【スピーカー】
TEDxKids@Chiyoda 創立者 青木 竜太 氏
【動画もぜひご覧ください!】
Five lessons in community management | Ryuta Aoki |
TEDx運営を通して学んだこと
青木竜太氏(以下、青木):皆さんこんにちは。ようこそ。本当みなさん素晴らしいですね。後ろで聞いてましたからね。ちょっと恥ずかしい気持ちで話しますけども。
今日はですね、私が今までTEDxを運営してきて学んできたことを、今日お話したいとおもいます。
まず質問があります。みなさんの中でコミュニティ運営をしたことがある方っていますか?
コミュニティ運営ってちょっと仰々しいかもしれないですけど、友達とか知人で、何か一緒に新しいことをやり始めようとか、実際に行動を始めたことがある方。どれくらいいます?
あ、結構いますね。じゃ、ちょっと今日の話、しなくてもいいかもしれないですね、もしかすると。
例えば色んな人たちが集まってくるなかで、色んな人を集めたいのに集まらないとか。何かお願いしたのに行動してくれないとか。色んな悩みありませんでした?
実は僕もそうでした。2009年まで僕はプログラマーをしてました。今はコミュニティを運営する、コミュニティデザイン、マネージメントという仕事をしています。
突然、ギークな僕がコミュニティをまとめてく、色んな人が話してくってことは、非常に大変で色んな失敗もありました。
そこから学んできたことを、今日は共有したいなとそんな風に思っています。
コミュニティって、一体何なんでしょうか。みなさんわかります? 人の繋がりなんですよね、簡単に言うと。色んな繋がりがあると思います。まずは生まれて、家、血筋で決定づけられる関係性。いわゆる血縁と呼ばれるものですね。
あと、生まれた土地、育った場所で決定づけられる関係性。地縁ですね。土地と書いて縁とかいて、地縁です。
3つめがですね、社縁といわれる、就職した企業によって決定づけられる関係性。言葉を変えると雇用関係で結ばれる、コミュニティって言ってもいいかもしれません。
知的好奇心で集まる知縁のコミュニティ
今日僕がお話したいコミュニティっていうのはですね、その話をする前にちょっと、ひとつやりたいことがあります。
みなさん立っていただいていいですか。お話したことのない、隣りの人とペアを組んでください。時間がないのでパッと。
で、その人たちと自分の好きなことを、物、何でもいいです、3つ上げてみてください。行きますよ。はい、はじめてください。
よろしいですか? じゃ、みなさん、座っていただいて。
この中で、同じようなこと、共通の好きなこと、関心事があったっていう、ペアいますか? おっ、いますね。今日お話する対象は、コミュニティというのはそういうものです。
知識の知と書いて縁とかいて知縁といいます。これを、知的好奇心で集まる、もしくは関心事で集まる、共感で集まるコミュニティのことを指します。
このコミュニティっていうのは、みんなで知恵を出し合って目的に向かって何か行動をして行ったりすることもあります。あとは、ボランティアで活動するのが多いですね。
大きな、その、社縁とか血縁とか地縁とかと違うのは、全くもって強制力が無い。そんなコミュニティをどうマネジメントしていくのか、僕は色んな失敗をして学んできたつもりです。ではその5つの学びを共有していきたいと思います。
TEDxのミーティングの面白さ
まず、1つめは「楽しいが行動原理」です。
僕は2009年TEDxTokyoという活動を始めたんですけれども、それまでコミュニティで活動したことはいっさいありませんでした。
どんなものか、全く想像できなかったんです。あるとき、打ち合わせに行ったんですね。もう僕のイメージと全く違ったんです。
最初僕のイメージしたものは、何かみんな堅いスーツ着て、座ってけんけんがくがく、真面目な話をずっとしてるのかと思ったら全然違って.
