プロフィール~ニュースウオッチ9のキャスターになって~
2011年01月04日 (火)この番組は、昭和50年代、磯村尚徳さんが初代キャスターとなった「ニュースセンター9時」の流れをくむ、日本のいわばキャスターニュースの草分け的存在でもあります。キャスターニュースと通常のニュースの違うところ、それは、キャスターなりの視点や、ニュースの切り口を明確にして、ニュースを語っていくことです。
ニュースウオッチ9では、取り上げるニュースのオーダー、各項目の内容について、当番の編集責任者に加えて、僕自身も当然ながら決定に関与します。中でも、自らが得意分野としている国内政治や外交については、「直球解説」と銘打った解説コーナーや、時の時事問題に論評を加える「大越ウオッチ」で、よりニュースを深掘りする努力をしています。
とはいえ、ニュースは当然ながらキャスターの私見を勝手に述べていいものではありません。節度ある主観を交えながらコメントを展開するのは許されると思っていますが、それも、現場の記者にしっかり事実関係を確認したり、自ら当事者に取材をしたりする努力を怠らないようにしています。「思い込み」を視聴者の皆さんに押しつけることだけはしてはならないと思っています。
そうした中で、多くの皆さんに、よくぞ言ってくれたと言葉をかけていただいたコメントがありました。中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事故。逮捕・拘留していた船長を、沖縄地方検察庁が、「外交」にまで踏み込む判断で釈放した時です。そのときの「大越ウオッチ」で、高度な政治的判断を一地方検察庁におわせる形をとってしまったこと、中国に対して、日本が「強気に出れば屈する国」という誤ったメッセージを与えてしまったことの2つをあげ、批判しました。もちろん、そのコメントの責任はぼくにあり、僕の主観に基づくものではありますが、この問題に関わった多くの政府関係者の本音を十分に取材した上でのコメントでした。
キャスターは、いわゆる「語りのプロ」であるアナウンサーとは違います。25年以上、一線の記者として歩んできた私は、語り口ではアナウンサーにかないませんが、長い取材経験に基づく「ニュースを見る目」は養ってきたつもりです。客観的で正確無比な、従来のNHKニュースのコメントに、記者としての経験をしっかりと盛り込んだ言葉を紡いでいくことが僕の第一の仕事であり、やりがいです。
もちろん、それ以外にも喜びはあります。それは、大好きなスポーツコーナーに絡めること。特に、若い頃ずっと親しんできた野球のニュースはわくわくします。自分で取材に出向くこともありますし、青山アナや一柳アナと、当意即妙のやりとりをするのが、毎日の番組の楽しみになっています。
投稿者:大越健介 | 投稿時間:10:29