初任地の岡山で、初めて命じられたのが、中国山地のある町で、乗用車がダム湖に転落して複数の行方不明者が出た事故の続報でした。先輩記者は現場に急行中。ド新人の僕は、デスクに命じられるままに、警察や消防に電話取材しました。しかし、当然ながらというか、報道発表用の基礎資料程度の情報しか集められず、原稿には大事な要素が抜け落ちていたりして、デスクに何度も怒られました。

新人時代にもっともお世話になったデスクは、社会部出身の正義漢。事件の原稿を書く時、被害者や、時に容疑者に対しても、思いやりに欠けた表現があったりすると、それこそ原稿を破り捨てられるほどの勢いで怒られました。そのくせ、取材が実って特ダネがとれたりすると、抱きつかんばかりの喜びよう。朝方まで祝い酒を飲まされたのもいい思い出です。
岡山は、すばらしい思い出も、つらい試練も同時に味わった第２のふるさとです。むしろ、４年にわたって取材で走り回ったわけですから、生まれ故郷よりもよく知っているのがこの岡山の地です。テレビから「岡山」という言葉が聞こえると、つい仕事の手を止めて画面に見入ってしまいます。