ありがとう米朝師匠〜ざこば・米團治 想い出がたり〜今蘇る国宝の知られざる素顔… 2015.03.27


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上方落語界の巨星、桂米朝さん。
今月19日、89歳でこの世を去りました。
告別式には、およそ1500人が参列。
落語に捧げたその偉大な人生をしのびました。
桂米朝さんは、1925年11月生まれ。
小さいころ、お父さんに連れられて通った寄席の落語が大好きだったそうです。
終戦後、落語家の道へ。
当時、衰退し、下火であった上方落語の復興のため、熱心に研究を重ねました。
話芸の伝承と弟子の育成に励み、消えかけていた作品を次々とよみがえらせ、上方落語隆盛の時代を築きます。
数十年前は10人ほどだった上方落語家が今や一門だけでおよそ70人に。
1996年には人間国宝に認定。
また落語家としては初となる文化勲章を受章するに至りました。
とことん落語を愛した桂米朝さん。
生前、こんな言葉を残しています。
案外落語という落とし話というのは現代的で、狙いやとか、おもしろみというものは私は非常に新しいと思うんです。
つまり、300年も前にこんな新しさがあると。
今の人でもうなるような新しさがその時分にあると。
思うことが多いんです。
それだけは、失わないようにしたいと思います。
「ありがとう桂米朝師匠〜ざこば・米團治想い出がたり〜」。
古典って新しいんやってよく言うてはりましたね。
言ってはったね。
滅びないと言うてはったけど。
多大、ちゃーちゃんが入りはる前は滅びる言われてたんやね。
世間ではね。
せやけど、滅びないと言うてはったね。
何回も聞きました、僕も。
苦しい、あかんという時期あったでしょう?と言うたら、そんな時期は一遍もなかったって。
こんなええもんが滅びるわけないと。
たまたま今、時代に合わんのか知らんけど、演じ手が出てきたら、絶対これは滅びない!新しい、江戸時代にとか、同じああいうことを言うても値打ち、私らないけど、師匠が言うとそうやねんなあと思うなあ。
卑下されなくても。
いやいや卑下なんかしてないけど。
もうやっぱり信用性が違うがな。
すごいな思う。
何なんでしょうねえ、あれは。
それは信用と人格と、現に勉強してはるし、納得するんでしょう。
それのせがれさんやんか、あんた。
いきなり褒めごろしでございますか。
いやいや、そんな事ない。
きょうはざこば兄さんと、2人で米朝を語ろうということで、米朝が他界してから1週間がたちました。
ちょっときょうは朝日放送に、いろんなこんなん出していただいたときは、うれしい。
この「和朗亭」という番組は…。
これはもう、すごいのこしらえはった。
この番組は「和朗亭」。
つまり、みんな忘れてしまうという、事象だとか芸人だとか、それをどんどんピックアップするというのは、これは古典落語を滅びている古典落語を復活させるというのと全く同じですよね。
同じやな。
で、師匠が呼んできはる芸人さんがまた間違いないねん。
こんなおもしろい芸人さん、あんなアイデアの芸人さんがいてはったという。
この写真みたいに、あんた、これ見たら何かわかるやろう。
こちらのたらいにゃ。
鴨が一羽〜。
こちらのたらいにも鴨が1羽。
たらいに見かわす鴨と鴨というやっちゃ。
ありがとうございます。
いやいや。
勉強になります。
米朝直伝でございます。
ちょっとぐらい引き継いでいるやろ?全然空気がちゃう言われるけどな。
いや、ほんまに…。
お座敷遊びは…。
ちゃーちゃんに皆連れていってもらった。
いろんなものを引っ張り出されたその映像が朝日放送にたくさんたくさん残っているでって。
そない残ってないんちゃう?そない残ってる?スタッフはぎょうさん残ってるでと言っていたので、ちょっと見てみましょう。
見てみましょう。
相変わらずお古いばかばかしいお話を一席申し上げたらきょうは行きまへんので。
今、市会議員を減らしたらどうかという運動が出ておりますね。
またそれの反対の運動も出ておりますので。
