こんにちは。plus体験隊員1号、柳生です。
ここ数年、男子高校での女装した男子生徒によるミスコンがやたら可愛い、と話題ですが、15年前に私が過ごした男子高校でも、何人かは文化祭や体育祭で女装する、というのが通例になっていました。可愛いかどうかは別として……。
11月の某日に友達にそんな話をすると「新宿で毎月、約400人が集まる女装イベントが開催されている」との情報が。
確かに調べてみると、“女装ニューハーフプロパガンダ”という日本最大規模の女装イベントが、毎月最終土曜日の深夜に開催されているらしい。しかも直近の11月はそのイベント内で、女装男子だけのファッションショーがあるらしい。
高校時代の郷愁も相まって、これは面白そう!と早速、体験してきました。
11月最終土曜日、深夜24時すぎ。場所は新宿のレストランビル。
入り口の自動ドアを抜け、エレベーターホールへ向かうとスーツ姿のスタッフさんに一番奥のエレベーターへ促されます。勝手がわからず気後れしながらも、勇気を振り絞って会場となる“キリストンカフェ”のある8Fへ。
IDチェックと入場料の支払いを経て会場に入ると、そこに広がっていたのは異世界!
みんな女装している!この方は女性?あの方は男性?もう、わからない……!
(と見せかけて手前の照明にピントが合ってしまっただけ)
女装した方だけでなく、バニーガール、ふなっしー、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のキャラクターのコスプレをした方なども。また私のように女装をしていない男性や、女性も意外と多かったです(見分けられなかっただけかも)。比率で言うと、女装した男性:女装をしていない男性:女性で5:3:2くらいでしょうか。
会場は音楽に身を任せて踊る方、来場者同士で会話を楽しむ方、並べられたソファーに座ってお酒を飲みながらステージを眺めている方など、各々の楽しみ方で賑わっています。
どこか文化祭のようなお祭感を感じながらも、女装のクオリティは(比べるのも失礼ですが)私の高校時代のそれとは段違い。胸や背中の開いたセクシーなドレスからストリートカジュアル、ロリータファッションなど、それぞれのスタイルに合わせた服装とメイクで女装を楽しんでいました。
フロア最前部のステージ上では、DJがダンスミュージックやアイドルソング、J-POP(まさかのブルーハーツ!)など客層に負けず劣らずの多彩な選曲で場を盛り上げます。
ステージの反対側の中二階には、テーブルと椅子の並べられたラウンジスペースがあり、そこで歓談している方も多くいました。
さらにラウンジスペースの奥にはウィッグ販売、ウィッグカット、整体、メイキャップ、ネイルケアの出店ブースがあり、その場で美しさにより磨きをかけられるという親切仕様。自慢の服やメイクでプロのカメラマンに写真を撮影してもらえるブースもあります。
そんな会場内を観察しながら、雰囲気に少しずつ慣れてきた午前2時半、この日のメインイベントであるモデル全員男性の女装ファッションショーが始まりました!
