いますが妹さん夫婦の仲はどうだったんです?池辺さんは派手な事は嫌いでしたし妹はわがままで万事派手好きで。
私が彼だったらまあとっくに離婚ですね。
妹さんにはやけに厳しいですね。
だから私がその手紙を書いたとでも?ハハッまさか…。
ではこれと同じような手紙は送られて来なかったんですね?いや全然。
先生は法律がご専門だそうですが遺産相続にはお詳しいんでしょうね。
ハハハ。
刑事さんが聞きたいのは池辺さんの遺産の事でしょう?彼の遺産には全く興味はありませんから。
まあ財産もそこそこ持ってるし学問をしている時がね一番楽しいですから。
彼は嘘ついたね。
手紙の事ですか?彼もこれと同じような手紙を受け取っていると私は睨んだね。
入ってもいないコーヒーを飲む事でごまかそうとしていたが…。
何者かが同じような手紙を関係者全員に?妻の冴子その兄の檜垣教授副社長の柴田そして顧問弁護士の森谷。
この4人には送りつけているとみたね。
誰が一体…。
いやそれが全くわからん。
第一いつ送られたのか…。
森谷弁護士宛てに届いたのは池辺社長殺害のあとではあるがね…。
(北条)警部!筆跡鑑定の結果が出ました。
森谷弁護士に届いた手紙の筆跡は池辺社長の文字に似せてありますが別人と鑑定されました。
そうかご苦労さん。
えっ!?池辺社長じゃないとすると警部これ一体どういう事になるんですかね?私はどうもこの佐々木という男が気になるんだが…。
(アナウンサー)「今回の森谷さん殺害事件は先日の池辺興産社長殺害事件とも関連が大きいと見ており捜査本部では池辺康夫さんの死に立ち会ったこの人物に重大な関心を持ち行方を追っています」「また特急踊り子の車中での私立探偵殺害事件にもなんらかの関係があると見られ…」
(テレビを消す音)
(電話)はい捜査一課。
はい…佐々木さん!?ちょ…ちょっと待ってください!警部!私は誰も殺していない。
もちろん森谷という弁護士もだ。
我々はあなたを犯人だと思っているわけじゃないんです。
ぜひ会って話を聞きたいだけなんです。
「ぜひ協力して頂けませんか?」「どこに行けばあなたに会えるんでしょうか?」はい。
はい。
はい。
わかりました。
必ず私一人で。
これを見てください。
これは森谷弁護士宛てに届いた手紙のコピーです。
これはあなたが書いたものじゃないですか?筆跡鑑定をしたところ池辺社長の字に似せてはあるが池辺社長本人が書いたものではないと断定されています。
だからって私が…。
ひょっとしてあなたは亡くなる寸前の池辺社長から手紙のようなものを預かったんじゃありませんか?それをもとにして森谷弁護士宛てに似せて手紙を送りつけた。
でも私は殺して…。
やっぱり私の思ったとおりだ。
これはあなたが出したものなんですね?偽の手紙を書いて出したのは確かにこの私です。
でも森谷弁護士が殺されるなんて…。
こんな事になるとは思っていなかったんです。
森谷弁護士池辺社長の奥さんその兄の檜垣教授柴田副社長4人に少しずつ文面を変えて出したんです。
本当にただそれだけなんです。
なんのために?犯人を見つけ出せたらと思って…。
それに…彼女の力にもなりたかったし。
彼女?西条美保という若い女性です。
西条美保?これが池辺社長が佐々木貢に渡した手紙だ。
そしてこれが貸金庫の中に入っていた一千万。
佐々木貢から預かってきた。
筆跡鑑定の結果は池辺社長本人の筆跡に間違いはない。
信頼出来る家族も友人も誰もいなかったんですね。
それともう一つ。
これが佐々木貢の証言から作り上げた西条美保の似顔絵だ。
謎の女性か…。
美人ですよね。
下田で出会ったそうだ。
とにかくこの西条美保という女性手分けして当たってくれ。
え?西条美保…?この女性なんですが…。
いえ存じません。
知らない人です。
(和枝)失礼します。
そうですか…。

(松山)あの顔は知っている顔ですね。
知っているのに知らないと言った…。
警部!いやいやもうびっくりですよ!西条美保池辺興産の元社員の妹だったんですよ。
え?元社員の妹?はい。
池辺社長の運転手だった男の妹にそっくりだって言うんですよ。
でその運転手の名前が西条なんですよ。
でこの西条運転手は3年前に事故で亡くなってます。
え?西条信行当時32歳。
事故の詳細は不明ですが海難事故だったようです。
西条運転手は池辺社長のお気に入りだったそうでして釣りが好きな池辺社長のお供をして一度なんかは渓流釣りで足を踏み外しておぼれ死にそうになった池辺社長を助けた事もあったそうなんです。
命の恩人か…。
で彼女の住居は?すいません。
探しきれませんでした。
両親もとうに亡くして他に身寄りはないそうです。
(ため息)確かに西条運転手の妹なら知っているわ。
じゃあなぜ知らないと?顔も見たくなかったからよ。
足長おじさんだかなんだか知らないけどきれいな事言っちゃって。
泥棒猫もいいとこだわ。
泥棒猫?刑事さん私が主人をどうにかしたと思ってらっしゃるんでしょ?私なんかより彼女の方が何するか知れたもんじゃないわ。
どちらにお住まいかご存じありませんか?確か横浜のマンションって聞いたけど総務課長にお聞きになるといいわ。
亡くなった西条運転手の三回忌にも総務課長は出席しているはずですので…。
そうですか。
いやお忙しいところありがとうございました。
(柴田)どうぞ…。
(ドアを閉める音)
(柴田)余計な事はしゃべらない方がいい!わかってる!わかってるわよ…!ついあの女の事を思ったらカッとなってしまったのよ!警部。
すいません。
西条美保さんですよね?はい…。
警視庁捜査一課の十津川と申します。
こちら同僚の亀井刑事。
奥様がお怒りになるのももっともです。
