ゲーム市場の有力企業である任天堂とディー・エヌ・エー(DeNA)が手を組む。株式を持ち合い、そろって出遅れの指摘されるスマートフォン(スマホ)向けゲームを共同開発して巻き返しを狙う。日本のゲーム産業の将来を占ううえでも注目すべき提携だ。
両社はともに独自の事業モデルを確立し一世を風靡した実績がある。任天堂は「Wii」など独自のゲーム機と、それに合わせた専用ソフトを展開するハード・ソフトの一体路線を貫き、累計で7億台近いゲーム機を販売してきた。「マリオ」など世界的な人気を誇るゲームキャラクターも多い。
DeNAはガラケーとも呼ばれる従来型の携帯電話ゲーム事業の「モバゲー」で成功し、一時は破竹の勢いだった。プロ野球球団も傘下におさめ、1999年創業の若い企業としては異例の存在感を誇っている。
だが、両社とも過去の成功体験にとらわれすぎたのかスマホ化の波に対応が遅れた。ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどの新興勢力に対し守勢に立ち、収益力の低下も著しい。
互いの強みを持ち寄り反転攻勢に出ようというのが今回の提携の眼目だ。任天堂の人気キャラクターや世界的なブランド力と、DeNAのネットゲームの開発・運用力を組み合わせ、世界に通用するスマホゲームの投入をめざす。
任天堂にとってはハード・ソフト一体路線を軌道修正し、スマホ対応市場に事業の幅を広げる大きな一歩だ。DeNAにとっては内需依存から脱却し世界市場に進出する機会である。
両社とも自己資本の蓄積は厚い。低迷が続いたとしても、すぐには経営は揺らがない。そんな中で歴史や企業文化の違う相手とあえて提携し事業モデルの革新をめざす攻めの姿勢に、期待したい。
イノベーションを活発にするには、自前主義に拘泥せず、外部の技術や知識を積極的に取り込む姿勢が欠かせない。他企業にとっても示唆に富む両社の決断である。