中国主導銀:インフラ需要年84兆円 受注に韓国熱い期待

毎日新聞 2015年03月27日 21時57分(最終更新 03月28日 02時35分)

アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る構図
アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る構図

 中国が主導して年内の設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明する国が、3月末の創設メンバーの締め切りを前に相次いでいる。27日にはオーストリアも参加を表明し、参加表明国は36となった。韓国も26日に参加を表明。日本は融資の審査体制などに問題があるとして米国とともに慎重姿勢を崩していないが、「インフラ輸出で日本が不利になる」と懸念の声も上がっている。【小倉祥徳、北京・井出晋平】

 参加を表明した韓国政府は26日、「わが国の企業の事業参加が増える」とAIIBが途上国や新興国に融資を行って進められるインフラ整備事業への期待を示した。世界第2位の経済規模を誇る中国との関係強化に加え、年間7000億ドル(約84兆円)超とされるアジアのインフラ需要を取り込みたい狙いがある。

 中国の国際情報紙・環球時報が掲載した27日付の社説は、「韓国の決定は、安全保障が優先の国でも経済的利益が中心にあることを証明した」と、米国と安全保障上の結び付きが強い韓国を中国側に引き入れたことに自信をにじませる内容だった。

 AIIBは、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)など、既存の国際機関を主導してきた米国や日本に対抗する思惑もあるとされ、日米は「環境破壊につながる事業を後押しする恐れもある。出資国で構成し、融資の可否を決める理事会の権限が不明確」などと懸念を示し、中国の動きをけん制してきた。しかし、3月12日に英国が主要国で初めて参加を表明し、ドイツ、フランスなども追随。3月末の締め切りを前に、雪崩を打つように参加表明が相次いでいる。

 「参加について慎重な立場は変わらない。韓国が参加しても、私からコメントを出すことはない」。麻生太郎財務相は27日の閣議後会見で改めて日本の立場を強調した。しかし、政府内では「インフラ輸出などで不利になる」と参加論もくすぶる。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「今後、世界で最もインフラ需要が増えるのはアジアだが、日本企業は中国や韓国、欧州の企業に相当後れを取っている。AIIBの設立を機に、日本企業の競争力がますます低下しかねない」と指摘する。

最新写真特集