大体町の空気、減らすなという、今のままでええという声もあるそうでんなあ。
というわけで、きょうはというわけで、私と片岡さんと国際見本市の会にやってまいりました。
これは最新式なんですな?そうですね。
1時間1時間、どれぐらいできます?3000個の能力です。
ここは韓国の展示場なんですがね、韓国は初めての出品ですか。
ええ、初めての参加です。
自分や。
ああ、そうですか。
いや、もうアメリカ館はねえ、きょうじゅうには片づかんと思ったんで、それでこのエキスポランドに来たんですわ。
何かに乗せなしょうがないから、口車に乗せるわけにはいかず、子供を何かに乗せましょうか、とにかく。
まあお年のいった方も。
大体これが大正から昭和の初期ぐらいの感じでんな。
思い出します。
昔懐かしい寄席を朝日放送のスタジオの中に、スタジオにつくったんですね、これだけのものを。
昔の懐かしい雰囲気でいろんなものをこれから見ていただこうというわけです。
ブリやボラなんかを出世魚と言います。
成長していくにつれて、ボラになるように、名前が変わっていく。
ブリなんていうのは、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリですか。
我々芸人なんかでも襲名披露で名前が変わると一段上がりますが、寒ブリは王真打でございます。
どうです、この見事な寒ブリ。
脂の乗った申し分のない寒ブリの切り身。
これに塩をして、身を締めて、熱湯、さっとくぐらせる。
霜降りと言うんですってね。
なべものというものは生の材料を扱ってそれをするんですが、こうやって処理したものを使うと、また格別な味がございます。
懐かしいですね。
「味の招待席」。
あれは僕が内弟子でついているときに収録があったんですよ。
わし、一遍も食べてないねって言うてたね。
映像を見て。
見てしゃべっているから。
大体最後は手間なことをするんですなあっていうのが口癖やったな。
そうそう。
でも、あれ13本撮りで、もうへとへとになって。
十三のOTBFで狭い暗いスタジオで撮っていたんですよ。
僕は、それ行った事ないんで知らんのやけど。
あれ、収録した後は、ほんまにぃ、もう!いうて、イライラしながら、あと3本あるで、まだ3本もあんのんかいなって、たばこ吸って、「きょうは」って言うて、ぱっと変わって。
二重人格や。
話あれするけど、万博のああいうインタビュー、リポーターというのかな、あんなん、もううちの師匠が初めてちゃうか。
つまり落語家でありながらリポーター、ディスクジョッキーをするというのは、よどの車が、くるくると、誰もあらへんがな。
もっとグッとつき出すねん。
もっとグッと。
白いけつじゃあ!はまってまいよったがな。
おまい何ぞ、ええことでもしたように思っていたんと違うか。
子供がかわいそうやと思ったら、たかだか5厘か1銭の笛、何で銭出して、買ってやらん。
それが盗人根性ちゅうねん。
抜かしたな。
どう考えても不思議な…。
不思議なことあらへんがな!きょうはぜぜとかいとがぴたっと王手、入ってないねん。
不思議ななあ、それは…。
何にでもなりはりますね。
うん。
最後の偉業が米朝落語全集のこれが去年の6月に敢行したんです。
この8巻なんて、すごい資料で。
お兄さん、多分読んではらへんと思うけど。
おい、ちょっと待て。
えらい軽くきついことを言うなあ。
読みはりました?読んでるよ。
ほんまのお手本、教科書。
これ、なかったら、これからのはなし家、覚えるネタないで、これのおかげで、はなし家ネタ覚えられる。
米朝の言葉なんですけどね。
去年ですわ。
昔から申してきておりましたが、私は落語という芸はどんなに時代が変わろうがなかなか滅びるもんやないと思っています。
何しろ世界に類のない話芸ですさかいになあ。
けど、それをうまいこと高座に乗せられるかどうかは100年先、200年先のはなし家にこの本が少しでも役に立ったら、幸いですと。
100年先のことですよ。
すごいねえ。
