しまなみ海道で結ばれた瀬戸内の町…
ここに地元の言葉で何度も来てという名前の店がある
中は大盛況。
実はここ全国の農業関係者が注目する地元の農協の直売所。
キャベツだけでもこんなに!しかも大きさも値段もいろんなのがある。
その広さはドーンと1,800平方メートル
同じ野菜がこれだけあるから客は心ゆくまで選べる
愛媛といえば柑橘王国。
一角はオレンジ色に染まっている。
特産の伊予柑はひと袋なんと150円。
安いね
こちらのお父さんは抱え込んじゃってますよ
(スタッフ)なんかたくさん買われてますね。
いろいろ。
来る価値はあるわけですね?もちろん。
幹人さんというのはこのみかんの生産者の名前。
しっかり名前を覚えリピーターになる客も多い。
産地はもちろん今治。
野菜だけでなく魚も肉も今治産。
更にはお米。
はたまた加工品や調味料にいたるまでほぼ全部今治産で揃えている
売り場の隣にある食堂には行列ができていた
肉じゃがに筑前煮。
今治産の食材で作られた素朴な家庭料理ばかり
これが子供からお年寄りまで幅広い客の心をとらえている
ここにはカフェもある
こっちにも長い列が。
その先にあったのは…
何これ?大きなイチゴがギッチギチ!
今治の旬のフルーツのおいしさを味わってもらおうと作っているケーキ。
主役はあくまでフルーツなのだ
それにしてもすごい迫力。
この季節はショーケースがイチゴ一色だ
タルトは1個3,500円するがそれでも飛ぶように売れていく
おいしそう。
買いました。
圧倒的な品揃えを打ち出した直売所は大盛況
しかしこれだけの新鮮野菜をどうやって集めているのか?
その答えは朝を見ればわかる
開店前の直売所に行列が出来ていた。
さいさいきて屋に商品を出している農家たちだ
シャッターが開くと皆さんダッシュ。
我先にと中へなだれ込んだ
実は野菜ごとに売り場は決まっているがその中ならどこに並べるかは早い者勝ち。
だから少しでもいい場所を確保しようとしていたのだ
このお父さんは春菊を作ってきた。
1袋80円
(スタッフ)じゃあすごい新鮮ですね。
(スタッフ)ちょっと安いんだ。
そうそう。
売れば売るだけ儲かる
直売所の中にはうどんの売店もあった
そこで手伝っていたこの男こそさいさいきて屋の生みの親
おはようございます。
おはようございます。
農協の職員でもある西坂。
なぜ全国に例のない巨大直売所をつくったのか。
そのカギは農協の仕組みにあった
通常の流通では農家が作った野菜を農協が集め卸売市場に出す。
しかし市場に出すには一定の条件があり出せない農家もいるのだ
例えばこちらの南條さん。
毎日3〜4ケースほどのわずかな野菜を売りに来ている
南條さんの持ってきたイチゴはたったの5パックだけ
たぶん値段的には安く付けてるんじゃないかな…。
値段もバラバラ。
実が小さいのは150円だ
このレモンはサイズが小さく規格外となるため市場に出してもらえない
そういったものを皆さん小さいのを出してると思います。
農協を通じて市場に出せるのはまとまった量を作れる専業農家がほとんどなのだ
しかし今治では高齢化や後継者不足により専業農家が激減
農協を通じて市場に出る野菜や果物はこの15年で半分以下になってしまった
そんな危機的状況にいち早く気づいたのが西坂だったのだ
ここは集荷場です。
イチゴが流れてくる。
西坂は農協に入って10年以上集荷を担当。
そして日々の仕事のなかで大きさや量を揃えられる農家の減少を肌で感じた
そこで考えたのがキュウリ1本から出せる直売所だった。
西坂は上層部に掛け合い
最初はわずか100平方メートル
規模は徐々に大きくなり今では全国最大級。
そしてさいさいきて屋は小規模農家にとってなくてはならない売り場となった
おはようございます。
