ここに1枚の絵がある
白い紙の片側だけに塗りたくられた青
力強い筆圧で破られた跡
何百何千と描かれている平仮名の「も」。
一体何を意味しているのか?その謎を解く言葉は「アール・ブリュット」
さあ今日はここはNHKに今いるんですけども…アートといっても何か最近…。
NHKアートじゃないです。
ろくでなし子じゃないと思うんだよね多分ね。
あ何かすいません。
太田さん。
あっ!気付くでしょ大体この流れで。
もしかしてアートに詳しい方?はい。
東京国立近代美術館で学芸員をしております保坂健二朗といいます。
保坂健二朗。
今回爆笑問題を知られざる芸術の旅にいざなう。
そのテーマとは…
アール・ブリュット?聞いたことは?聞いたことない。
ないねぇ。
アールグレイとかね。
紅茶だね。
アール・ブリュットはフランス語になるんですけどもブリュットって「生」とかですね「粗野な」という意味がありまして。
今日は1人ですねある…約束してるんですここで。
約束してる?日本で一番有名なんですか?その人は。
スイスでも紹介されて。
え〜!世界的に。
そういう方なんです。
あっそう!もしかして。
まさかなぁ。
いやそれは違うでしょ。
多分ほら何か収録で。
いやこっち来ますよね。
えっこういうこと?俺予想と全然違うんだけど。
ちょっと待って待って待って!アール・ブリュット?スイスで?フランスで?見事なアートですね。
日本晴れですね。
風がないと困ったんですよ。
街なか歩いてますよね。
浅草とかそういうところ。
あそうそう。
よくご存じで。
あまわったまわった!まわったまわった!まわりましたよ。
すごいまわったよ。
今日はちょっと風が強すぎるぐらい。
飛んでっちゃうよね。
宮間英次郎80歳。
人呼んで「帽子おじさん」
想定外の帽子をかぶり日々繁華街をかっ歩する日本を代表するアール・ブリュットのアーティストだ
そもそもアール・ブリュットとはフランスで提唱された概念。
それは正規の美術教育を受けていない人々が独自の世界観をありのままに表現する芸術だ
名声や報酬などを目的とせずただ自分のために創作活動を行うもので今世界的な注目を集めている
いつからこういうことを始めたんですか?だからもう大体…62〜63ぐらいから。
なるほど!小泉節が出ましたね。
ここでミッション
さあ今こちらに1つ作品があるんですけども。
…置いたりねしてるから。
あげちゃうんです。
(田中)あげちゃうんだ。
これはすごい。
よく集めましたねこれ。
何でこういう事始めたんですか?60歳過ぎてから。
いややっぱりね…
トラックの運転手などをしながらひとり全国を転々としてきた宮間さん
60歳を過ぎたある日ふとカップ麺の容器をかぶり街を歩いてみたところ注目を集めた
それがうれしくてフリーマーケットで見つけた人形などを帽子に貼り付けていった。
誰も見たことのない世界が広がった
やがて帽子は静かな話題を呼び海外の展覧会に招待されるほどになった
・「上を向いて歩こう」・「にじんだ星をかぞえて」だから難しい考え方を取ればある種の現代文明批判とか消費社会に対する批判とかそういうふうにも読み取れるし。
あ捨てられたものだからね。
そうなんです。
そういうふうにも読み取れるしでも一方で単純に見て楽しいものとしても分かるという。
いろいろ答えてもしかたないから私は島倉千代子のファンです。
さっきもやってましたけどねそのくだりね。
咲き乱れたいのね。
面倒くさいもんね説明するの。
だって意味なんかないんだもん。
本人が何も思ってなかったとしてもでもそういうふうに読み解く事ができるっていうのも非常に面白いところで。
そうですね。
人によってはね。
受け取る側の勝手だもんね。
田中さん頭大きいから。
あんまり深くかぶったら駄目。