これだけの資料を残したはなし家さんてな、昔は速記本で語ったやつで語ったやつを書いている、東京のネタもあるけれども、ネタだけやなく、しぐさとか、そういう間とか、そういうのを書いてある本はちょっとないね。
すごいなあ…。
演じるだけではなくて、つくってはりましたから。
「一文笛」というのも…。
まめだなんてというのは、ミタジュンイチさんの作品ですけど、サゲだけもらいますいうて。
例えば、間のくすぐりなんかは不思議やな、不思議やろうというのは、あれは自分で考えたりとか。
俺これはやめとこうか。
何を?この際ですから。
言うてええ?どうぞ。
原稿が出てきやんよ。
もちろん書いてるんや。
サゲをいただくと。
その下げを買うよ言うたら、買ういうかな、借用書が出てきて、100万円って書いてあった。
そのサゲのためにちゃーちゃんがミタ先生に、100万円を貸したんやと思うわ。
当時の100万円やで。
すごいですね。
あかんかったら切ってもらったらええけどな。
三田さんは借金王だったんじゃないですか。
100万円だけちゃうねん。
その前にずっとあるねん。
それで、でもミタジュンイチさんの功績は大きいし。
ボンボンやからなあ、三田先生。
芝居茶屋の息子やから。
それでしかし、しゃあないと。
そうやけど、そのまま借りっぱなしやから、あんさんのネタを私が買わしてもらいますという形やね。
そんなん出てきたんですか。
こんなん出てきたって、この間、見せてもらったところや。
ありがとうございます。
きょうのお客様は私の師匠の桂米朝でございます。
よろしくお願いします。
師匠。
私がやっているのは、私が苦労したところもあるけれども、大体昔からずうっと伝わった型を大事にしてやっているわけやさかいね。
だから、やっぱりそれこそ100年も200年も歴史があるんやから、その積み重ねででき上がったものというのはやっぱり少々のことでは動かんやろうと思うね。
私もいろいろ変えたけど、また元へ戻したというのはたくさんあるさかいね、そういう例は。
落語だけはね、これ、あんまり自分で陶酔できない芸やと思うで。
自分で歌、歌って、自分がうまいなと思って、カラオケで陶酔してる人はあるけど、落語でおのれが陶酔しているはなし家というのは歴史にかつてなかったんやないかと。
ちょっと気がこう沈んでくると、そやそや、落語やろ、どんどんうれしくなってくる。
こんな弟子ができたさかい、私は型を守らなあかん。
責任を感じ出してしまってね。
昭和22年にあの戦争の終わった後にですね、食べもの商売をしようというのは分かるけど、はなし家を…。
それはもう、食っていけるとは思わなかったさかい。
ぎょうさん若いもんがどんどん出てくるなんて夢にも思えんことでした。
こんな言いたいこと言って、通してもらえるような。
えらい幸せやね。
時代ですよね。
お兄さん。
自分で言いなはんな!お兄さんを3年間住まわしていたという勇気は師匠、すごいですよ。
何するやわからへんもん。
それはガラスやとか、食器類はことごとく割られたよ。
そうですね。
米朝師匠…。
窓ガラスでも、こないして、掃除機かなんかで、バーン、バーン!って…。
よう割っていただきまして、ありがとうございます。
いや、本当に。
もう一生懸命やったんですもんね、お兄さん。
いや、そうでもないけど。
あんな広い家やから、少々振り回しても割れへんやろうと思ったら、やっぱり割れるな。
これこれ。
キセル。
たばこ盆。
これ、太いなあ。
もっと太く見えた。
あのときは。
それで、このたばこ盆の角で。
ここへ。
ここへコーンと…。
こんなもんカンカン言わされたら、覚えてられへん。
しゃべってられへんで。
ありました、ありました。
枝雀兄さんのときだけ…。
あんたも言わされた?もうこの音はねえ、ほんまにどつかれるより、こたえるんです。
それやったらどついてなあと思うぐらい思うは覚えが悪いなあって、ぽん!パン。
歴代、内弟子はみんなやられましたね。
そうやから、内弟子の部屋にいてて、朝丸、稽古って言われたら、今から稽古かい!カチーン、カチーン…、もう…。
本当に稽古の時間だけは、厳しかった。