それは大きなライブ会場の2階に隠れ家みたいなカフェがあるんですけど、そこに集まって、アメリカ人フランス人、インド人、デザイナー、プログラマー、コンサルタント、マーケッター、色んな人たちが集まって、色んな話をしているんですよ。
本題は全然行かないんですね。1時間のミーティング、40分くらい関係ない話をしてるんですけど、それがすごい面白い。例えば恋愛話をしたりするんですね。
「あの人好きになったんですよ」「良いやつだよ」みたいな。あとは、海外の戦争が起きてる事情とか、色んな話をするんですね。
本当に知的なものが行われているんですね。僕はすごく興奮したんです。
This is so coolってそのとき感じたんですね。こんな世界があったなんて、僕は全然知らなかったんです。
コミュニティには楽しさが必要
TEDxの活動を通じて、ほかのコミュニティにも遊びに行くようになったんですよ。
そこで、もちろん、TEDxみたいに面白いコミュニティもあれば、まったく、暗いコミュニティもあったんですね。
その暗いコミュニティをいくつかこう見てると、共通点が見えたんですね。人が集まってないんですけど、みなさんね、顔を見るとわかるんですよ。すごいつまらなそうなんですね。僕が最初にイメージしてたものと一緒ですね。
いわゆる企業の、あの蛍光灯がサンサンとしたなかで座って、結論の出ない会議を永遠としているような感じ。あんなのが行われているわけですよ。
そのオーガナイザーと話したんですね。その人すごい悩んでて。僕のこのコミュニティのビジョンと活動はすごい共感してくれるんだ。でもなかなか人が集まらない。
そのとき僕は気づいたんですね。こういうコミュニティの場合には楽しさっていうのはすごく重要。知的な好奇心をくすぐる何かっていうのを、意図的にデザインしていかないと、人ってどんどん離れていってしまうんですね。
非常に離れやすいコミュニティだってことに注意が必要。何で、最初から新しい人、定期的に入れるとか。例えばテーマでも、皆が興味あるのを入れたりとか、そういったことを意図的にデザインすることが求められてくるなって僕は思いました。
他人のスケジュールはコントロールできない
2つめはですね「アンコントロールのデザイン」です。
先ほど言ったように様々な人が来るんですね。なので、ライフスタイルも違えば仕事の忙しさも全く違うんですよ。中には休みの日が全然違うって人も、一堂に会するってのはなかなか難しい。
そんな中ですね、当時大きな企業で経営企画室をやっていた仲間がいたんですけども、彼は会場チームというのをやっていたんですね。
彼は普段から忙しかったんですけれども、なかなか会場が決まらなくて、イベントも近づいてきて、みんなだんだん焦ってきて、緊急会議をしようってことで関係者15人くらい集めて打ち合わせすることになったんですよ。その1時間前に彼から電話がかかってきたんですね。
どうやら中期経営計画が最初から練り直さなきゃいけない。今から行けなくなってしまった。おい、みんなこれお前のために集めたんだと。
そういうとき、僕はどうしようかなって思ったんですね。ま、正直にみんなに話してみようと思ったんですよ。
みんなに話したんですね。みんな忙しい中、何とかタイミング合わせて来てくれたので、もしかして怒るかもしれないなって思ったんですけれども、全然そんなことなかったんですね。
ああ、いいよ。今話せることを決めてこうよって。そこで色んなブレストをしていきながら、結果的に登壇者がそこで決まったりしたんですよ。
僕がそこで感じたのは、予め決めて何かをしようと思っても、なかなか人が集まらないわけですよ、コミュニティって。みんな違うから、ライフスタイルが。
なので、そこで出来ることをメンバーで出し合って考えてくってこと、非常に重要だなと。いくらどんなに頑張って考えても、ほかの人のスケジュールとかコントロール出来ないんです。
何で、状況、変化に対応するように自分たちもその場その場で対応していくというのが、非常に求められてくるなと思いました。
仕事のお願いをあえてしない
3つめ。「関り合いのマッチング」です。
僕は2011年にですね、TEDxKidsっていうTEDxのフォーマットでも、子ども向けにやるものをやり始めたんですけれども、そこでも、色んなボランティアを募集して活動してました。