目が隠れちゃう。
ちょっと手で持って。
お〜いいじゃん。
(宮間)第二の変なおじさんになれそう。
ここでアール・ブリュットの名作を集めたバクモン美術館
まずは滋賀県に住む久保田洋子さんの作品。
雑誌のモデルなどをモチーフに色鉛筆を使い力強いタッチで独自の女性像を描き続けている
岩手県の戸來貴規さんの作品は彼自身の日記だ
「1月1日木ようび」など日付や気温の文字をデフォルメして記していく
毎日それをひもでつづり直す戸來さんの日々が分厚い日記の束を生み出した
澤田真一さんの作品は陶芸
とげとげした突起物に覆われた生き物のような作品は世界的な評価を集めている
人々の心を引き付けるアール・ブリュット。
爆笑問題はその誕生の瞬間を目撃すべくある場所へと向かった
さあちょっと…ここにですね「工房集」という関東ないし日本でも一番注目されているアール・ブリュットのですね何て言うんでしょう作る場所があるので来てみました。
アトリエみたいな?そうですね。
みんながいろいろ作っています。
ここだ。
かわいい建物だねまた。
きれいなね。
どうもどうも。
あいっぱいいた。
こんにちは。
お邪魔します。
作家とスタッフの皆さんが出迎えてくれた
「工房集」。
日々20人ほどが通いながら創作活動に取り組む障害者施設だ
彼らは表現を通して社会とつながる事を目指しているという
そのジャンルは絵画織物書漫画と幅広く毎日新たな芸術が生み出されている
そんな「工房集」の入り口にあるのはメンバーたちの作品を集めたギャラリーだ
(小和田)もともと楽器とかが大好きで楽器の絵だったり。
テレビカメラもありますけど機材とか。
これはすごいよこれ。
これはもう完璧にアートですね。
飛行機を描いてるんですがこれ全部色鉛筆ですよ。
色鉛筆なんだ!きれいに塗ってあるんだ。
(小和田)色鉛筆だけで。
(田中)マジックサインペンみたい。
この色彩感覚はやっぱりすごいですね。
それぞれの作品が持つ強い個性に圧倒される爆笑問題
中でも気になった作品があった。
それが平仮名の「も」の字が描かれたあの絵だ
これ何だと思いますか?象でしょ。
見た感じ。
これ…これ「ドラえもん」!?「ドラえもん」なの?これ。
意外だなぁ。
いやすごい。
「も」だけで「ドラえもん」?
(小和田)「ドラえもん」ですね。
何ていうんでしょうね…ここだってもうほとんど余白よ。
使わないんだなっていうね。
ここはなんにも触ってないのにここだけ穴開くほど描いてさ。
で「ドラえもん」なの?で「ドラえもん」って言われてもさ。
もう参るね。
なめてんのかっていう。
いやぁ参っちゃうねホント。
ここでミッション
あたくさんいる。
こんにちは。
こんにちは。
ちょっとすごい大作じゃない?これ。
立体的な。
この段階できれいですけどね。
ホントだ。
頑張る。
頑張る?この絵の具の使い方やっぱり独特だよね。
大量の絵の具をキャンバスにのせるという作風の渡辺孝雄さん。
展覧会にも入賞するほど評価が高い
油絵はこうやって描くみたいなところも軽く飛び越えちゃって直接こうキャンバスにつけてでその後筆で当ててったり。
ちょっとずつの蓄積。
乾いてまたそこにやるからっていう。
(田中)ものすごい時間かけてるね。
(小和田)かかりますね。
彼もう本当に数秒も座ってられなかったんですが20年近くたって油絵を描くまでに。
筆がすごいよ。
ひどいねこれ。
(小和田)もっと巨大化してきます。
(田中)もっとデカくなってくるのね。
色足したりするのかな。
(小和田)孝雄さんこれ何ですか?47!何で3歳さば読んだの。
やだ〜!僕泣いちゃ駄目。
男だから。
続いては海外で話題を呼んだという作品
何描いてると思われますか?これ?何ですかね。
え?「せっけんのせ」?