厳しい。
誰も入れなんだね。
誰も入れなかった。
僕、子供でしたけど、もう稽古場を2階の部屋に上がろうと思って、もう顔を見られたら、下へおりとけ。
ピシャッ!でしたね。
とにかく、あの空気は誰にも見せへんかった。
ところが稽古終わったら、また変わりますねん。
そうそう。
僕らいつまでも下でネタくってるやんか。
ほんなら、2階からスイカ、ちょっと数だけ切って持ってきてっていうて、台所へ行って、2階に持って上がるんや、みんなにスイカ渡すんや。
食べたら。
そこへ座っとれいうて、やっとあの輪の中へ入れるわけや。
僕も呼ばれたいがな、早いこと。
ほんなら、ああ、そうやな、朝丸、お茶持ってこいと言ったら、お茶を持って上がったらそこに座っておけと言って、輪の中へ1人ずつ入れていってくれるという、ほんまにたまらんな。
そのお茶がお酒のときもあったでしょう?ある。
もうあんだけ、厳しかったのに、もうつい今まで100回怒られた弟子におい、ちょっと飲め、飲めって言われて。
そない変われるかというぐらい変わるなあ。
今度は満面の笑みを浮かべて、酒飲ませてもうて。
で、どんどん、どんどん飲んだらええねや、飲まなあかんがなって、酒を飲んでいるうちに覚えていることを忘れてまた怒られるんやけど、でも、この米朝に酒はつきものでしたね。
つきものやったね。
米朝の一門に入門して、全然飲めませんねん言うてた人が3年たったら、飲めるようになって。
それともう一つ、僕、思うのは、誰もうちの一門はやめてないんですよ。
ああ…。
これ、ほかの一門、笑福亭…、この間、鶴瓶兄さん来てくれはって、笑福亭はようやめたがなあ。
もうころころやめたがな。
で、ほかのところもやめた人はあるけど、考えたら、うちの一門だけ、誰もやめてない。
それは、まあそんなんしょっちゅう、いはれへんけど、1人もうちはやめてない。
それちょっと自慢やなって、ちょっと自慢やなって言うてはったな。
うちは誰もやめてない。
これはうちのちょっとした自慢やって。
不思議なこと言うてはったな。
道を歩いてて、聞く俺もおかしいけどな、師匠、あの世ってあるんですかねって、聞いたことある。
人間なあ、知らんでええこともあるねんで。
人間知らんでええことって、あるねんで。
そうやなあ、僕はそのかわり、知らんことも多すぎやけどな。
それは知っとけやって。
でも、僕は知らんかったけど。
ええ言葉やろな、この師匠はという。
一言やな。
米朝は、死ぬことと生きることの境目、あんまりなかったでしょう?米朝の死生観はすごくて、死ぬことと生きていることは余り違わないんやでってよく言ってはりました。
変わらない。
生きていることと死ぬことはあんまり変わらない。
肉体がなくなるか、あるかだけの違いやって言うてましたですよね。
米朝の兄弟子のよねのすけ師匠、えっちゃん師匠が亡くなったときに、ちょうど今はなきホテルプラザのマルコポーロというバーで、仕事済ませて、酒飲んで、きょうはやろうかって、酒を飲んで、次、注文表が来て、何のせますかって、見てるときに、えっちゃんの訃報が入ったんです。
僕、言いにいかなあかんから、メニュー見てる時に、師匠、何や。
よねのすけ師匠、お亡くなりになりましたって。
えっ!えっちゃん、死んだあ…。
サイコロステーキ1つ。
これね。
まさに米朝の死生観。
もう、えっちゃんという、無二の親友が亡くなった悲しみと、今サイコロステーキ食べたいという。
若いときは夢よう見たんですけれども、年とったらあんまり見ないようになりました。
夢というのは常々思っている夢に見る。
酒が飲みたい、けれども、金がないと思っているとよそから上等のお酒をもらった夢を見るんですわ。
この酒はおいしいんや、楽しんでおかんをつけている間に目が覚めてしまいましてね。
冷やで飲んでおいたらよかったって、後悔をしたりするんですな。
金が欲しい欲しいと思いながら、道を歩いていると、昔も一両の小判が落ちています。
値打ちもんや、ありがたいと拾おうとすると、これが冬の話でがっちり凍りついて、どうしてもはがれてくれまへん。