でもはじめは本当に私の足長おじさんだったんです池辺社長。
兄を亡くした私を励ましてくれ大学の学費まで出してくださって…。
世間では池辺社長の事をそれは悪く言う人もいますけど私には親切にしてくださって…。
それが1年ほど前に…。
つまり…あの…男と女の関係になってしまった…ですか?はい。
佐々木さんの話ですとあなたは池辺社長と下田駅で落ち合う約束だったそうですね?はい。
私は一日早く出発して池辺社長が借りた別荘の掃除をしたりして迎える準備をしていました。
あの日…下田駅の改札口で池辺社長の到着を待っているとホームの方が騒がしくなって…。
担架で運ばれていくのが亡くなった池辺社長と知った時はもう動転して…。
(亀井の声)あの時ねあなたを見かけましたよ。
その時なぜ名乗り出てこなかったんでしょうか?だって私は…。
表に出たら…池辺社長やご家族にご迷惑がかかってはと思ったんです。
池辺社長を毒殺した人間に心当たりはありませんか?さあ…。
池辺社長を憎んでいて財産が手に入る人…。
奥さんの冴子さんは怪しいと思いますか?あ…わかりません。
森谷弁護士とは面識は?一度池辺社長と一緒の折にお会いしただけでよくは…。
それじゃあの…殺された私立探偵の水田征治はどうですか?この男ですが…。
石廊崎で見かけました。
佐々木さんと一緒の時に。
でもそれ以上は何も…。
あの…もうよろしいでしょうか?ああ。
お出かけのところお引き止めしまして…。
足長おじさんか…。
彼女なら男がその気になるのはわかりますね。
おいおいカメさん。
今度は自分が立候補したそうなそんな顔してるぞ。
いや…。
どうしたんだ?カメさん。
あの世の中にね自分にそっくりな人間が3人いるって言われてますがあれ本当ですね。
あの…私の亡くなった妹名前は咲っていうんですよ。
花が咲くっていう字書きますがね。
彼女にそっくりなんですよ。
その妹がね彼女ぐらいの年に亡くなりましてね。
そうだったのか…。
だから伊豆急下田駅で改札口で目に留まったんだね。
はい。
(冴子)意外にお粗末な部屋ね。
釣った魚に餌はやらない。
ケチな主人らしいわ。
(美保)お言葉ですけどこの部屋は私が自分のお金で借りているものです。
自分のお金?ハッ笑わせないで。
大学の学費も援助させたんでしょ?よくもまあそんな大きな口がきけるわね。
コーヒーでも淹れます。
(冴子)結構よ。
あなたと一緒にコーヒー飲むなんてゾッとするわ。
ご用はなんでしょう?警察来たんでしょう?はい。
つまらない事話したりしてないでしょうね?つまらない事って…?とぼけないで。
主人が私と離婚しようとしてたなんて言ってないわよね?そんなお話出ていたんですか?ところであなた遺言書預かってないわよね?主人から。
いいえ預かってません。
そう。
ならいいの。
しかし…主人も物好きよね。
(ドアの開閉音)池辺社長を憎んでいて財産が手に入る人…。
西条美保はそう言っていたな。
池辺社長が死んで得するのはまず妻の冴子ですよね。
それと義兄の檜垣教授。
これが池辺社長に個人的にかなりの借金をしてます。
(清水)顧問弁護士の森谷も池辺社長に信用されずに解任寸前だったとしたら…。
(松山)うん。
それに柴田副社長。
池辺社長が死んで彼は今実質的な社長の地位にあります。
(北条)しかも彼は社長の奥さんと不倫の関係にあるようです。
警部もしかして仲間割れって事じゃないですかね?仲間割れ?はい。
利害が一致した4人が協力して池辺社長を毒殺した。
ところがあの佐々木が偽の手紙を届けたりしたんで疑心暗鬼になり仲間割れをした。
仲間割れか…。
(パトカーのサイレン)あっ警部!こちらです。
ナイフでひと突きなんですよ。
犯行推定時刻はおよそ2時間ほど前と思われます。
2時間…。
はい。
じゃあ11時前後か。
はい。
(松山)発見者は同じ階に住む小料理屋のママです。
店を終えて帰りに寄ってみたらドアの鍵がかかってなかったそうです。
警部!こんなものが落ちてました。
立ち入り禁止です。
うちの者よ!ダイヤの指輪か…。
これ随分大きいね。
ええ5カラットはあるでしょう。
デザインも珍しいし持ち主はすぐにわかると思いますよ。
(清水)警部!兄が殺されたなんて…!奥さんこの指輪はあなたのものですか?弁護士を呼びますよ。
弁護士を。
すいません。
弁護士です。
依頼人が中に…。
どうも。
証拠もなく犯人扱いは不当ですよ。
別に我々は犯人扱いしておりませんよ。
ただこの指輪が奥さんのものですか?ってお尋ねしただけですよ。
確かに主人からもらったものです。
でも最近なくしてしまったんです。
なくした?どこでなくしたかはわかりません。
それがなぜ檜垣さんのベッドの下に?そんな事私が知るもんですか!檜垣さんの寝室に冴子さんの指輪があったとしてもなんの証拠にもなりません。
(内田)兄妹なら何度でも訪ねるはずですしいつ落としたかなんてわからなくて当然です。
それで遺体の確認も済んだ事ですしもう帰らせて頂いてよろしいですね?さあ冴子さん。
すごい剣幕ですね。
あのにおい…。
むせるような強い香水のにおい。
そういえば最初に寝室に入った時香水のにおいがしましたね。
同じにおいだよ彼女のと。
お先に失礼します。

(内田)やっぱり来てたんだ。
どうだった?女王様の呼び出しは。
ご機嫌取るだけで大変だったよ。
でもねこれからは所長に代わって顧問弁護士になったあなたが仕切るのよ。
我慢我慢。
わっ!危ない…。
もう!わかりました。
頑張ります。
はい。
例のダイヤの指輪ですが池辺社長が奥さんの誕生日のお祝いに行きつけの宝石店で買ったものに間違いありません。
それと池辺社長の遺産の事で兄妹はもめていたようなんですよ。
