2010-09-17 14:32:20

物理の時間。馬場の内側と外側の距離の差について。

テーマ:コラム
みなさんこんにちは、大西です。
昨日、美浦は朝から大雨でした。
昼間でも肌寒いくらいでしたが、
暑いよりはいいです。
今日は朝から曇り時々晴れですが、
おかげで過ごしやすいです。

最近は、私用で忙しいことと、
朝6時乗りで昼休憩が短くなったことで、
あまりブログが更新できていません。
みなさんに見放されない程度に、
ボチボチ更新していきたいと思います。


さて今日は、明日土曜日の中山競馬の枠順が確定しました。
8Rに出走する、シルクタイタンは7枠9番です。
12頭立てですし、距離も2,500mなので、
あまり枠順は気になりません。
後ろから競馬する馬なので、
外枠でよかったと思います。

今回お話しするのは、馬場の内側と外側の距離の差についてです。
日本の競馬では、新潟競馬場の直線1,000mのレースを除いて、
すべてのレースでコーナーを回ります。
コーナーを回るということは、
内側と外側で走る距離に差ができます。
みなさん、この差が一体どれくらいなのかわかりますか?
単純に、2頭の馬がピッタリと真横に並んで、
コースを1周走ってきたとします。
この時に、外側を走った馬は、内側を走った馬と比べて、
どれくらい余分に距離を走ったでしょう?
直線は内側も外側も走る距離は変わらないので、
問題はコーナーです。
コースを1周したとすると、
円1周分のコーナーの距離の差を求めればいいわけです。
外側の馬が、内側の馬よりも、1m外側を走って1周した時、
内側の馬の回ったコーナーの半径をr(m)とすると、
外側の馬の回ったコーナーの半径は、r+1(m)です。
内と外の距離の差は、

(外側の円周)-(内側の円周)

で求められますから、円周率をπとすると、

 2×π×(r+1)-2×π×r
=2πr+2π-2πr
=2π
≒6.28(m)

つまり、ピッタリ併せ馬でコースを1周すると、
外側の馬は内側の馬よりも、

6.28m余分に走っている、

ということになります。
6.28mといえば、およそ2馬身です。
これは、コーナーの大きさ、
つまり広い競馬場か、小回りの競馬場かは関係ありません。
コーナーの半径rが1でも100でも結果は同じです。
問題は内側の馬よりもどれだけ外側を回るか、
何頭分外側を回るかです。
上の場合は1周で計算しましたが、
だいたいどの距離のレースでも、
3、4コーナーは回ってくるので、
半周で計算してみたいと思います。
内側の馬よりも1頭分外側を走ったとすると、
半周なので、上の半分の距離で、
3.14m余分に走る、
つまり約1馬身余分に走ることになります。
これがもし、x頭分外側だったとすると、
内側よりx(m)外側を走るとして、

 (2×π×(r+x)-2×π×r)/2
=πr+πx-πr
=πx(m) 

3頭分外側ならば、9.42(m)余分に、
5頭分外側ならば、15.7(m)余分に走るということです。
単純に言ってしまうと、
1頭分外側を走って、
3、4コーナーを回ってくると、
内の馬よりも1馬身余分に走り、
3頭分外側を走ってくると、3馬身余分に、
5頭分外側を走ってくると、5馬身余分に走ることになります。
この時、勝った馬との着差がわずかだった場合、
あと少し内側を回っていれば、とか思いませんか?