オープニングアクトに始まり、総勢15名の女装モデルさんがファッションブランド“オペラ座☆チョコレートブティック”の服をまとい、ランウェイに登場します。
デザイナー、ミルクティーヌ・ティアラさんの「色使いを意識して豪華絢爛に」という言葉のとおり、フリルやレースなど洋を取り入れた和装やロリータチックなドレスを中心に、彩り豊かで鮮やかなステージに。ランウェイを歩くモデルさんたちの活き活きした仕草や表情が、さらに華を添えていました。
「男性がレディースの服を着るということは、女性としての可愛らしさと男性としての力強さを同時に出せるということ。それが女性には真似できない魅力を引き出している」とデザイナーのミルクティーヌ・ティアラさん。
私もショーを見ていて、男性の体とレディースの服との間にある絶妙なバランスのギャップから、単純な“可愛い”とは異なる新しい魅力を感じました。
(と言いつつ、ギャップゼロで単純に可愛い!と思うモデルさんがいたのも事実)
かつて女性に男性的なファッションを獲得させたモードの世界でも、今度は男性に女性的なファッションを獲得させようという運動が始まっており、そのベクトルは、男性的な体のラインを活かしつつファッションの新たな可能性を模索する試みです。
それに対して今回のショーは、男性が女性らしいシルエットの服を女性らしく着る、という別のアプローチで、ファッションの可能性というよりも生き方の可能性や社会の可能性を模索する試みだったような気がします。
イベント主宰のさつきさんにも、このショーについてお伺いしました。
「少し前までは女装というと隠れてやるもの、アングラなもの、というイメージが強かったですが、流れが変わってきました」とさつきさん。
つい最近でも流行語大賞の候補に「女装子」が選ばれたり、ファッションブランド”アーバンリサーチ”のイメージビジュアルに女装した古田新太さんが起用されたりと、女装は一般に認知され始めています。
「さらに一歩進んで、女装をおしゃれなものとして位置づけたい。『好きなメイクや好きなファッションは、隠れてではなくもっと開放的に、していいんだ』ということを感じてもらいたいです。」
さつきさんがプロデューサーを務める、“男の娘”のみで結成されたアイドルグループ”最先端ガールズ”のメンバーも、ショーのオープニングアクトやモデルとして出演していました。このグループの結成にも、そういったメッセージが込められているのでしょうか。
「メンバーの皆が女装を楽しんでいるのが良いんです」とさつきさん。「自分自身が楽しんでやっているから、見ている人も楽しみながら応援できる。女装カルチャーをもっと一般の人に受け入れてもらえるよう、その楽しさを世の中に伝える広告塔になってほしい。今後はアイドルイベントにも参加していきたいし、ゆくゆくは世界にも発信していきたいです。」
今後の“最先端ガールズ”の活躍に期待!ぜひアイドルイベントでも見てみたいです。ところで「世界に」という言葉が出ましたが、日本の女装カルチャーは世界の中で見るとどのような位置づけなのでしょうか。
「日本は異質。女装は海外では性別違和(=かつての性同一性障害)との結びつきが強いですが、日本では身体的・精神的に男性の方でも女装を楽しんでいます」
確かに来場していた女装子さんの中には「女性と結婚しています。今日は嫁に許可をもらって来ました」という方もいました。性自認とは関係なく、単純に趣味として女装を楽しむということは、世界的にも珍しいことだったのですね!
またさすが日本最大規模の女装イベントだけあって、私がお話を聞いた限りでも北海道や兵庫県など遠方から、この“女装ニューハーフプロパガンダ”のために駆けつけたという来場者の方も。
さつきさんの「女装をもっと開放的に」という思いは、全国の女装ファンの1つの居場所と交流のきっかけを作り、さらには一般向けにも、日常の生活の中でより女装がしやすい環境を作っていくための啓蒙、つまりプロパガンダとしてこのイベントや“最先端ガールズ”の結成などにつながっています。
これから日本の女装カルチャーが社会にどう浸透し、また世界の中でどのような役割を担っていくのか、今後も注目していきたいです。
最初は来場者の方とすれ違うたびに、女性?男性?というハテナマークを浮かべていた私。一晩をこの“女装ニューハーフプロパガンダ”で過ごす中で、途中からはその問い自体が無意味だと気付き、肩と眼の力を抜いて楽しめました。
話が合うなと感じた相手が男性でも女性でも、それは話の合う人であるのと同じように、綺麗だなと感じて振り返った相手が男性でも女性でも、それは綺麗な人なのです。
“性別”という固定観念をゆっくり揉みほぐされるような、頭のデトックス体験。
みなさんも、一度体験してみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
◆女装ニューハーフプロパガンダ
公式サイト→ http://propaganda-party.com/
Twitter→ @PropagandaParty
◆さつきさん(“女装ニューハーフプロパガンダ”主宰)
ブログ→ http://ameblo.jp/satsukipon/
Twitter→ @satukipon
◆ミルクティーヌ・ティアラさん(“オペラ座☆チョコレートブティック”デザイナー)
オペラ座☆チョコレートブティック公式サイト→ http://boutique.opera-the-dream-house.com/
Twitter→ @milktee_nu
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