池辺夫人と檜垣教授がか?はい。
マンションの表で派手に言い争っていたのをマンションの住人の1人が目撃しています。
兄妹で遺産争いか。
指輪といい香水といいなんか引っかかるね。
仲間割れ?アハハ!バカバカしい!確かにあの私立探偵は弁護士の森谷先生のおすすめもあって私どもが雇った者です。
主人が誰か女の人と一緒ではと思ったものですから。
だからって主人の死や私立探偵の死に私どもが関係しているなんて思われるのは心外ですわ。
どうして前にその事を話してくださらなかったんですか?殺されたのが雇っていた私立探偵だと。
妙な疑いをかけられたくなかったからですよ。
あの…失礼ですが昨夜の10時から11時頃はどちらにいらっしゃいましたか?柴田副社長と一緒に銀座のOASISというお店でお酒を。
12時頃までいましたかしら。
確かに兄とは口げんかもしました。
でも刑事さん実の兄ですよ?実の兄を殺したりするもんですか。
バカに自信たっぷりでしたな。
まるで用意されたようにアリバイを言ったが…。
(石野百合)ええ間違いありませんわ。
確かに12時の看板まで冴子さん副社長さんとご一緒にこの店に。
本当に大丈夫かな?心配ないわ。
怪しまれるようなヘマはしてないもの。
(ため息)オアシスのママなんですけどねどうも裏がありそうですね。
池辺冴子とは高校時代の同級生という事なんですが。
裏が?はい。
あのママ二千万円の借金があるんですよ。
借金が?
(電話)はい捜査一課。
(和枝)あの夜奥様がお帰りになったのは本当は午後11時30頃なんです。
いくらひどい旦那様だったからって亡くなって間もないというのに奥様ったら他の男と…!こりゃあ銀座で12時まで飲んでいたアリバイが崩れましたね。
うん。
あの…!もういっぺん行って来ます!そうよ!頼まれたんですよ!来てないのに来た事にしてくれと彼女が頼んだんですね?ううん。
頼みに来たのは弁護士よ。
弁護士?私が?ええ。
オアシスのママはあなたに頼まれて嘘をついたと証言しています。
バカな…。
嘘をついているんですよ!オアシスのママは。
いいですか?事件当夜あの店には何組かのお客さんが看板までいらっしゃいました。
そう致しましたら皆さんあの日池辺冴子も柴田副社長も来てなかったと断言してくれましたよ。
弁護人のあなたが池辺冴子を守りたいという気持ちはよくわかりますがね。
そのために偽証までさせるというのは…ねえ内田さん。
申し訳ありません。
奥さんに頼まれてアリバイ作りに手を貸してしまったんです。
まるで犯人扱いじゃありませんか。
弁護士を呼んでください。
内田弁護士を。
その内田弁護士ですがあなたに頼まれて事件当夜のアリバイを作ったと証言しています。
オアシスのママにその礼として五百万円を払ったと証言していますよ。
嘘だわ…!嘘?内田さんは嘘をついているのよ!私がアリバイ工作を頼んだんじゃなくて彼の方から言ってきたんです!兄が殺されたあと内田さんは私にアリバイの事を聞いたんです。
指輪の件もありますし警察は私を疑うからアリバイがないと大変だって。
私はアリバイがないのも同然でした。
そしたら彼が自分がアリバイを作るから五百万円用意してくれって。
そのアリバイがないも同然のあなたは事件当夜どちらにいらしたんですか?柴田さんとあるマンションに。
柴田って柴田副社長の事ですか?彼と会うために借りたマンションに11時頃まで一緒に。
でも誰にも見られてませんし本当の事を言っても疑われるだけだと思って私…。
警部清水です。
柴田副社長ですが池辺冴子と事件当夜一緒だったと認めました。
(久保田)アリバイの事は内田弁護士の方から持ちかけられたと言っています。
どっちがアリバイ作りを言い出したのかこれ重要なポイントだね。
ええ。
内田弁護士が言ったんだとすれば池辺冴子は犯人ではないという可能性があります。
しかしその逆だったら池辺冴子が犯人だという事になってしまう。
これ全部池辺冴子と副社長の柴田が仕組んだとしたらすんなり説明出来ちゃいますよね。
2人が手を組み池辺家の財産と社長の椅子を手に入れた。
そうですよね。
まず第一の殺人。
池辺社長が死んで得をするのは奥さんの池辺冴子。
会社と未亡人を自分のものに出来る柴田副社長です。
しかし彼らの犯行だとして池辺社長にどうやって毒を飲ませたのか。
カメさん。
そもそもの事件の始まりスーパービュー踊り子に改めて乗ってみようじゃないか。
はい。
この個室に殺された池辺社長は乗車していました。
カメさん。
はい。
この個室で池辺社長に毒を飲ませるっていうのはちょっと難しいな。
ええ。
なんかの飲み物に毒を入れて飲ませたとしてもその前にドアを開けて中へ入らなければなりません。
顔見知り…それもよほど心を許した人物でないと不可能だよな。
ええ。
私立探偵の水田ではとても無理です。
となると一体誰が飲ませたのか…。
関係者の中で思い当たる人物…1人だけいる。
西条美保。
そうです。
彼女なら池辺社長も気を許してこの個室に入れたでしょうしそれに毒の入った飲み物だって飲ませる事が出来たかもしれません。
しかし彼女は池辺社長の味方だからな。
そうなんですよ。
関係者の中でただ1人池辺社長の味方ですからね。
とても犯人とは思えません。
それにしても遺言書はどうしたのかな?いまだに出てこないっていうのがなんとも不思議でね。
死ぬ間際に佐々木貢に渡した手紙の中にも遺産には触れていませんしね。
うん…。
大体池辺社長は妻義理の兄柴田副社長森谷弁護士たちに殺されるかもしれないと考えていた。
黙って死ねば彼らに財産がいってしまう。
私だったら彼らに財産を渡したくないから遺言書にきちっと書いておきますがね。
だろう?
