【北京=阿部哲也】中国の習近平国家主席は9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)・CEOサミットの開幕式で講演し、「インフラ整備の加速は域内経済の一体化の前提になるだけでなく、様々な恩恵と長期発展をもたらす」と表明した。中国が中心となって設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や支援基金などを念頭に、周辺国・地域も含めたインフラ投資を主導していく考えを示した格好だ。
習主席は演説で「インフラ整備を通じて各国間の経済の距離を縮めることで、アジア太平洋地域がつながり、世界と道が通じることになる」と強調した。道路や橋梁、鉄道といった各国間にまたがるインフラの建設が進めば、域内の貿易や投資が活発になり、相互に経済発展が進むとの見方を披露。「アジア太平洋の夢」として経済統合を推し進めるとした。
柱として「AIIBを早期に本格運営し、金融分野での協力の新たな土台にしていく」方針を表明。さらに習主席が「一帯一路」と呼ぶシルクロード経済圏のインフラ整備や資源開発を支援する総額400億ドル(約4兆5800億円)の基金を独自に立ち上げる計画も紹介した。
これらの仕組みをテコに、中国は今後10年間で1兆2500億ドルの対外投資を進める計画だ。習主席が「地域の発展繁栄に貢献していきたい」と語ると、会場では大きな拍手が起こった。
一方で、環太平洋経済連携協定(TPP)などを巡る議論が紛糾していることを前提に「様々な自由貿易協定を巡る論議が湧き出しており、どれを選べばいいのか困惑を引き起こしている」と言及。「経済一体化の過程を深化するのか、それともばらばらになるのか。時代の局面を読み、我々は大家族であるという運命共同体意識が必要だ」とくぎを刺した。
APEC・CEOサミットは21カ国・地域の企業経営者や政府首脳らが参加し、10日まで開く。今年は周辺の16カ国・地域からも参加企業が相次いだ。合計1200社が参加し、貿易の自由化やインフラ投資の加速、IT(情報技術)化の推進、金融協力などについて話し合う。
習近平、AIIB、APEC