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ふぃっしゅ in the water

2012-03-15

舌小帯切除は不要  1 <日本母子ケアー研究会>

赤ちゃんは飲みながら腸の動きを待ったり、排泄をしています。
哺乳行動とは授乳、消化・吸収・排泄の統合的な行動である、とも言い換えられるのではないかと思います。


そのようにとらえれば、新生児期からよくみる「おっぱいになかなか吸いつかない」「吸っても浅い」「ずっと吸いつづけている」なども、決して新生児の吸い方に問題のある「哺乳障害」で何か矯正したり訓練したりする必要はないと言えるでしょう。


また「眠りが浅い」「ぐずぐずし続ける」「抱っこしていないと泣く」なども、腸蠕動が活発な時間であると考えれば、お母さんの不安も少なくなり赤ちゃんが落ち着くまであやして待ってみようと思えることでしょう。


ところが、そういう赤ちゃんの表現を「問題」ととらえたり「育てにくい赤ちゃん」として何か手を出さなければいけない、アドバイスをしなければいけないとさまざまなとんでもない考え方や方法が広がってしまいます。
お母さんたちも不安からそういう考えを受け入れてしまいやすくなります。


日本母子ケアー研究会という団体が今年6月に開催予定の報告会の内容です。
{http://www.boshicare.com/}
第13回学術・実践報告会
母乳育児がつらくなるとき」 〜育てにくさの要因を探る〜


耳鼻科医による「『今、子どもたちの呼吸が危ない』〜哺乳障害、いびき、睡眠時無呼吸症、舌癒着症を通して〜」という教育講演があるようです。
その概要を引用します。

人間は哺乳類である。乳児が母乳を飲むのは当然のはずだ。
しかしながら日常診療をしていると母乳育児に苦悩を感じている母親達が少なくない。
なぜ我が子が飲めないのか、なぜおっぱいトラブルがたえないのか、明確な答えが得られないまま母乳育児を断念している原因のひとつに子供達の舌癒着症がある。
これにより呼吸が苦しく感じると子供たちは哺乳を放棄する。呼いびき吸に問題が生じると睡眠時無呼吸症候群やイビキをきたす。するとやがて舌癒着症の子は、学習障害家庭内暴力不登校などをきたす。
児が母乳を飲めない、育てにくい、寝てくれない、カンが強い、扁桃やアデノイドが腫れやすく風邪をひきやすい等々、舌癒着症に基づく症状は多岐に及ぶ。
最悪のケースは突然死である。
一刻も早く子供達の呼吸が危ないことに気づくべきである。



この研究会は、「自然育児法」という多数の書籍を出した山西みな子氏(助産師)の流れをくんでいるようです。講師の耳鼻科医は、山西みな子氏の息子さんのようです。


舌小帯切除については小児科学会から2001年の時点ですでに「学問的根拠はない」とされていました。
日本小児科学会雑誌 第105巻第4号/平成13年4月1日(2001年)
日本小児科学会倫理委員会  舌小帯短縮症手術調査委員会
「舌小帯短縮症に対する手術的治療に関する現状調査とその結果」
{http://www.jpeds.or.jp/journal/105-04.html#09}

助産婦(注)などから子育て中の母親に「舌小帯を切らないと突然死になる」というコメントが述べられるにおよんで、専門家の意見の不一致が子どもを持つ親の育児不安を引き起こしていることが明らかとなった。

(注:この年はまだ助産師ではなく助産婦

<考察>
今回の調査でも、かつて舌小帯に小切開を行っていた小児科医のほとんどがすでにそのような処置を行っていないことが示されている。
母乳栄養に役立つとの思いから乳児の舌小帯を切ることは、そのような類いの(注)学問的根拠のない習慣であったことがようやく広く理解されるようになり、一見落着の感がある。

(注:初乳を「荒乳(あらぢち)」として捨てていたり、乳児をこけしのようにぐるぐるに巻いていた習慣)

<結語>
受け身である乳幼児を不当な麻酔や手術という侵襲から守るための措置を考えるとともに、子育て中の母親に適切な情報を提供してその無用な不安を軽減する努力をすべきである。



すでに10年以上前には小児科医や耳鼻科医の間では医学的にも効果を否定された舌小帯切除が、なぜいまだに根強く助産師の中に残り研究会まで開かれているのでしょうか。


新生児や乳児の哺乳をもっともよく観察する機会があるはずの助産師ですが、ありのままを観察する態度が足りないのではないかと思います。
新生児の出生直後からの胎外生活の適応のための変化は、劇的で複雑な過程があります。
それに伴う新生児の変化について、十分に観察も研究もされていないと言ってよいでしょう。