(アナウンス)「伊豆急下田ご乗車ありがとうございました」
(携帯電話)はい。
池辺社長の遺言書が見つかりました。
今日の夕方にも内田弁護士から発表されるそうです。
そうかわかった。
すぐ帰る。
失礼致します。
お待たせしました。
関係者であるお一人がまだお見えになっておりませんが。
(内田)時間になりましたので発表させて頂きます。
公証役場で適正に作成されましたこちらが池辺社長の遺言書です。
内容を発表します。
「遺言者は遺言者の有する一切の財産を西条信行の妹である西条美保に相続させる」
(内田)内容はこれだけです。
作成されたのは平成23年2月15日。
本人と公証人の署名押印がなされています。
(内田)もちろん一切の財産と遺言書に記されておりましても法定相続人であります奥様には二分の一を取得出来る遺留分という権利がございます。
二分の一ですって?冗談じゃないわ!こんな遺言書認めるものですか!奥様!驚きましたねえ。
あなたが遺言書を預かっておられたとは。
(内田)池辺社長は顧問弁護士だった森谷所長にも不信感を持っておありのようでそれで私に託されたのだと思います。
しかしなぜ池辺社長が亡くなってすぐに発表しなかったんでしょうかね?もちろん私もすぐに発表するつもりでした。
しかし殺人事件が次々と起きて…。
もし西条美保という若い女性が莫大な遺産を手に入れるとわかればきっと狙われる。
そう思って心ならずも今まで公表を控えていたんです。
あなたは池辺冴子の顧問弁護士でもある。
利害が相反する立場だと思うんだが。
池辺夫人にはすでに解任されています。
先日のアリバイに関する私の証言がお気に召さなかったのでしょう。
(美保)失礼致します。
私西条美保と申しますが。
あ…刑事さん。
私が遺産相続人だなんて…。
内田弁護士とは昔からの知り合いなんですか?いえ突然連絡頂いて。
もう本当にびっくりして。
遺言書の事は内田弁護士からいつお聞きになったんですか?今日です。
遺言書の事で大事なお話があるからと連絡があって。
それでさっき事務所の方に伺ったんです。
ではここで失礼します。
いや駅まで送っていきますよ。
あ…ありがとうございます。
でも大丈夫です。
少し歩いて気持ちを落ち着かせます。
意外な展開になったね。
法定相続人である奥さんは池辺社長殺害の容疑がかかっている。
それが明白になれば当然法定相続人としての権利を失う。
となると残るのは彼女一人だ。
あ…西条美保さんは?書類を一枚渡し忘れてしまって。
今下りていきましたよ。
すいません。
ああ佐々木さん。
美保さん!美保さん!大丈夫ですか?美保さん!
(内田)西条さん!美保さん!西条さん!大丈夫ですか?美保さん!
(内田)西条さん!
(佐々木)美保さん!
(救急車のサイレン)でどうですか?車のナンバーは見ていません。
暗かったし一瞬の事でしたから。
ただ黒っぽい車でしたけど。
私も黒っぽい車だったとしか…。
黒っぽい車…。
ええ。
やはり私は今夜は病院に…。
あとは警察に任せましょう。
しかし佐々木さんもしあなたが通りかからなかったら…。
西条さんに代わってお礼を言います。
あ…いや…。
西条美保が狙われるとは。
彼女を疑ったのは間違ってたよ。
いやこんな事なら無理にでも送ってあげればよかったですね。
カメさん…。
警部。
今夜は私彼女のそばに付いていてあげたいんですがね。
カメさんの気の済むようにしたらいいよ。
どうも。
あ…よかった!気が付いたんですね。
刑事さん…。
あなたね自動車で襲われたんですよ。
佐々木さんが助けてくれました。
佐々木さんが?でも一体誰が?誰か思い当たる節はありませんか?いえ。
全身打撲頭はケガしてます。
でもね脳には異常がないってお医者さんが言っていました。
よかったねえ。
刑事さんずっと付いててくださったんですか?ええ。
このにおいやっぱりリンゴだったんですね。
さっきねコンビニ見たらいいリンゴが並んでたんでね。
懐かしい。
津軽にいた頃は毎日のように食べていたものです。
私生まれ育ったの青森県の津軽なんです。
へえ〜!津軽ねえ。
あのね実は私もね津軽出身なんですよ。
え…?
(2人の笑い声)リンゴ食べる?はい頂きます。
あーんして。
おいしい。
おいしい。
そう。
そうか…もう30年かな。
いやいやなんでもない。
うまいね。
子供の頃私が風邪を引いて寝込んだりすると兄も…亡くなった兄もこんなふうによくリンゴを。
お兄ちゃん何してるの?
