2020年までの少子化対策の指針となる大綱を、政府がまとめた。妻が出産した直後に夫の8割が休暇をとるようにするとの目標を掲げるなど、育児への男性の参加を促す内容だ。
政府が成長戦略に掲げる「女性の活躍」を後押しするうえでも欠かせない視点だろう。着実に進めていく必要がある。
大綱は04年、10年に続き今回が3回目だ。「男性の家事・育児が少ないことが、少子化の原因の一つ」とし、「働き方改革」を重点課題にあげた。6歳未満の子どもがいる男性の育児や家事の時間を1日あたり2時間半にする、といった目標も盛り込んだ。
カギを握るのは長時間労働の是正だ。残業が常態化したままでは、育児にかかわりたい男性の希望はかなわない。女性は仕事か子育てかの二者択一を迫られる。
仕事の内容や進め方を見直し、短時間でも成果が上がる働き方を工夫すれば、企業にとってもメリットがあるはずだ。職場の意識改革を進める必要がある。
子育て支援策の充実も欠かせない。政府は17年度末までに待機児童をなくす方針を掲げる。保育施設を増やすだけでなく、子どもの育ちを支える保育士をどう確保するかが重要だ。
若い世代のなかには、雇用が安定しないため結婚や出産に踏み切れない人が少なくない。就業支援や非正規労働者の処遇改善などの施策が求められる。
問題は、こうした課題が過去にも指摘されてきたのに少子化の流れは変わっていないことだ。日本の合計特殊出生率は1.43(13年)となお低い。出生率向上と女性の社会進出を両立させているフランスなどとの隔たりは大きい。
今回の大綱は「子どもへの資源配分を大胆に拡充」とうたう。「多子世帯への一層の配慮」も盛り込んだ。が、財源との兼ね合いもあってか具体策は乏しい。
本気で流れを変えるなら、高齢者に偏りがちな社会保障の配分にメスを入れ新たな財源確保策を考える必要がある。大綱にどう実効性を持たせるのか。問われているのは政権の本気度だ。
子どもを持つかどうかは個人の選択だが、持ちたいと希望してもそれを阻む壁が多くある社会は幸せな社会といえない。少子化の流れが変わらなければ、経済が勢いを失い、社会保障制度の土台も揺らぎかねない。