まだわからないことがたくさんあるはずなのに、新生児のある行動を「問題」ととらえ授乳に原因を結びつけて解決策であるかのように検証も十分にされていない考え方や方法が、すぐに良い方法としてセミナーや書籍で広がりやすい風潮があります。
それはかえって不要な不安をお母さんに与えていることであることに気づくことが大事だと思います。


また、医学的にほぼ結論が出ていることでも助産師の間に浸透しないことにも問題があると思います。
なぜ浸透しないのか。少しずつ考えていきたいと思います。

くままくまま 2013/02/17 00:00 こんばんは。うちの子どもも、通っている助産院で舌癒着と診断されました。おっぱいトラブルと慣れない育児の寝不足のダブルパンチで本当に辛い時期だったので、そう言われた時には「あぁ、こんなに辛いのにはちゃんと原因があったんだ。」とホッとしたのを覚えています。

その後、件の山西クリニックも受診し、「重度の舌癒着」と診断されました。何事も「重度」って言われると怖くなってしまいます。

ふぃっしゅさんは、ベネッセが運営しているウィメンズパークという口コミサイトをご存知でしょうか?マタニティや年齢別の子育て中など、いろんなライフステージにいるママさん同士が悩みを相談したり愚痴を言ったり、地域の病院の評判を訊いたり、何でも投稿できるサイトです。ここでもおっぱいトラブルは、特に月齢の小さいママたちの中では大きな話題になっています。おっぱいマッサージ、食事制限、舌癒着や、骨盤戻しなどに関するアドバイスがたくさん集まります。

ママたちが直接助産院に通ってなくてもこういう問題ありの情報に簡単にアクセスできてしまうこと、ママ同士の口コミだから悪意は感じにくく何となく信じられるという土壌が出来ていることで、そういう考え方が余計広範囲に拡散していってしまっていると感じます。逆の考え方、せめて立ち止まって冷静に情報を吟味できるような呼び掛けも同じように広げられれば、被害を広げずに済むかもしれないと思います。

ふぃっしゅふぃっしゅ 2013/02/17 07:52 くままさん、こんにちは。赤ちゃんのお世話でお忙しい中、ご体験を教えてくださってありがとうございました。
初産婦さんの場合は、赤ちゃんの抱っこにも力が入って授乳中におっぱいの全方向から飲ませることがうまくできにくかったり、乳腺も初めて開通しておっぱい全体の弾力がとれてやわらかくなるまで(この表現が適切かどうかわからないのですが)時間もかかるので、たしかに乳腺炎や乳頭痛などのトラブルが多いですね。
また経産婦さんの赤ちゃんに比べると、おなかの動きを待ってくちゅくちゅしている時間も長いことが多いので、授乳に時間がかかったり、「眠ってくれない」「足りないのでは」と不安になりやすいことと思います。あるいはなかなか吸い付かなくて激しく泣くため「哺乳困難」と言われてしまっている状況も、実はお腹の動きを訴えているように私は考えているのですが、そういうことも含めて「育てにくい」「おっぱいの吸い方がへた」と見なされて、「何か解決しなければいけない」対象にされてしまうのだと思います。
そのあたりは、「新生児にとって吸うとは?」「新生児にとって哺乳とは?」あたりで書いてみましたが。
そしてお母さん達は不安になり「専門家」に相談にいくと、またその専門家がさらに根拠のない不安で不必要な切除をさせる、母乳相談やマッサージに通わせるという悪循環になっていきますね。
この舌小帯切除は新生児から乳児期の哺乳のトラブルとは無関係であるという現在の小児科学会の見解を、看護・助産の教育でもしっかり教えることがまずひとつ。
また開業助産師の多くが入会している助産師会で、会員に徹底させる責任があると思います。


口コミサイトですか。存在は知っていますが、実際には読んだことがありません。
こういうネット上でのサイトでも、リアルのお母さん達の関係でも、「うちの子はこれをしたらよかった」という個人的体験談は、その効果を証明するものではないということがお母さん達の間でも「常識的」になるといいですね。
いえ、その前に助産師の間でまず常識としなければ、「科学的根拠に基づいた医療」なんて提供できないわけですが。


それとネットで情報を得たり、問題解決の手段にしているお母さん方はどれくらいいらっしゃるのでしょうね。
私が接する範囲の妊産婦さんからは、最近はほとんど舌小帯と授乳についての質問は聞かれないのですが、ネットで検索すると未だに亡霊のように生き残っているのを見て愕然とします。
そういう人たちは、果たして多いのか、それとも少ないけれどネット上で目立ってしまうのか。
そのあたりもよくわからないのですが。
まだまだ、しつこいぐらいに舌小帯切除は不要ということを伝える必要がありそうですね。
ありがとうございました。
また気軽にコメントくださいね。

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