(小和田)「せ」の字らしいんです。
せっけんの「せ」の字らしいんです。
「せっけんのせ」?これ。
(小和田)何描いてるの?せ。
せっけんの?せ。
せっけんの?せ。
どういうこと?
柴田鋭一さんの作品はニューヨークで開かれた個展で完売した。
彼が描き続けているのは「せっけんのせ」。
果たしてその意味とは?
(小和田)でこれが2と3です。
最初のころ。
ずっと最初のころ2と3。
(田中)「せっけんのせ」が分かんない。
いや「せ」じゃないよね。
(小和田)20年たつとこんな感じに成熟してきたんです。
(田中)20年間「せっけんのせ」を描き続けてんだ。
2と3は分かるじゃない。
「せ」が分かんない。
何なの?
美術の世界を超えて活躍の場を得た作家もいる
あっこれもまたすごいね!うわ細かい!
(田中)細かいよこれ。
(小和田)悠紀さん何描いてるのかな?茶太郎っていうね今年亡くなっちゃったんですが…犬?飼ってた犬?犬に見えないけどね。
人間の顔に見える。
(小和田)みんな笑ってるんです。
笑ってるね。
(田中)これ全部茶太郎なの?
(女性)茶太郎を描き続けて13年なんです。
(田中)13年!描き過ぎだろ!
(田中)全部色合いとかも違うんだけどでも全て描いてるのはその犬なわけじゃない。
でも全く犬に見えないんだよね。
この部分は何だろう?尻尾かな。
尻尾なのかな。
悠紀さん見せてあげて。
生地になるわけか。
うわ〜ホントだ!こういったシャツに。
いや〜ちょっと何か感動的だねこれ。
田中悠紀さんの「茶太郎」は有名ブランドのシャツのデザインに採用され今日もどこかを散歩しているに違いない
工房集を運営する社会福祉法人では20年ほど前からこうした活動を始めた。
独自の作風を持つ作家はまだまだたくさんいる
ここでクイズ。
一体何を制作中なのか作家たちに聞きました。
彼らの想像力に追いつけるかな?
まずは第1問。
真っ白いクレヨンを塗りつけているがこれは何を描いているのか?
正解は「雪だるまの胴体」。
なるほどその発想はなかった!
続いて第2問。
鮮やかな色紙をちぎって貼っていくカラフルな作品。
このタイトルは一体何?
正解は「天童よしみ」。
コンサートに行った時の体験を作品にしたという。
とにかくアール・ブリュットは奥が深い
爆笑問題はあの衝撃の作品を描いた作家を発見した
(小和田)今これ「ドラえもん」ですね。
今ちょうど描いてるとこですね。
これすげえな。
「も」なんだな。
「も」なんだね。
何で「ドラえ」は描かないのかな。
速いですね。
速いね。
(小和田)もともとは「ドラえもん」なんで「と」とかも入ってたんですけどだんだん本人が省略してって最初「ともともとも」だったのが「と」が抜けてって最後は「も」だけになって。
(田中)とにかく「も」を描き続けてる。
今までの作品?ちょっと見て頂ければ。
これは「ポケットモンスター」ですね。
「ケモケモ」って描いてあるんで。
あポケモンか。
(小和田)これは「ともとも」なんで…「日本」が好き?
(田中)サッカーだ。
(女性)サッカー活躍してる時に。
「歌謡コンサート」!