単純に距離だけで見ると、
外側を回ってくるとこれだけ不利になります。
ただ、内と外の馬場状態の良し悪しなどもあるので、
単純にこれだけの差が出るとはいえません。
しかし、内側が空いているのに、
ルーズにコーナーを回ってくる馬(騎手)もいます。
これは明らかに、余分に走っていることになります。
外国では、その辺り、騎手や調教師はとても厳しいです。
外を回るとどれだけ余分に走るのかわかっているので、
コーナーに関しては、とてもタイトに回ってきます。
日本の場合は、やはり、馬場状態の良し悪しが占める、
割合がとても大きいので、一概に外を回ったからダメ、
とは言いません。
その辺りは、外国との競馬の違いでしょうか。


今度は、逆の視点から見てみましょう。、
内の馬よりも外側を走っているのに、
コーナーでどんどん差を詰めてくる馬もいますね。
「まくる」とか「まくり」とか言われますが、
この状態を考えてみたいと思います。

まず単純に、鼻面をそろえた状態で、
3、4コーナーを回ってきたとします。
中山の内回りコースの場合、3、4コーナーの距離は約500mです。
この2頭が200m(1F)を12秒のペースで走ってきたとすると、
500mでは、

 12×(500/200)=30秒

かかります。そこで、内側の馬の走る速さは、

 500÷30≒16.7(m/秒) 秒速16.7m

この時、外側の馬の走った距離は、

 500+3.14=503.14(m)

外側の馬の走る速さは、

 503.14÷30≒16.8(m/秒)秒速16.8m

となります。
この2頭が、このままの速さでゴールまで走ったとします。
内側の馬の速さを基準に考えます。
中山の最後の直線を300mとすると、
内側の馬は200mを12秒のペースで走っているので、
ゴールまでは、

 12×(300/200)=18秒

18秒かかることになります。
内側の馬がゴールした時、
つまり、鼻面を併せて直線を向いた時の18秒後、
外側の馬は何処にいると思いますか?
外側の馬は、内側の馬よりも、

 16.8-16.7=0.1(m/秒)

秒速0.1m速く走っているのですから、18秒後は、

 18×0.1=1.8(m)

1.8m前、つまり半馬身以上前にいることになります。

これは、3コーナーの入り口で、
2頭が鼻面を併せてピッタリ並んで、
直線向くまでずっと鼻面を併せていて、
そのままずっと2頭が等速で走ったと仮定した場合です。

もしこれが、内側の馬よりも後ろから、
外側を通ってまくって来た場合はどうでしょう?
後ろの馬が、仮に2馬身後ろから3コーナーに入って、
直線の入り口(4コーナー終点)で、
内側の馬と鼻面を併せた時を考えてみます。
外側の馬が走った距離は、1馬身を3mとすると、

 500+3.14(内外の距離差)+6(2馬身)=509.14(m)

直線向いた時の、外側の馬の速さは、

 509.14÷30≒17(m/秒)

ということは、内側の馬よりも、

 17-16.7=0.3(m/秒)
 
速く走っていることになり、
内側の馬がゴールに到達する時には、

 0.3×18=5.4(m)

5.4m前、つまり1馬身半から2馬身は前にいるということです。
同様に計算すると、
内側の馬と鼻面を3コーナーから直線まで、
2頭分外側を併せていると、
ゴール到達時には、3.6(m)、1馬身以上前、
さらに、3コーナーでは2馬身後ろで、
コーナーの間に2等分外を通って、直線並んだ時は、
ゴール到達時には、6.8(m)、2馬身以上前にいるのです。


ここまで読んできて、
「なんのこっちゃー!」
と思っている人が大半だと思いますが、
何が言いたいかというと、

外をまくって、内側の馬に並んで直線に向いた時は、
2頭がそのままの速さで走ったとすると、
外側が勝つ。

と言うことです。
そんなの当たり前、とか、経験上知っている、
と言う人も多いでしょう。
僕が言いたいのは、
外側の馬が、まくって差を詰めて直線を向いた時、
内側の馬と並んでいれば、
十中八九、外側が勝ちますよ、と。
じゃぁ、内側の馬はまるで最初から負けてる感じになりますが、
これをしっかり理解していると、
内側の馬(前の馬)はどうやって仕掛ければ、
外側の馬(後ろの馬)の猛追をしのげるか、
というのがわかります。
上の話では、まるで外側のほうが有利なように見えますが、
実際、内側の馬の方が走っている距離は短いのですから、
内側が有利なんです。

