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株主総会後、記者会見に臨む大塚家具の大塚久美子社長(撮影:後藤麻由香、以下同)

 経営方針を巡って創業者一族の対立が続いていた大塚家具は27日、東京・有明の本社で定時株主総会を開いた。焦点だった経営陣の選任案は、父親で会長の大塚勝久氏の退任を求めた長女、大塚久美子社長側の「第2号議案」を賛成多数で可決。久美子氏の社長続投が決まった。ただ議案に賛成したのは有効議決権の61%にとどまり、総会では株主から経営の立て直しを求める声が相次いだ。

 総会では収益や企業統治(コーポレートガバナンス)の立て直しを迫る株主に対し、久美子氏、勝久氏ともに従来の主張を繰り返す構図に終始した。オーナー企業が創業者の「ワンマン経営」から、いかに社会の「公器」に脱皮していくのかという本質的な問題を問うべきはずの総会は、さながら「大塚家具劇場」の様相を呈した。

 午前10時過ぎ、ほぼ定刻通りに始まった株主総会には個人株主ら約200人が詰めかけた。昨年の出席者は30人程度だったことからすると、関心の高さは異例と言えるだろう。株主の投票権を示す議決権も18万5307のうち、9割近い16万5340が当日までに行使されたという。

 総会で議長を務めたのは社長の久美子氏。業績、議案の説明が一通り終わると、会長の勝久氏が口火を切った。一株主として自らの社長復帰と久美子氏の退任を盛り込んだ「第5号議案」を説明するためだ。

 「私がやらないと大塚家具だけではなく業界全体がダメになる」「ベンチャーだった三十数年前から日本生命(保険)、東京海上(日動火災保険)の皆さまには株式を持っていただき、大きな迷惑を掛けずにやってきた」。勝久氏の第一声は、まるで投票前日の選挙演説のような切実さに満ちていた。

 勝久氏、久美子氏ともに事前に固めた「基礎票」は2割強で、ほぼ拮抗。大株主の生損保と多数の個人株主を味方に付けることが、勝負の分かれ目となった。

 勝久氏は高ぶる感情を抑えきれなかったのだろう。株主議案の説明にも関わらず、話は次第に家族の歩みに逸れていった。

 「私は5人子供をつくった。その中でも大きく生まれた子は久美子。しかも難産だった。途中で諦めようと思ったが女房が頑張ってくれた」「まだ10年、いや20年、私はできる。今度こそ、後任は間違えないように選びたい」。

 この間も議長席の久美子氏はじっと唇を噛んだまま。うつむきながら時に涙を浮かべる場面さえあった。久美子氏は緊張感が高まると、耳の下から手でボブヘアをかき上げる癖がある。右耳、左耳と交互に髪に触れる様子は穏やかではない心もようを映している。

緊張からか髪をかき上げる大塚久美子社長

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