いやいやほんと。
更に西坂は条件の悪い農家にも手を差し伸べる。
島の小規模農家だ
ここは直売所から40キロ離れた
この島に暮らす菅はさいさいきて屋の従業員。
朝6時に出勤するがまっすぐ直売所に向かうのかと思いきや…。
途中ある場所に立ち寄った。
そこで待っていたのは農家の男性。
収穫したばかりのトマトを1ケースだけ持ってきていた。
直売所まで運んでもらおうというのだ
他の農家の作物も置かれていた。
菅はこうした島の農家の集荷係
菅は自分が暮らす大三島を出発しあわせて3つの島で作物を集荷。
さいさいきて屋に出勤している
島を結ぶ高速道路は通行料が高い。
大三島からなら
いち農家では採算が合わないがまとめれば運べる。
そこで西坂はわざわざ島に住んでいる菅を集荷スタッフに雇いこの仕組みを作り上げた
こうして地域の隅々にまで手を伸ばし小さな農家の受け皿となったさいさいきて屋
オープンから15年で
こちらの武田さんは生っ粋の農家ではない。
もともとは高校教師で定年後に農業を始めた
さいさいきて屋に野菜を出すようになったのは10年前から。
土と生きる第2の人生。
去年はこのキャベツでいい思いもしたという
儲かりました?ええ。
出荷を終えて畑仕事に戻った武田さん
午後3時キャベツを収穫していると…
開いてみましょう。
届いたのはさいさいきて屋からの売り上げ速報メール。
POSシステムのデータを指定した時間に送ってくれるのだ
今日はよく売れてる感じで?
(2人)そうです。
売れてなかったときはどんな感じなんですか?シュンってなるんですか?はいそうです。
1軒の直売所によって息を吹き返した地域農業。
今夜は規格外の発想で地方に未来をつくり出す農産物直売所に迫る
さぁスタジオにはインパクト抜群のイチゴのタルトを持ってきていただきました。
実際こうやって見てみるとほんとにイチゴ大きくて…。
ねぇきれいですね。
ちょっとこの大きさわかります?断面ちょっと見ていただくと。
考え方としてはこれケーキではないって僕はいつも言ってるんですこれはイチゴに生クリームとタルト生地をつけて売ってるのは世間の人がたまたまイチゴタルトだとか。
イチゴをおいしく食べるためのデザートなんですよ。
そう。
食べよっかいただきます。
いただきます。
どうぞどうぞ。
そうなんですよ…でかいなこれ。
おいしいですか?イチゴにいろんな食べ方があって…。
う〜んおいしい。
早いですね。
すごい食べ応えのあるこのイチゴ!これ売れるよね。
うん。
他にもいっぱい種類あるんですもんね?季節によって。
僕思うんですけど本来デザートってそういうもんじゃないかと思うんですよ。
結局そこで採れるもんでお母さんが作ってくれる。
宮廷料理は違うけど作るわけだからそこで採れる野菜とか果物で子供たちに…聞いてる?なんとなく。
俺さっきひと口食ったときに何も聞こえなくなったよ一瞬周りの喧騒が。
いや大口開けるのがみっともないと思いながらこれはひと口で食べたいイチゴだなと…。
このスタジオで今まで食ったデザートの中でいちばんうまいね。
おいしいですか?西坂さんはJAおちいまばりの職員でいらっしゃるんですよね?なんとなく農協って既得権益の代表みたいにイメージ悪いんですよね。
僕は最近多様化してるんじゃないかと思うんですよ。
ひとくくりにして考えないほうがいいんじゃないかと思うんですけどどうですか?ご自分ではそんな変わったことやってるわけじゃないと?まったくはい。
こちらさいさいきて屋に商品を出している生産者の年間売り上げを金額別にまとめたものです。
その内訳は年間売り上げ10万円以内30万円以内という極めて規模の小さい農家が多い。
こうした人が半数を超えている