次回は、僕が考える、内側の馬が勝つための仕掛け方を、
お話したいと思います。
この話は、あくまで机上の論理に過ぎないので、
あくまで参考までに聞いてください。
では、次回に期待してください。


今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
コメ、質問等、お願いします。
今日も物理の話だったので、
わからないところはどんどん、書いてください!
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コメント

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1 ■(^_^)v

何回も読み直して


消しゴムをお馬さんに見立てて動かしたり

でも解りやすいです

ありがとうございます


う~ん…

奥が深いなぁ


競馬って
すごいですね

2 ■こんにちは

改めて数字がでてくると別のことを考えているみたいです
でもわずかに見えて大きな差になるんですよね。

内側の馬が勝つ仕掛け。何度も観てるようですが、いざ考えると難しいですね
馬体をあわせる?

3 ■こんにちは!

ちょっと難しかったですが、解りやすかったです(^-^)

次回の更新も楽しみにしてますね☆

4 ■見放しませんょ(*>∀<)b

大西教授~正直に言います!

・・・・・・・・・・計算式はギブです(;>3<)笑

でも、内容は分かりやすく理解できましたぁ♪

中山競馬場の芝のレース。

私は4コーナーからカメラを構えて、坂の手前でシャッターをきります。

ある騎手を狙うと大体外側を通ります。

カメラで追っていると4コーナーを回る内側の馬より早く仕掛けているのが分かります。

これは鼻面を併せる為ですかね?

(まぁ・・・それでバテちゃうパターンも良く拝見してますが(;*▽*)アハハッ)

駆け引きですね☆

北村(宏)Jがカッコ良くタイタンとキメてくれる事を信じて明日は中山競馬場へ向かいます(p`・ω・)ノ

5 ■Re:(^_^)v

>はな87さん

とりあえず、机上の論理です。
実際はそんなに単純ではないので、
もっともっと奥は深いでしょう。

競馬も色々な見方ができるので、
ほんとにおもしろいですね。

6 ■Re:こんにちは

>Aセラヴィさん

コーナーで並んで走ってくると、
差がないように見えますが、
速さの観点から言うと、
すでに差がついているわけですね。

そのあたり、次回に書きますので、
期待していてください!

7 ■Re:こんにちは!

>ゆづブー(プーから改名)さん

難しかったかもしれませんが、
理解していただいてたらうれしいです。
わからない事は気軽に、
コメでもメッセージでもしてください!

8 ■Re:見放しませんょ(*&gt;∀&lt;)b

>shadyさん

次回はもっと難しくなりますよ~。(笑)

明日はタイタンの応援、写真、
期待しています!
よろしくお願いします。

9 ■長い、、すみません。

そんな、式で実証できるって感激です。
結構、距離の差って大きいのですね。4コーナーだけ考えても、多頭数のレースだと5頭分どころか、7、8頭分ありそうですよね。1つのコーナーだけで、7頭分で約10mは余分にかかるんだ~とびっくりしました。それ、外まわりすぎじゃぁ、、というレースはよくあります。どのくらい距離的に損してるか、こうやって判るんですね。真上から見て円を描いているのが見れるパトロールビデオが見て見たいです。
今回の教材は、函館2600メートルを見ました。外枠だったこともあり、馬群がばらけず、勝ち馬は始終外外、2~3頭分ぐらいずつ外をずっと回ってます。距離は、2m外側として、1周半なので、20mぐらいは余分に走っているんですね。、、1コーナーあたりから、ずっと追っ付けっぱなしで3頭横にならんで同じ速度で走ってましたが、最終コーナー辺で先頭に3頭並んで大外、その後は、序々に内の2頭を離していって、勝ちました。(内の馬が果てた感もあります)この馬自身がどっかで切れる脚を使うよりも、じわじわと長い間、同じ速度で走るタイプらしいです。外から回ったことが勝因だったのでしょうか?騎手はずっと追っ付け通しでかなり疲労されたそうです。
実際のレースは式で予想はできないですが、レースの後に最初から最後までの動きをある程度解析はされているのかもしれません。距離だったり、時速だったり。それを基に、競馬ゲームなんかの動きは全部数式で作られてるはずですよね。
馬の能力を考えると、理論にプラス、持久力や、切れる脚と呼ばれる力、加速するための反応などいろんな要素があると思うのですが、数式に表されるとなるほどすごいなぁと思います。私は何でも数式やプログラムであらわす事ができるはず、そうでないものは、例外処理でやっぱりなんらかの表現が出来るはずって思ってしまう方なので、今日の大西教授の馬物理学はとっても面白かったです。続編楽しみです。