たたき割ろうと思ってみても、棒もなければ石もないし、そこで考えて、温度でこれで溶かそうということに。
小便をじゃあじゃあひっかけまして、氷を溶かして小判を拾いあげてやれやれと思った途端に目が覚めて、小判は夢で、しょんべんは本物やったという…。
一番情けない夢でございます。
この夢とうつつの境目というのがありますわな。
半分寝てて半分起きているような状態。
ああいうときに人間は割とすかたんせんもんですで。
もう眠たい目をこすりながら便所に行くと、つけたり消したり、掛け金をあけたり、締めたり、ちゃんとやるべきことはしっかりやっています。
ところが何にも覚えてまへんな。
トイレに行ったということも忘れてます。
ところが、割と間違いはやってません。
無意識というものはえらいもんでございまして、寒い晩に男が2人。
布団が1組。
しゃあない、野郎同士で寝ようかと、布団かぶって寝てる。
どうしても寒いから、自分の引っ張りますわな。
隣に寝ているやつが寒くなって、これが夢うつつでおのれのほうに…。
今度こっち側が寒さを感じて、また同じようにこっちへ…、こっちが引いて、こっちが引いて、夜通しこんなことをしててへとへとにくたびれてしまった。
ああしんど、一遍起きて休もうか。
もう何が何やわけのわからん話に…。
とにかく人の寝顔を見ているというのはおもしろいもんですわ。
相手が見られていることは知りませんねん。
こっちは見てるんやさかいに優越感みたいなものがあるような気がするんですな。
ちょっとこの人、そんなとこでうたた寝したら、風邪引きますで。
何ちゅう顔やろうなあ…。
しまりのない顔。
一生連れ添うと思ったら嫌になるわもう。
鼻からちょうちん出してきた。
またちょうちん。
また、ちょうちん。
お祭りの夢でも見てんのやな、この人。
ちょうちんばかり並べてるやんか。
またちょうちん、ああ、引っ込めてしまったわ…。
雨が降ってきたんやな。
ちょうちん、出したり入れたりしてるわ。
大きなちょうちん、ちょうちんが破れて中から蝋が流れてきたなあ。
あらあらら。
難しい顔してぶつぶつ言い出したわ。
えっ?おっ…、うなされてんのやな、この人。
おお、おお、今度はまたニタッと笑って、どんな夢見て寝てんのやろうなあ。
またえらい真面目な顔に…。
ちょっと、ちょっと起きなはれ、あんた。
あっ、ああ…、寝てたなあ。
寝てたやない、この人。
あんた、どんな夢見てたん?えっ、どんな夢見てたんやって。
俺、夢なんか見てへん。
見てたやないか、難しい顔して、ぶつぶつ言うてるかと思ったら、にたっと笑ったりして、大分おもしろそうな夢やったやないの?いや、俺は夢なんか見た覚えはないけどな。
見てたて。
見てへんって。
ほな、あんた、私に言えんような夢見てたんか?おかしいこと言うなや、見てへんさかい、見てへんて言うたんや。
あんたがどんな夢見て、夢のことで焼き餅焼いてごちゃごちゃ言いいない。
あほな夢見なって、言うたらおしまいやないの。
見てへんいうたら見てへん!言いとうなかったら、言わなくてもええがな。
あんた、昔からそうやねん。
水くさいところがあるんよ。
ちょっと夢の話ぐらいしてくれたらええのに…。
私がこないして貧乏所帯をやりくりして…。
何を言い…。
夢なんか見てへんさかい見てへんって…。
それが何が気に入らんのや。
どんな夢でも見やがれ。
あんまりわけの分からんこと抜かすとボーンと行くぞ。
どつくなり蹴るなり…。
けるなと。
よし、きょうというきょうは…。
どうでもしやがれ!いっそ殺せ!よし殺したら!待て待て、待たんかい。
よくもめる夫婦やなあ、おまえのところは。
おまえとこは楽しみか、道楽で、やっているのかもしれんけど、夫婦げんかは犬も喰わんぐらい知ってるわ。
ほっとくわけにいかんやろ。
おさきさん、わあわあ泣いて、涙で、おしろい、まんだらになってるやん。
兄さん、聞いて。
この人、昔から薄情な人と思っていたけど、きょうというきょうはどないして。
昼寝してるんや。
こんなところでぶつぶつ言うてるかと思ったら、ニタと笑って、何かおもしろそうな夢見てる。
