姫路城:「大天守 今までとは違う」問い合わせ殺到のなぜ

毎日新聞 2015年03月27日 12時36分(最終更新 03月27日 13時02分)

姫路城の一般公開で入場前に写真を撮る来場者=兵庫県姫路市で2015年3月27日午前7時23分、山崎一輝撮影
姫路城の一般公開で入場前に写真を撮る来場者=兵庫県姫路市で2015年3月27日午前7時23分、山崎一輝撮影

 27日、大天守内部の一般公開が約5年ぶりに再開された世界遺産・姫路城(兵庫県姫路市)。工事の素屋根が取り払われ、大天守が望めるようになった昨春以降、姫路市の姫路城総合管理室には「白すぎて今までのイメージとは違う」という問い合わせが100件近く寄せられている。理由は独特の工法。市は「昔の補修方法を踏襲したので直後は(色調整されず)真っ白だが、次第に黒ずんでくる」と説明している。

 姫路城の壁は板張りではなく、防火に優れた「白漆喰総塗籠造(しろしっくいそうぬりごめづくり)」。その名の通り、当初は真っ白だ。屋根も、瓦の目地に厚さ約25〜30ミリで盛られるように白漆喰が塗られるので、見る角度によって黒い瓦が隠される。屋根まで白く見えるのはこのためだ。

 白漆喰は、左官工事を担当した「イスルギ」(金沢市)が、半世紀以上前の「昭和の大修理」の記録を参考に再現したもの。消石灰や貝灰(かいばい)、麻の繊維であるスサなどを原料に手探りで配合試験を繰り返したという。漆喰の厚さは約30ミリで、総量は約100トン。継ぎ目が出ないよう各面に約10人の左官職人が一気に塗る方法で、約3カ月かけて仕上げた。

 端の部分だけを盛り上げて塗る「ひねり掛け」の技法や用途別にこてを手作りするなど、奥義を駆使。職長、中田正起さん(54)は「屋根瓦が間近で見られる大天守の最上階に上り、瓦に沿った曲線や、鬼瓦に丁寧に塗った作業を、思う存分楽しんでもらいたい」と話している。

 一方、大天守に使われた瓦は約7万5000枚。平瓦や丸瓦、鬼瓦など約50種類を全て取り外し、検査した上で約1万6000枚を新しく焼き直した。

 陣頭指揮に立った「山本瓦工業」(奈良県生駒市)の会長、山本清一さん(82)は半世紀以上前の「昭和の大修理」にも参加。「一生に2度も大工事に携われるなんて。他人から妬まれるほど運のいい人間です」と感慨深げだ。

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