何でも司法教室【何でも司法教室】
真実の解明に全力注ぐ
◆検察官/江渕 悠紀さん◆
Q 検察官の仕事で大切にしていることは何ですか?
検察官は、警察を指揮し、自ら捜査もし、起訴するか否かを決めます。起訴したならば、裁判で証拠により真実を証明します。
起訴するのは全事件の30%前後ですが、起訴すれば約99・8%が有罪となります。無実の者は初めから起訴しないのです。
この前提として、私たちは真実の解明に全力を注いでいます。
日本の刑事裁判において、裁判官は「検察官の主張が弁護人の反論に崩されず正しいか」を審査しており、必ずしも積極的に真実に迫るわけではありません。真実を証明する責任は検察官だけにあり、これに失敗すれば後はやぶの中です。
そこで、私たちは真実に近づくため、生の声をできるだけ早く、じっくり聞くことを大切にしています。
人の記憶は次第に薄れ、変容します。事件から長期間経った裁判での証言からは、真実を知るのに限界があります。相手が容疑者であれ被害者であれ、早期に十分、声に耳を傾けてこそ、真実が見えてくるのです。
真実を見極め、判断するには重い責任が伴い、失敗すれば強い非難にさらされます。それでも真実へ向かって進み、良識にかなう判断をし、社会を守るのが私たち検察官の使命です。(松江地検検事)