わてが起こして、どんな夢見たんやって、言うてくれたら、夢なんか見た覚えなんかないって。
一遍笑ったら、しまいやないかって言ったら、夢なんか覚えてないって。
それで、さあ殺せまで行くのかい、おまえとこは。
長生きせえよ、ほんまにもう。
子供がないさかい、そんな気楽なこと言うてられるんや。
世間話して…。
行ってこい、行ってこい。
しょうもないことで、世話焼かすな。
いつも済まん。
夢の話をしてくれへんさかい、わあわあ泣いて、さあ殺せ。
あほらしくていかんわ。
せやけど、おまえ、ほんまは、どんな夢見たんや。
いや、わしな、ほんまに何ぼ考えても夢なんか…。
ええがな、たまには女房に言いにくい夢を見ることもある。
わしは誰にも言わへんさかい…。
いや、見たら、あいつに言うてるがな。
ほんまにわしは何ぼ考えても夢なんか見た覚えなんかないさかい。
わしはな、どんなことがあっても、これは人に言うなって言うたら黙っている腹を持っているつもりや。
ちょっとその夢の……。
わからんやっちゃな。
見てへんさかい、しゃべりようがないって言うてるやないかい!ああ、そうか。
おまえと、わしとは何じゃい。
小さい時分からの友達や。
大概古いつき合いやぞ。
おまえのところのカカアよりわしのほうが長いわ。
遠い親類より、近い他人という言葉があるわい。
お互いに味噌やしょうゆの貸し借りまでして、世帯の裏の裏までわかっていて、親類以上のつき合い、兄弟分とか何とか言うてるわしにも、夢の話はできんちゅうのかい。
わからんやっちゃな。
見てない夢はしゃべりようがないって言うとるんや。
3年前のことを忘れやがって。
3年前、何じゃい。
3年前の年の暮れ、目の前に大みそかや、正月やというときにわずろうたやろう、あのとき、友達を頼んで、誰の世話やったと思うねん!そんなこと言うんなら、8年前のことから言わんならん。
何が8年前や。
これから道で会っても物も言わんさかい、よう抜かした、おまえのようなことのわからんやつと、兄弟分とか何とかと言うてたと思ってたらもう、うち来てくれな。
来てくれな。
けんかの仲裁に来たというのに、それが何というものの言いようや。
何が気に入らんのや。
やるのかい、来るのかい。
2人とも座れ。
よくもめる長屋やなあ。
うちの長屋は。
必ずどこでけんか沙汰じゃ。
おまえら、兄弟とか言ってて、まあ、家主さん、聞いてくんなはれ。
兄弟分、ちゃんちゃらおかしい。
大体、夫婦げんかの仲裁に来たんでっせ。
仲裁は時の氏神や。
何でもめてるなんやって。
こいつがここで昼寝してたらおもしろそうな夢を見てると。
ここのかかが起こして、夢の話をしてくれ。
わしは夢なんか見てない、夢の話ぐらいしてくれてもいいやろうってもめてる。
私が仲へ入って、あほなことでけんかするんやないと、私は。
しょうもないことでもめやがって。
うちのおよしが、カキ餅焼いているさかい、ここのカカアをあっちにやって、2人きりになってわしは誰にも言わんさかい、わしにだけ、その夢の話を言うてるのにこいつは夢なんか見た覚えはないと、こういうしらじらしいことを抜かすさかい。
アホ。
他人の夢の詮索する暇があったら、おまえのところは家賃がたまってる。
いや、それとこれとは話が別…。
何が別や、帰れ帰れ。
しょうもないことで、世話を焼かして…。
きょうは妙に意地になりやがって。
何が兄弟分じゃ。
夢の話を…。
しかし…、かなりおもしろそうな夢らしいな?あんたまで、そんなこと言うのか。
ほんまに夢なんか見てまへんさかい…。
あいつ、あんなこと言うてたがな、あんなしゃべりはないぞ。
あんなやつにちょろっと漏らしたら、町内で明日もう知らん者のないようになっている。
わしは口がかたい。
ちょっとその夢の話…。
ほんまに私、夢なんて、見た覚えはございませんのや。
家主とたな子は親も同様の間がら。
まして私は町役じゃ、町役を務めておれば、さあ何ぞというときには、親がわりになって面倒も見んならん。
親がわりである家主の夢の話はできんという…。