(西条信行)これか?早く元気になるように美保の大好きなリンゴを食べさせてあげようと思ってね。
ありがとうお兄ちゃん!ごめんなさい。
たった1人の兄だったんですけど3年前に事故で亡くしたんです。
事故で?私ったらいつまでもめそめそしてちゃいけないのに。
私もね妹を亡くしてるんだ。
交通事故でね25歳の時だった。
私と同じ年ですね。
ええ。
妹もねリンゴが好きでね。
よく食べていたよ。
だからあなたを見てたらねなんか妹が戻ってきたような気がしてね。
おはようございます!おはようございます!清水たちが代わってくれたんで帰ってきました。
ご苦労さん。
ゆうべは大変だったね。
西条美保を襲った車は割れましたか?それが全くつかめてないんだ。
ああ。
都会の盲点と言うんでしょうかねえ。
夜のオフィス街で人通りもほとんどないんですが目撃者が全然出てきません。
やはり遺産相続に絡んでの事なんでしょうか?そう考えざるを得ないね。
となると考えられるのは池辺冴子柴田副社長。
西条美保に万一の事があれば遺産は全て池辺冴子が相続する事になるんじゃありませんか?いやもし今西条美保が亡くなったとしても池辺冴子に対する相続分は変わらないんだ。
いやでも憎しみが全ての純粋な動機って事もありますからね。
(松山)警部!池辺冴子柴田副社長2人とも昨夜自宅にいたと主張しています。
それと車ですが池辺冴子柴田副社長ともに黒っぽい車は持っていません。
車はレンタカーっていう手があるからな。
うん…。
とりあえずレンタカー会社徹底して調べてみてくれ。
(松山・三田村)はい!
(電話)わかりました。
下田署からだ。
明日にも池辺社長殺害の容疑で池辺冴子を逮捕するそうだ。
そうですか…。
どうしたんだ?カメさん。
ああいえ。
いえあの…私…いやね私どうも引っかかる事があるんですよ。
西条美保の事なんですがね考えてみると遺産を残してくれた池辺社長について彼女はひと言もその思いを語らないんですね。
そうじゃなくて亡くなった兄さんの事については胸が痛くなるほどその思いを語るんですよ。
確かに莫大な遺産に動転したと言われればそれまでだが。
私ね彼女の生まれ故郷を訪ねてみたいと思ってるんですよ。
生まれ故郷?確か青森県の津軽だったね。
はいそうです。
あのそもそも西条美保とそれから池辺社長を結びつけたのは彼女のお兄さんの存在だったんですよ。
ですから2人が一体どんな兄妹だったかを知りたいんですねえ。
頼むよカメさん。
早速当たってみてくれ。
はい。

(アナウンス)「新青森新青森」ああ岩木山か。
あのちょっとお邪魔します。
ありがとうございます。
美保ちゃんも気の毒になあ。
漁師をしていたお父さんが海で遭難してお母さんもあとを追うように病気で亡くなって。
あとに残されたのは小学校2年生の美保ちゃんと高校卒業を前にしたお兄ちゃんの兄妹2人っきりで。
じゃあ生活も幼い兄妹2人で大変だなあ。
お兄ちゃんは高校も辞めて漁に出て働いて美保ちゃんの父親代わり母親代わりで。
今でも目に浮かぶ。
幼い美保ちゃんが港で漁に出たお兄ちゃんの帰りを待っていてね。
朝早かろうが雨が降っていようがいつも必ず美保ちゃんは待っていた。
父親を海で亡くしただけにお兄ちゃんが帰ってくるまで不安でしょうがなかったんでしょうな。
ええそれが10年前だったか。
美保ちゃんが中学を卒業すると兄妹2人で東京へ出てったきりで。
それで2人とも一度もこちらには帰ってこなかったんですか?風の便りに美保ちゃんは大学に進みお兄ちゃんの方は勤め先の社長さんに気に入られて幸せにやっているって聞いたんだども。
3年前だったかねえ。
そのお兄ちゃんが亡くなったそうでね。
あんなに仲がよかった兄妹なのに美保ちゃん1人っきりになってしまって。
あのお兄ちゃんが亡くなった事で何か聞いてらっしゃいますか?なんでも石廊崎の方とかでおぼれ死んだとか。
え!?石廊崎で?漁師の子がおぼれ死ぬなんてな。
ああ。
石廊崎で?よしわかった。
じゃあそっちの方は明日私が当たってみるよ。
ああはい。
私も明日東京へ帰りますので。
はい。
あの辺りに溺死体が浮かんでたんです。
ええ…西の桟橋で上げました。
死体は事故死として処理されたようですね。
はい。
この辺りで泳ぐ者はおりませんし誤って転落したのではないかという事で。
というのが死体からかなりのアルコールが検出されたんです。
アルコール?はい。
遺体を上げたのがここです。
駆けつけた妹さんは兄はお酒を飲まないはずだからもう一度よく調べてくれと言い張ったんですが他に不審な点がない事から事故死として処理されました。
諦めきれないのか妹さんはいつまでもあの崖の上に立ってお兄さんの遺体が上がった海を見てました。
命日になりますと毎年ここへ来ております。
事故死を装った殺人の線も追ってみたんだがね。
現状の状況から不審な点はなかったと所轄はかなり強硬でね。
そうですか…。
それにしても兄妹2人強い結び付きだったんだねえ。
(美保)お兄ちゃーん!お兄ちゃーん!お兄ちゃーん!
(信行)美保ー!ただいま!
(美保の声)お兄ちゃーん!お兄ちゃーん!西条美保無事に今朝退院しました。
そうか退院したか。
じゃあもうケガの具合はいいんだね?はい警部の指示どおりホテルにチェックインしてもらい久保田君が今付き添っています。
西条さん。
はい。
私は続き部屋にいますから何かあったらすぐに声を上げてくださいね。
はいお世話になります。
マスコミも遺産相続の事で騒ぎ出してるし本人もしばらくはホテルの方に滞在したいっていうんでね。
警備上からもホテルの方が安全ですしね。
(電話)はい。
例の西条美保を襲った車ですが事件当日黒っぽい中型のレンタカーを借りた人物を一人一人洗い出していたんですが意外な人物が借りてました。
意外な人物?