あるとき、友人の紹介である女性がやってきたんですね。その女性はいつも通り和気あいあいと話してるんですけど、たまに机の上に顔をのせてみんなを見つめてるんですよね。
何してるんだろうと思ってね。話かけに行くんですよ。そしたら、どんなことをしたらいいんだろうなって私悩んでるんですって言ったんですね。
どんなことをしたらいいんだろうって私なりに考えて、そこで、「こういう仕事があるよ」、「作業があるよ」って言おうと思ったんですね。
でもそこで僕、ぐっとこらえたんですよ。実はそのTEDxKids始める前に、僕って、色んな人に作業をお願いしちゃってたってことがよくあったんですね。
作業をお願いしちゃうと、それは自分の仕事を分け与えているだけでその人の仕事じゃないんですよ。
分けられた仕事っていうのは、つまり、自分で積極的にやりたいと思ってる仕事ではないので、それがたくさん来ちゃうとみんな辞めてっちゃうんですよね。
そんな僕も失敗があったので、ぐっとこらえたんです。彼女は同じようなことを、3週間くらいずっと、こうやってたんです。
リーダーの役割は「後押し」
で、とある時にもう1回話したんですね。僕、お願いすることはいつもしないんですけど、「こういう仕事があるよ」って投げかけるようにしてるんです。
そうする時に、彼女が、「私会社でいつも部屋に籠ってずっと同じような人たちと、同じようなことばかり話しているんです」と。
大学生の時は、NPOで色んな人たちと会って未来について語り合ってたんですと。そんなことを、人といっぱいコミュニケーションとりたいんですと。
僕は、参加者チームってのがありますね。さきほどパティスタントチームって言ったと思うんですけど、まさにそれなんですけども。
参加者の人たちと対話を通じてその人たちの体験をデザインして行くってことがあります。
それを話したんですね。彼女が喜んで来るかなと思ったんですけど、来なくて、「また、考えます」って。1週間後メールで、一文で「わたしやります」って書いてあったんですね。
その後の彼女の動きはものすごかったです。そのあと自分で何が必要か全部洗い出して、参加者の人たちとメールも頻繁にやり取りして。
当時僕TEDxKidsを始めたのが初めてだったので、すごく忙しくて。
何かあんまり色んなことに目が向かなかったんですけど、彼女がいたおかげでその辺は全部任せることができたんです。
もし僕があそこでこらえずに、お願いしてたらきっとこうはならなかったと思うんですよね。
だからそうやって人は、人が色を塗るスペースを用意してあげて、そこで自ら色を塗ってあげることを、後押ししてあげるってことが非常に大事だなあと、僕はそこで感じました。
リーダーシップは地位でなく行動
先ほどから何度もお話しているように、色んな人たちが来るんですね。その人たちのなかには本当にやる気があって、私リーダーやりたいです、僕リーダーやりたいですって人も出て来ます。
ただ、その中の、僕の経験上なんですけど、半分くらいはですね、リーダーになっただけで何にもしなくなったんですね。Facebookのタイトルみると、何かディレクターになってるけど、「あなた何かしてるっけ?」みたいな。
よくあるんです。そこから僕は、そういう相談がくるとき、こう言うようになったんですね。
みんなの前で活動して、自分のことを証明してくださいと。そうすればみんなが認めて、結果的にあなたがリーダーになりますと。
そういう風にちゃんと行動した人たちは本当に上手いチームを作りあげていくんですよね。
なので、ポジションを与えるんじゃなくて、その人に行動を管理させるってことが非常に重要だなと思いました。
例えばみんな、どっかのコミュニティに所属してて、何か活動してて、全く知らない人がリーダーですって言われても、何だかよくわからないじゃないですか。
その人が一生懸命活動して、誰よりもそのことに対して真剣に行動してれば、みんな人って認めてくると思うんですよね。それが僕すごく重要だなと経験から感じました。
コミュニティにも休息が必要
5つめがですね「休憩のデザイン」です。
長くやってるとですね、人の、メンバーのライフスタイルって変わってくるんですよ。結婚したり、子どもが生まれたり、もしくは転職したり、新しいプロジェクト立ち上げたり。色々忙しさが変わってくるんですね。
前のように活動が出来なくなってくるんです。でも、ずっと一緒にやってると、仲間意識みたいなのが芽生えていっちゃって、なかなか言い出せなかったりするんですよね。