怒ったらあかん。
見てへん…、見てへんさかいにしゃべられへんと。
そうか。
きょう限り、この家あけてもらおう。
あんた、それむちゃくちゃや。
何がむちゃや!ここに入ったときに、いつ何どきのときには、ご入用の先には町役まで務めてる家主の家…、ほかの店子に示しがつかん。
きょう限り、この家あけてもらおう。
ああ、さようか。
私は、夢なんて、見てしまへんがな。
仮に見てたとしなはれ。
見てたとしてもしゃべらんさかいといって、これは筋が通らん。
出るところに出てもここは動きまへん。
出るとこに出ても?町役を向こうに回して町役を向こうに回してどんなことがあっても、出さなあかん。
どんなことがあっても動きません。
頑張ってみてもちょんまげ時代は町役の権限というものはすごいものでして、どうでも家をあけえと。
したためて、西のご番所、奉行所へこれを届け出ました。
お奉行さんもびっくりしまして、やったことがない。
原告、被告、やったことがない。
原告、被告、テレビでおなじみ、おしらすの砂利の上にごまめむしろというむしろが1枚。
そこに双方が座らされて、ほかの町役、まち役人の連中が後ろへ…。
家主、こうべ、面を上げい。
差し出されたる願面によればこのほう、夢の話を聞きたがり、物語らんゆえにたなだてを申し渡したとあるが、まことか。
まことか?不届き者めが!いや、町役とか、家主と申すものは、それがたかの知れた夢の話を聞きたがり、不届き千万、ほかの町役連中もよく承れ、不届きの至り。
きっと…。
そのほうの勝ちじゃ。
家をあけるには及ばん。
今後、家主からとやかくあった場合は奉行所へ…。
よいな。
本日の裁きは、それまで、一同の者、ばかばかしい。
キハチやら、ちょっと…。
ほかのものはよい。
ほかのものはよい。
キハチ1人だけ、ちょっと…。
いや、何、きはち。
さぞ驚いたであったろうな。
町役を務めてはる放り出されたとなったらどこも入れてくれません。
ありがたいことでございます。
神にも目がある。
かかるばかばかしきことのまかり通るご時世ではないぞ。
が、しかし、そのほう。
町役のけんぺいをもって断じてしゃべらないとは断じてしゃべらないとは奉行ことごとく感服…。
初めに女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、家主までが聞きたがった夢の話。
奉行にならば、しゃべれるであろう。
奉行さん。
私、夢見てたら家内にしゃべってますねん。
こんなお手数かけることも何もなかった。
何ぼ考えても夢を見た覚えがございません。
どうぞご勘弁を願います。
各人払いまでいたした上、夢の話たって聞こう。
何ぼ言われましても見てない夢は言えませんので…。
将軍家のおめがねをもって勤めるにも重き拷問に行っても重き拷問に行ってもそんなせっしょうな。
この者に縄を打てい。
奉行所の庭の松の木にぶら下げられてしまった。
この者が夢の話をしゃべると申すまで、縄を解くことはまかりならんぞ!ぷらんとぶら下げられて、ぎりぎり縄めは食い込む。
上の血は下に通わん、下の血は上に通わん。
頭がぼうっとしびれてまいります。
あたりはだんだんたそがれる。
ここでこのまま死んでしまったら、世の中にこれぐらいあほらしい死に方は、またとなかろう。
情けなくなっておりますところへ、一陣の風が吹いたと思うと、キリキリ、キリキリっと宙天高く舞い上がった。
縄がほどけた一旦ここはどこや知らん。
顔を上げて見ると、目の前に立ったのが身の丈はすぐれ、真っ白い髪の毛が左右に垂れ、赤ら顔に両眼はランランとひかり、鼻はあくまで高く、手に葉うちわを持った大てんぐの姿。
あんた、てんぐさん!心ついたか。
天狗さん?ここは一体どこでございます?ここは鞍馬の奥、そうじょうが谷である。
私、鞍馬山まで運ばれてきた…。
久々に大阪の上空を世にも不思議な話を聞いた。
天下の奉行ともあろう者が、たかの知れた町人の見たる夢の話を聞きたがり、拷問にかけて責めるとは奇っ怪千万。
あのような者に人は裁けん。
てんぐがかわって裁いてつかわす。
