ギリシャがユーロ離脱なら、実はこんな展開も-混乱のプロセス
2015/03/27 07:03 JST
(ブルームバーグ):ギリシャをユーロ圏に残す闘いも6年目となり、誰もが疲れてきた。そして何よりも、チプラス政権下のギリシャは資金が底を突きつつある。
ウニクレディト・バンクのエリック・ニールセン氏など、ギリシャのユーロ圏離脱は時間の問題だとみるエコノミストも出てきた。ユーロ導入は選択すれば戻ることのできない一方通行の道だと思われてきたため、離脱のロードマップはない。このため、正式な発表や明確な決議を待っていては、待ちくたびれるだけかもしれない。
ギリシャの選択肢としては、ユーロ圏にとどまる、破滅的な別れを選ぶ、あるいは複数の通貨を流通させるシナリオなど、さまざまだ。さらに離脱する場合、誰がどのようにそれを世界に宣言するのかという問題がある。チプラス首相か欧州中央銀行(ECB)か、トゥスク欧州連合(EU)大統領か、それともユンケル欧州委員長なのか。以下に、今後想定し得るギリシャのシナリオを示した。
A:ギリシャの離脱(GREXIT)回避チプラス首相が降参して債権団の要求に従う。ユーロ離脱か緊縮かの選択を迫られた首相は後者を選んでギリシャは現金を手にし、ECBも同国の金融システムを支え続ける。この場合、チプラス政権への反発が国内で強まり、首相は欧州寄りの政党と新たな連立を組んで政権を存続させるか総選挙実施となる。
B:ホテルカリフォルニアギリシャのバルファキス財務相はユーロという通貨同盟への参加を、いつでもチェックアウトはできるが決して去ることができないと歌う米ロックバンド、イーグルスの1976年のヒット曲「ホテルカリフォルニア」に例えたことがある。チプラス首相がドイツ政府や自身の急進左派連合(SYRIZA)内の強硬派を含め全当事者が受け入れられるような妥協策を見つけられない場合、このシナリオは現実となる可能性がある。つまり、救済融資は引き続き実行されず、政治指導者も行動を渋るので、ECBはギリシャの銀行の頼みの綱である緊急流動性支援(ELA)を制限。資金は十分ではないので、資本統制が必要になる。銀行の実質閉鎖もあるだろう。
さて、このシナリオBはここからB1「どんでん返し」とB2「チェックアウト」に別れる。
B1:どんでん返し預金の引き出しや送金を制限する資本統制が、チプラス首相に妥協を余儀なくさせるという劇的な結果につながる。首相は欧州寄りの野党議員らと新たな連立を組み、資本統制と銀行閉鎖の環境下で国民投票を実施する。国民は首相に方向転換へのお墨付きを与え、挙国一致内閣ができる。ギリシャはユーロ圏にとどまるが、まずリセッション(景気後退)に陥る。
B2:チェックアウト銀行閉鎖で政治情勢は悪化し市民の抗議行動が強まる。ドイツを標的とした反感が強まり、世論はユーロ離脱へと傾く。政府は資本統制を敷いている間に、国内の決済のための新紙幣または借用証書を印刷する。ユーロ圏諸国はギリシャ経済の完全崩壊を避けるために融資を提供する。公的部門へのギリシャの債務は再編され、国際通貨基金(IMF)の融資は返済される。新通貨とユーロが並行して流通し、ギリシャはユーロ圏を正式に離脱したわけではないので戻る道は残されるが、国内の金融は混乱を極める。
C:大惨事ギリシャが無秩序なデフォルト(債務不履行)を起こしてユーロ圏を離脱する。デモが発生し、国民の多くはますます困窮、政府は全てをドイツのせいにする。新通貨を支えたり国債やIMF融資の利払いや返済をするための支援は得られない。政府と銀行が破綻し、新たな枠組みができるまで何年もかかる。ギリシャは大恐慌に陥り、資本主義始まって以来の大規模デフォルトの打撃で欧州もリセッションに逆戻り。ギリシャはEUも離脱する羽目になる。国内では極右ないし極左勢力が政権を握り、逃げられる者は国を後にする。北大西洋条約機構(NATO)加盟継続にも疑問符が付き、不安定な新ギリシャはロシアに頼って、プーチン大統領に地中海への足場を提供する。
原題:A Murky, Sloppy Muddle: How Greece’s Exit From Euro Could Happen(抜粋)
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更新日時: 2015/03/27 07:03 JST