(松山)森谷法律事務所の事務員。
小野寺京子30歳。
あの事務員がどういう事でしょう?しかしレンタカーを借りた事が事実だとしてもそれが事件に使われた車だと証明するものは何もない。
いやいやいやちょっと気になる事が入ってきたんですよ。
気になる事?はい。
3年前にですね池辺興産は政治家に不正献金を行ってたんです。
で捜査の手がひそかに入っていたんですね。
あの殺された池辺社長の会社がかい?そうなんです。
ところがあと一歩というところで事件うやむやに終わっちゃったんですよ。
といいますのも事件の鍵を握る男が捜査の直前に事故死しちゃったんですね。
それがなんと西条運転手です。
なんだって!?西条運転手は池辺社長の身近で秘書も兼ねていたんですが不正な献金を運んだりかなりダーティーな部分の実行役だったようなんです。
それが事故死か…。
警部。
もしその事故が巧妙に仕組まれた殺人だとしたら…。
警部。
そしてもし西条美保がその真相を知ってしまったとしたら…。
復讐ですか。
彼女は言っていたよ。
池辺社長を憎んでいて財産が手に入る人。
それが犯人だと。
家族や身内の遺産争いに見せかけてで兄貴の敵を討つついでに池辺社長の全財産を奪い取る。
見せかけて…。
(北条)彼女にはアリバイが。
毒殺現場となったスーパービュー踊り子には乗ってなかったんですから。
そうですよ警部!それに彼女は池辺社長を殺した犯人に対して復讐したがってたはずです。
だからそれが見せかけだとしたら。
見せかけ?うん。
そう!それだよ!わかったぞトリックが。
警部!全ては表に見える事とは逆転していた。
いわば見せかけの心理的なトリックだったんだ。
心理的なトリック?ああ。
つまり池辺社長を思い犯人を捜すふりをして佐々木貢から池辺社長の最期の言葉と手紙の内容を知ろうとした。
あっそうか。
つまり自分の名前がダイイングメッセージになってるかどうかそれがすごく不安だったんですね。
わかったぞ。
彼女はその事件直後下田駅の改札口にいたんじゃなくて到着したスーパービュー踊り子に乗っていたっていうんですかね。
そう。
恐らくそうに違いない。
事件当日この下田駅で落ち合う約束をしていた西条美保は…ああこれだ。
伊豆急下田駅発11時06分のリゾート21に乗り込みこの河津駅11時19分に降りる。
(アナウンス)「発車致します。
扉閉まります」一方社長が乗った新宿駅発9時25分のスーパービュー踊り子3号が河津駅に着くのが11時58分ですよ。
そして河津駅のホームで待っていた彼女は到着したスーパービュー踊り子3号に乗り込み個室にいた池辺社長に飲み物に混入した毒薬を飲ませた。
そして毒を飲まされた池辺社長は助けを求めて個室を出てサロンカーの方へ行った。
彼女は伊豆急下田駅に到着し次第素早く降りてあたかもずっと駅の外で待っていたような顔をしていた。
ですが警部…。
(ため息)
(電話)もしもし?
(久保田)西条美保の姿が…!ええ。
はい。
そうなんです。
メモを残して抜け出したんです。
(美保の声)「すぐに戻ります心配しないで下さい美保」一体どこへ!?これは遺言書の中身を知らなければ犯罪は成立しない。
西条美保が失踪した。
内田弁護士を徹底的にマークしてくれ。
彼は必ず西条美保に接触する。
(一同)はい!
(電話)はい。
あっ美保さん。
もう体はいいの?本当にこの間はありがとうございました。
ねえこれからの事ご相談にのってくださいませんか?僕にはなんの力もないけど…。
わかった。
1307号室だね。
すぐに行くよ。

(ノック)
(美保)どなた?佐々木です。
どうぞ。
わざわざどうもありがとうございます。
いえ。
(ノック)すいません。
もしもし。
了解。
警部内田弁護士が動き出しました。
小野寺京子さんですね?警察の者です。
お話を伺いたいのでご足労願えますか?雑誌に記事が出てからマスコミの人たちが押しかけてきて大変なんです。
おかげでマンションにもいれなくて。
有名税ってやつだな。
お金が手に入ったらゆっくり世界一周の旅にでも出かけたらいい。
帰ってくる頃には騒ぎも収まってるさ。
一緒に行ってくださる?いいなぁ。
僕の夢だったんだ。
豪華客船でのんびり世界一周するの。
えっ?あっ…。
ああ…。

(ノック)あっ。
内田弁護士がどの階へ上ったのかわからなかったんですが写真で確認しましたらなんと田中という名前で昨日から部屋を借りてました。
(ノック)田中様失礼致します。
警部大変です!来てください!ああ警部!おう。
この縁ギリギリに寝かされてたんですよ。
どうやら睡眠薬を飲まされてるようです。
意識を取り戻して起き上がった途端落下してあの世行きって寸法だ…。
はい。
(ノック)警部。
おう。
どうだ?小野寺京子は内田弁護士の行方を話したか?いえレンタカーの事も知らないと全て黙秘したままです。
(ため息)うう…。
あっ気がついたか?あ…。
ああ…。
佐々木さんあなたは危うく死ぬところだった。
いや正確には自殺に見せかけて殺されるところでした。
(佐々木の声)彼女に勧められてワインを飲んだら意識がなくなって…。
彼女というのは西条美保ですね?強い睡眠薬を飲まされたんですよ。
えっ…しかしなぜそんな…?