(小和田)演歌とか好きだったりするんで。
「歌謡コンサート」っていう番組を見てさこれが生まれるっていう発想すらない。
ショックがすごいですね。
この感覚。
ホントに抽象画にも見えるし意味があるものにも見えるし意味なくていいんじゃないかっていうふうに見てるうちに何か気持ちよく風が流れてきていたりして。
パリのギャラリーと独占契約を結んでいる齋藤裕一さん
彼の作品が生まれるまでにはスタッフの地道なサポートがあった
書なんだ。
だから文字で絵になっていくんだね。
最初は書から始まってるんですが当然彼は今こうやって描けてますけど…こっちは描かせるとか指導するとかじゃない関わりです。
間接的に何がいいのかと探っていくほうですね。
何か選択肢を…?出したり。
あ〜。
寝ちゃった。
寝ちゃったって言うとまた描く。
頑張ろうとしてるんですね。
オリジナリティーあふれる工房の面々。
一つの場所に集うことで新たな境地を切り開く作家も生まれている
こりゃ細けえな。
これは何描いてるんですか?これ?いろんな…いろんな何だっけな。
いろんなものがある。
あでもすごいな。
(納田)すごい?すごい。
真ん中にはスティッチがいる。
これ?何それ?
(納田)スティッチ。
あスティッチじゃないの。
(田中)リロ&スティッチってこと?漫画のスティッチか。
昔のやつ。
昔のやつか…うそだろ。
最近のやつだろ。
最近のかな。
うん。
リロ&スティッチだろ?あそうだそうだ!それだ。
それだよ。
実は納田裕加さんの作品は他のメンバーのカラフルな作風に触発され生まれたものだ
アール・ブリュットの作家の多くの方って人の影響を受けずに結構自分のためだけにとか称賛とかあまり関係ないっていう方が多いんですけど実は彼女これ他のさっき言った飛行機の彼女の作品がすごい評価されたのでうらやましくてそれで始まったんですよね。
そうなんだ。
自分が褒められたい。
だから周りの中で影響し合ってて。
だから私も褒められたいから色鉛筆使って。
ただ模倣してるんですがでもそこをもっと超えちゃって自分のものになったっていう。
作家の人生が投影された唯一無二の名作の数々。
人はなぜアール・ブリュットに心を揺さぶられるのだろう?
見て頂いたとおりピュアさもあるんですがだいぶ人間くさいですよね。
ホントに逆にホント人間対人間のやり取り。
あいつには負けたくないとか。
要するに表現したい欲求とかそういう欲求っていうのは誰にでもあるんだっていうのがアール・ブリュットを見ているとよく分かるんですよね。
で見てる自分たちの中にもそういう本来欲求はあったはずだしそういうそのピュアな表現衝動みたいなのに触れた時の感動みたいなものがまあ今大事とされてるからこそ最近アール・ブリュットって注目されてるんだろうなっていう。
でも何か人間のこう可能性というかね想像力の何か…。
ただね自由っていうけどルールがあってこそそこから外れた時に「あ!」ってなったりするわけじゃん。
だから多分彼らも自分でルールを作ってそこからいかに抜け出るかみたいなことを何か無意識にやってるんじゃないのかな。
自分の自由さとかルールだけじゃなくてまあ全体でもホントに何でもありではないのでだからうまくその中でバランス取りながらだと思います。
ルール無用なやつが1人。
自由です。
自由すぎますね。
自由すぎは駄目です。
いい間だった今の。
2015/03/28(土) 01:45〜02:10
NHK総合1・神戸
探検バクモン「“アールブリュット”の衝撃」[解][字][再]
今、注目を集める常識やぶりのアート「アール・ブリュット」の魅力に迫れ!街を練り歩く謎の「帽子おじさん」に遭遇!欧米でも評価されるアトリエで創作の現場を目撃せよ!
詳細情報
番組内容
固定概念を越え、人々の心をわしづかみにするアート「アール・ブリュット」が注目を集めている。その秘密に迫れ!まず出会うのは「帽子おじさん」こと、宮間英次郎。過剰な装飾に彩られた巨大な帽子で、繁華街を練り歩く彼の哲学とは?続いては、埼玉県にある障害者施設「川口太陽の家・工房集」へ。パリやNYでも評価されるという創作の現場で爆笑問題が見たものとは?「人間はなぜ表現するのか」という根源的な問いを考える。
出演者
【ゲスト】東京国立近代美術館研究員…保坂健二朗,【司会】爆笑問題(太田光・田中裕二),【語り】木村昴
ジャンル :
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ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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