しがらみみたいのにとらわれて、忙しいんだけど。誘われたから行かなきゃみたいな感じでいくと、だんだんこう、その人のアウトプットの質も悪くなってくるし、まわりにも変な影響が出てきてしまうので。
私は毎年、次の年何にしますかって時に、必ず相談するようにしてるんですね。もし、今こういう何かが始まってるのであれば、もしかしたら一回休憩したほうがいいかもしれません、というように相談するようにしています。
それで、僕はコミュニティの構成を何層かに分けてるんですね。コアチーム、企画をするチームです。
ここには本当にコミットできる人。僕はアクティビティ率と呼んでるんですけど、それが80%、90%くらい高い人たちしか入らないようにしています。
それは、入る前にみなさんに言っています。少しでも、そういう風に活動が出来なくなったなっていうのが、次の、ま、比較的緩いといいますか、そこまでコミットしなくてもいい、コミュニティに入ってもらうようにしています。
そうすることによって、その人も自分の心地いい関係性を保ちながら、例えばソーシャルメディアシェアして欲しいって言ったらシェアしてくれたりとか。
もしくは、忙しさが、仕事がだんだん終わってきて、次の年はまた活動したいって人もできたりするんですね。
そういう、その人たちによって居心地のいいコミット感をできる層ってのを、ちゃんと作ってってあげるってことが、非常に重要だなと思いました。
コミット運営で大切なのは“コミュニティの温度”
最後にですね、色んな人たちに、青木さん、コミット運営するときにどういうところを最も大切にしてますかって言われるんです。
僕はいつもこう答えてます。「コミュニティの温度」です。
どれだけその温かさがみんなに伝わっていくか。これよく、たき火に例えるんですけど、この中でたき火をやったことある方、います?
いますよね。火をつけた方はいらっしゃいます? もしくはバーベキューで炭をやった方。結構火つけるの大変じゃないですか、最初。
こう、ティッシュとか小枝みたいなの並べて、少し太めの木を置いて、火をつけて、なかなか火がつかなければ何個かやってみるみたいなのだと思うんですけど。
一回火がついてしまうと、あとはその、太い木でも投入したらどんどん燃えていくじゃないですか。僕コミュニティ運営ってそれと一緒だなと思ってるんですよ。
最初にやる気とかの火をつけるのはなかなか大変なんですけど、一度みんなに火がついちゃうと、何にもしなくていい。むしろ何もしないほうがいいんで。
たまに色んな風が吹いて、火が消えそうになる時は、ちょっと風あてを用意したりとか、もっと燃える火を入れてみたりしながら温度を調整してくということが非常に大切だなと思ってます。
コミュニティは永遠に存続しなくてもいい
一般的にみなさん、コミュニティっていうのはずっと続かなきゃいけないものだなと思っている方が多いかもしれません。
でも、目的を達成したらそこで終わってしまってもいいものなんですね。実は。例えばバーベキューの炭燃やしてて、料理が出来たら止めますよね。
燃やしてて、ずっと番してたら、ご飯たべられないじゃないですか。そこ重要なのは、みなさん一緒にご飯を食べることなんですよ。
なので、それは目的を達成したらそこで終わると。そこで無理に続けると自分自身が苦しくなるし、メンバーも苦しくなるんです。それが非常に重要な視点かなと僕は思ってます。
そしてですね、世の中は色んな課題にあふれてると思うんです。
ビジネスでは解決できないようなものもあるし、ビジネスとして捉えられることができずに、なかなか企業も参加できない活動、出来事ってあると思うんですけども。
色んな人たちが自分たちの知恵を出し合いながら、楽しみながら、参加出来る場がたくさん出来ていけば、もしかしたら、お金なんか必要ないんですよね。
そういったものがたくさん増えていくと、色んな課題が解決できていくと思いませんか。僕は出来てくると思うんですよね。そういった世界がもしかしたら、子どもに自慢できる素敵な世界になるんじゃないかなと僕は思ってるんですよね。
本日はありがとうございました。
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
↓この記事を気に入ったらログミーをフォロー!↓