(北条)警部。
マスコミからの情報です。
今夜9時テレビ局で西条美保が記者会見を行うそうです。
今夜9時?30分後ですね。
西本と清水にテレビ局に急行して西条美保を確保するように伝えてくれ。
はい!私たちも応援に。
ああ頼むよ。
(三田村)はい。
さっき殺されるとこだったって言いましたよね?彼女はその記者会見をあなたに対するアリバイに使うつもりだったんだ。
なぜ…なぜ彼女が私を?数百億円を手に入れる西条美保にとってあなたは生きていては困る存在だった。
何か心当たりは?特急踊り子の中で起きた殺人事件の事しか私には…。
私立探偵が殺された時の事ですね?ひょっとしてあの時彼女も…西条美保も乗っていたんじゃありませんか?はい…。
彼女は事件には関係ないと思ったもんですから担当の刑事さんには不審な人物は見なかったと証言したんですが彼女は乗車していました。
それだ。
西条美保も内田弁護士も来ませんよ。
記者会見いきなりドタキャンですよ。
はい。
いやそうなんですよ。
でテレビ局員の話によりますと明日ヨーロッパに旅立つというんです。
何考えてんだか…。
確認しました。
あっちょっとお待ちください。
はい。
明日の成田発21時55分パリ行きの便を西条美保の名前で予約してます。
先輩。
明日夕方に横浜から出港する外国船に西条美保の名が。
ええっ!?よしわかった。
飛行機と船両方予約してるなんて…。
どっちを利用する気か…。
いずれにせよ彼女が出発する前に必ず寄ると思われる場所1つある。
ええ。
そろそろ急がないと乗り遅れますよ。
やはりここでしたね。
外国に旅立つ前にあなたなら…兄さん思いのあなたなら必ずここに来る。
そう思っていました。
わざわざ刑事さんがお別れに来てくださるなんて…。
いいや。
残念ながらあなたを連れ戻しに来たんです。
殺人及び殺人未遂容疑の逮捕状です。
私が殺人?どこにそんな証拠が…。
彼が生き証人ですよ。
我々の発見が遅れたら彼は自殺に見せかけてあなた方に殺されるところだった。
私は…私は関係ない。
全て彼女が1人でやった事だ!見苦しいでしょう今さら。
睡眠薬を飲まされたこの佐々木さんを部屋から屋上まで女一人の力で運んだとでも言って言い逃れをするつもりですか?それにホテルの1307号室には内田さんあなたの指紋が残されていました。
屋上へ通じる非常階段のドアにもあなたの指紋がありました。
それと小野寺京子さん彼女も何もかも話してくれましたよ。
西条美保が!?あの女があの人と海外へ!?そんなはずは…!そんなはずは…ないわよ!
(松山)遺産の分け前が入ったら君と海外で結婚式を挙げる。
そう言って彼女に協力させた。
(松山)西条美保への疑いをそらすために。
あなたは発表されたのとは別にもう一つの池辺社長の遺言書を持っているんじゃありませんか?日付は5月6日。
発表された遺言書の三月あとに書かれたものですね。
池辺社長は自分の死後全ての財産を社会事業に寄付すると書き換えてある。
うーん…。
これをあなた保険代わりのために取っておいたんじゃないんですか?全財産を手に入れた彼女が約束どおりにあなたに分け前を出さなかった時の用心のために。
あなた方2人で計画した事ですね?言ったでしょ私は関係ないって。
全て彼女が1人で計画した事です。
私は仕方なく協力させられたいわば被害者ですよ。
さすがあなた弁護士だ。
自分を弁護するのはうまい。
その手で池辺冴子のアリバイも作り危うく我々もだまされるとこだった。
美保さんあなたは池辺社長を毒殺して莫大な財産を手に入れた。
でもその目的は金だけじゃなくて復讐もあったんじゃないですか?あなたとお兄さんは仲のいい兄妹だった。
両親が亡くなったあとたった2人っきりで寄り添い励まし合い懸命に生きてきた。
そのお兄さんの復讐のために計画があったんじゃないですか?亀井さん…。
お兄さんの死は事故死ではなかった。
兄の死を聞いた時は信じられませんでした。
泳ぎの得意な兄が溺死。
しかも飲めないお酒をたくさん飲んでいたなんて…。
信じられないままの兄の死は事故死として処理されました。
そして池辺社長が近づいてきたんですね?はい。
大学も辞めなければと思っていた私を援助してくれて…。
彼の真意も疑わず。
初めは本当に親切な足長おじさんだったんです。
そして1年ほど前いつか池辺社長の事を愛し始めていた私は男女の関係になったんです。
そういう事があって池辺社長はあなたに全財産を譲るという遺言書を書いた。
そんな矢先池辺社長と森谷弁護士と檜垣教授が3人でひそかに話し合っているのを池辺社長を迎えに行った時に偶然聞いてしまったんです。
(池辺)君たちは私を脅す気か!?
(檜垣)いやまあまあまあ。
会社を危機から救ったのには我々2人の力もあったっていう事ですよ。
私たちはね社長あなたの指示を受けて西条運転手をひそかに誘い出して酒を飲ませ事故に見せかけてあの石廊崎の崖から突き落としたんですからね。
(池辺)だから義兄さんあなたには会社の株も分けたし森谷君君にも礼金はしたはずだ。
(檜垣)だから…!それより彼女の方はどうなんですか?兄の死の真相をつかまれでもしたら…。
フフッ美保は心配ない。
妙な動きをされないためにも援助もしたし…。
(檜垣)手なずけもしたっていうわけですか。
(美保の声)許せませんでした。
私の事を愛したわけでも同情したわけでもなくただ兄の死の真相を知られないための目隠しに近づいてきて愛人にまでしたなんて…。
しかも渓流釣りでおぼれかけた社長を救った兄をその忠誠心をいい事に汚い仕事をさせ都合が悪くなるとボロきれのように捨て去り全て闇から闇へ葬り去ろうなんて…。
そんな矢先内田さんが2通目の遺言書を持って私の前に現れたんです。
池辺社長の気が変わって遺言書を書き換えた事を知らせてやろうとするあくまで私の親切心からですよ。
というより自分の利益でもあった。
なぜなら2通目の遺言書どおり遺産を社会事業に寄付されてしまったら弁護士であるあなたには1円も入ってこないわけだから。
人を信用出来ない池辺社長は敏感に私の気持ちの変化に気づき遺言書を書き換えたに違いありません。
内田さんから新しい遺言書の話を聞いて私の心は決まりました。
兄の復讐をし死んだ兄への供養代わりに遺産を手に入れてやろうと。
そこであなたは池辺社長と落ち合うふりをしてスーパービュー踊り子3号に乗り込んだんですね?