そのほうに罪はない。
ふびんなゆえにここまで運び助けとらしたまで。
ありがとうございます。
もうしゃべられへんのをしゃべれしゃべれと、往生してました。
たわけたことよのう。
天下の奉行ともあろう者が…。
初め女房が聞きたがったは女人のことじゃ、隣家の男が聞きたがり、家主から奉行までが聞きたがる。
てんぐは、そのようなものは聞きたがらぬゆえ、安心をいたせ。
ありがとうございます。
見てない夢をしゃべれしゃべれと、往生しておりました。
ばかばかしい。
うん…、聞いたところで何になる。
ん?たかが夢ではないか。
初め女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、家主から奉行まで聞きたがった夢の話。
てんぐは、そのようなものは聞きとうはないが、町人などと申す者は、どのようなばかげた夢を見るものか、おまえがしゃべりたいと言うのならば聞いてやってもよいが?しゃべりたくない。
ここはほかに聞く者もなき、鞍馬の奥、わしは人間ではない。
聞いてやってもよいと申しておる。
わしがこう申しておるうちにしゃべったほうがよかろう。
おどかしたらあきまへん。
ほんまにわし、夢なんか見てまへん。
てんぐを侮るとどのようなことになるか存じおるか。
五体は八つ裂きにされ、杉の小づえにかけられる。
わしがこう申しておる間に。
ほんまに夢なんか見て…。
どうぞ…。
まだそのようなことを…。
長々と爪の伸びた指が体にガーっと…。
ああ、助けてくれ、助けてくれ!ちょっとあんた!ちょっと。
えらいうなされて…。
師匠・米朝が残したこんな言葉がありました。
ざこばへ。
頼りにしてまっせ。
米朝。
84歳のときの筆です。
いや僕、師匠の色紙持ってないんですて言うた。
何か書いてもらえまへんやろか、持ってまへんねんって。
いや、うちは、身内は案外こんなもん持ってないもんやで。
そやけど、書いてはったんで、ひとつ私に書いてもらえまへんやろうか。
頼みにくいねん。
お年もお年のときやから。
それで師匠持って、「ざこばへ」って書いて、ぐっととまって、何て書こうかなって。
大体川柳とか俳句を書きはるけど、何て書こうかなと。
頼りにしてまっせって。
書いてえなと、俺が自分から言うたんや。
あっ、そうですか。
これ僕から言うたんや。
ああ、ほんなら師匠がうん、悪い事ないなと、頼りにしてまっせって書いて、米朝、84っていうて。
おおきに!うわあ、頼りにしてまっせ言うたら、横から、無理やり書かせよったってすうっと僕ら、出ていったんや。
外で無理やりって言うてたら、うちの師匠が入り口に向かってかな、いや、ほんまかもわからんなって、小さい声で言うたんやて。
それマネージャーが聞いてはって、言わはった。
僕、涙が出て、無理やりちゃうやないかいって2015/03/27(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
ありがとう米朝師匠〜ざこば・米團治 想い出がたり〜[字]今蘇る国宝の知られざる素顔…

落語家として初めて文化勲章を受章した三代目・桂米朝師匠が今月19日、この世を去った。落語界の巨星の在りし日の姿を、ざこば・桂米團治の2人が語り尽くす。

詳細情報
◇番組内容1
三代目・桂米朝師匠が今月19日この世を去った。落語界の巨星が残した功績を、弟子の桂ざこば、桂米團治が二人だけで改めて振り返る。スタジオには、生前、米朝さんが使用されていたカバンやキセルなどゆかりの品や、DVDや書籍、様々な写真が並ぶ。
◇番組内容2
そして、ABCの専属タレントだった時代もある米朝さん…ABCに残る秘蔵映像の数々を見ながら、弟子の二人しか知らないエピソードを紹介して頂き、上方落語界の未来を語って頂く。
◇出演者
桂ざこば 
桂米團治

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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