10 ■Re:長い、、すみません。

>みどり ㋲㋤㋰-㋸㋫ィ-㋴さん

その函館の馬、強いですね。
終始外を回ってきて、
内の馬をせり負かすのですから、
逃げていれば楽勝でしょう。
と、いう訳にいかないのが競馬ですが。

今回は
等速運動について書きましたが、
次回は仕掛けについて、
つまり加速運動について書きます。
楽しみにしていてください!

僕も高専に行っていたせいか、
なんでも数式や、理論に表すのが好きです。
乗り運動中は、こういう事を含めて、
色々な事を考えています。
最近はもっぱら、ブログのネタを考えています。

みどりさんも理系ですね。
楽しんで頂けてうれしいです!

11 ■こうやって数字で表すと

結構、わかりやすいですね!

私は機械系でしたので物理漬けでした。
(あまり物理は好きではなかったんですが…)

なので、こうやって数字を用いて具体的に説明してもらうと、非常にわかりやすいですし、もっといろんなことをこう言う形で知りたいって思います。

次回もよろしくお願いします!

12 ■Re:こうやって数字で表すと

>ぼやっきーさん

やっぱり理系の人間には、
数字を計算したほうが、
よくわかりますよね?

僕はしょっちゅうこんな風に、
数字で考えてます。

本日応援よろしくお願いします!

13 ■難しー!!

こんにちは!
いやぁー難しかったー。
漠然と理解出来ましたが、応用問題が出たらアウトです(笑)。
でもお馬さんそれぞれの能力や、持ってる強みを最大限出せるように、また弱点を出来るだけカバーするような乗り方を出来るか出来ないかが勝敗に大きく関わってくるんだなーっと改めて感じました。
どんなに能力のある馬でも、上手く誘導出来なかったら持ってる力を全部出せない事もあるでしょうし、逆にちょっと力不足の馬でも上手に誘導してあげたら能力以上の結果を出せる事も。
言葉にすると簡単になってしまうけれど、でもすごく難しいですよね。
レースの短い時間の中で、また状況が変わり続ける中でどう走るのがベストなのか?判断しながら走るって凄い!
しかもあのスピードで(汗)。
また私の中の競馬を見る目が変わりました。
次回の講義も楽しみにしてマス!!ありがとうございました!

14 ■Re:難しー!!

>まるさん

なんとなくでも、
僕が言いたい事が伝わってくれたらうれしいです。
本当は騎手にしかわからない事が、
いっぱいあるでしょうし、
こんなのは机上の空論にすぎないと
いう人もいるでしょう。

僕が書いたのは単なる物理法則ですから、
実際はその通りにはなりません。

でも、こんな風に考えながら、
競馬をみると、
それはそれで違った楽しみもあると思います。
楽しんでいただければうれしいです。

僕も騎手は本当にすごいと思います。
特に、活躍している、
たくさん勝てる騎手は、
僕らではわからないような、
いろんな事を考え、
感じながら、レースに乗っているのでしょう。

ほんと、競馬っておもしろいですよね。

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