(美保の声)はい。
待ちくたびれちゃってひと駅先にお迎えに来ちゃった。
ハハハ…。
のど渇いたでしょ?はいお茶。
ありがとう。

(美保の声)毒を入れておいたのを今開けたようにして出したんです。
(ため息)助けて…。
うわっ!助けて…!あなたは伊豆急下田駅に列車が到着するやいなや急いで改札口の外へ出てあたかも前からそこで待っていたようなふりをした。
だが列車を降りたところを私立探偵水田征治に見られてしまった。
(美保)はい。
彼は脅迫してきたんです。
私を見た事を誰にも言わない代わりに全て俺の言うとおりにしろと。
そしてあなたはね東京に向かう特急踊り子の車内でしつこくあなたに迫ってくる彼が怖くなって水田征治を殺してしまった。
(刺す音)うっ!ああ…。
(美保の声)もう夢中でした。
来宮駅で途中下車をしてその日はお友達の家に泊まりました。
そして翌朝新幹線で帰京しようと熱海駅へ行ったら佐々木さんに出会ったというわけですか。
(美保)はい。
(美保の声)事件のあった踊り子で私の事を見たと言われてもう本当にびっくりして…。
でも私の事は疑っていないようでしたので…。
ひとまず安心したあなたは佐々木さんから池辺社長の手紙の事を聞き出し自分の名前がない事を知ってホッとした。
そして次の復讐相手森谷弁護士を殺害した。
はい。
(美保の声)夜事務所を訪ねて話があると誘い出し…。
(ノック)はい。
(美保の声)トランクの様子が変だと言って車を止めさせてその隙に…。
(ため息)ん?ねえどんな…。
(刺す音)うっ…。
そして次は檜垣教授だ。
偽の手紙が届いて妹や柴田副社長に疑心暗鬼だった彼もあなたの事は警戒せずむしろ女好きだったせいもあって簡単に部屋に入れた。
相談したい事があると言って。
(刺す音)うっ!うっ…ううっ…。
捜査を混乱させるために池辺社長の奥さんの指輪を置いたり彼女の香水を部屋に振りまいたんですね?指輪は以前池辺社長が私にプレゼントしてくれたものなんです。
元々は奥さんに贈ったものなのにそれを愛人に平気で贈るような彼はそんな人だったんです。
さあ内田さんあなたの出番だ。
奥さんに弁護を頼まれたのを幸いにますます奥さんに疑いがかかるように仕組んでいったんですね?奥さんとしてはもう大慌てだったようですよ。
事実池辺社長を殺害する計画を副社長の柴田と立ててたんですからね。
(清水)殺された私立探偵の水田征治を通して金で雇った殺し屋を使う計画だったようです。
まあそのへんのところもすっかり自白なさってますよ。
そのとおりです。
確かに私は偽のアリバイ工作をしました。
けど殺人事件には一切関わっていませんから。
嘘つけ!
(佐々木)俺の時はどうなんだよ!?あの時ぼんやり意識を失っていく中で部屋の中に入ってくる男の靴を見た。
(佐々木)そうあんたのその靴だよ!全てはこの私が計画し実行した事なんです。
今さらこんな奴かばってどうする!?確かに佐々木さんの時は全てを内田さんに話して助けてもらいました。
でも全ての責任はこの私に。
佐々木さんの件に関しては私から彼女の方にそうするよう勧めたんです。
だが美保さんあなた最後の最後で手加減をしてしまった。
池辺社長を毒殺したように殺したかったがそれが出来なかった。
あなたは睡眠薬を飲ませて屋上に置くのが精一杯だった。
(美保)ごめんなさい佐々木さん。
あなたには本当に申し訳ない事を…。
私が車で襲われた時もあらかじめあなたを電話で呼び出して…。
(美保の声)第三者の目撃者が欲しくてあなたを…。
それなのに佐々木さんあなたは体を張って私をかばってくださって…。
でもあなたとのんびり世界一周が出来たら…そう思った事も事実なんです。
美保さん…。
(美保)幼い頃兄と海を見ながら約束したんです。
いつか2人でこの海の向こうへ旅しよう。
2人で世界一周の旅をしようって。
その兄の代わりのようにもあなたが見えて…。
でも兄が死んでは永遠に行けるはずがなかったんですよね。
豪華客船での世界一周の旅。
兄は卒業を目前にした高校も中退して幼い私の面倒を…。
これから…これから兄に恩返しをしようと思っていたのに…。
(美保の泣き声)亀井さんありがとうございます。
私本当言うとこのまま出発出来なくてホッとしてるんです。
罪を重ねて世界一周したって…。
そうでしょう?
(美保)亀井さんたちが来てくださって本当にホッとしてるんです。
お手数をおかけして申し訳ありませんでした。
君はどうする?まだ自殺したいか?いや…正直言うと彼女と出会って生きがいみたいなものが見つかったんです。
またやり直しですね。
死ぬのはいつでも死ねますから。
そうそう預かった池辺社長からの一千万あれは君のものだ。
いつでもお返しするよ。
でもあれ彼女に…西条美保さんに渡してください。
弁護費用にでも充ててもらえれば。
遺産は結局池辺冴子には渡りませんね。
ああ。
殺人予備罪に問われその権利を失うからね。
ああ〜海か。
海の向こうには何か幸せがありそうな…。
そうだ警部いつか2人で世界一周旅行なんてどうですかね?ハハハいいねぇ。
ハハハハ…。
2015/03/28(土) 12:00〜14:25
ABCテレビ1
西村京太郎のスーパービュー踊り子連続殺人![再][字]

新宿〜下田2時間47分の盲点!グリーン個室の遺書が名指す4人の容疑者VS謎の女相続人

詳細情報
◇出演者
高橋英樹、愛川欽也、上原美佐、中村俊介、雛形あきこ、森本レオ、宇梶剛士、山村紅葉、賀集利樹、亜矢乃

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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