だから僕思うんですがもちろん10万円でもそれは入ってくれば嬉しいですけどお金だけじゃないっていうかまだまだ70になっても働けるし自分が丹精込めて作ったものを売るところがあってそれを買ってくれて喜んでる人がいるっていうこういう関係性のなかで農家の方がみんな満足感を感じてすごい楽しそうに明るくて。
開店前の
陳列棚に商品がほぼ並んだころあいを見計らってさいさいきて屋のスタッフが欠かさず行うことがある
商品チェックだ。
虫食いやキズモノなどをあらかじめはじいていく
キズなどがある商品はワケあり品と明記して売るよう生産者にアドバイス
それはねやっぱり
直売所の脇にはこんなガラス張りのスペースもある
あえて見えるようにして行っているのは…
農家には高いハードルを設けているのだ
その一方で西坂は農家の立場に立った店作りを進めている。
目指すは
そこに気づくきっかけは閉店間際の光景にあった
農家がやってきて売れなかった野菜をしまっていく
丹精込めた野菜だが売れなければ作った本人が持って帰る
こうした農家たちと接するなかで西坂はこの直売所が目指すべきは売り上げアップではないと気づいたのだ
そこではじめたことも。
売れ残った商品をできる範囲で買い取る
価格は農家がつけたままの定価
買い取った野菜を運び込んだ先は…
(スタッフ)これ茹でたもの?そうです茹でて刻んだものを…。
新鮮な野菜を乾燥させパウダー状に加工
これなら長期保存がきく。
使い勝手もよくカフェのケーキ作りなどにも活用している
このように直売所をあげて売れ残りを減らしているのだ
更に安定して商品が売れるよう販路も拡大
毎朝さいさいきて屋のキッチンでは食堂用のメニューに加え…
大量の料理が手作りされている
根菜がたっぷり入った
大人好みのシブい料理ばかりだ
このシブいメニューを待っていたのは…
え?ここって…。
幼稚園!?
日本一売れ残りの少ない直売所を目指す
販路拡大の一環で作っているのが野菜たっぷり!大人好みのシブ〜い料理
いったいどこへ届けるのか?ついていってみることに
シブいメニューの行き先は?
え!?幼稚園?
そう販路拡大で6年前から幼稚園の給食も作るようになったのだ
待ち受けていた子供たち
食べるものはなんなのか?自分たちで字に書いて覚える
それにしてもあのメニューで子供たちは食べてくれるのだろうか?ん?自分で煮豆をよそい糸こんにゃくも取った!
おっ食べてる食べてる
しかもみんな夢中だぞ
(スタッフ)どう?ごはん?うまい?どれがうまかった?全部うまい。
いつも給食おいしいの?うん。
嫌いなもんとかは?ない。
ないの。
キミはすごいね!
(スタッフ)おかずで好きなのある?太刀魚あとこれ。
この幼稚園では好き嫌いをなんとかなくしたいと考えさいさいきて屋の給食に行き着いた。
今では週2日導入
するとみんなが何でも食べるように。
残す子供は減ったという
かくして販路は広がり小さなファンも獲得
おいしい野菜は無敵だ!
なかなかシブい大人好みのメニューが多かったですけど子供たちおいしいおいしいって食べてましたね。
初めから好評だったんですか?ああいったメニューは。
そうですよね子供がほんと好きなものをね。
子供はすごくニュートラルですごく味覚に敏感ですからねだからおいしいものは子供だったらほんとにおいしいって言うもん。
偏見とか前もってないから。
おいしかったんだよ。
西坂さんおっしゃってることですごく印象に残ってるのがあってですね結局地域の農家と消費者と地場産業をつないでそれで地域資源を活かしながらある地域内で小さい経済圏にしてお金を回していくんだと。
これはまったくそのとおりだと思うんですけど今まで地方とか地域が活性化っていうとたいてい大企業誘致とか大学の誘致とか誘致するんですよ。
そうではなくさいさいきて屋がすごいなと思うのは農家と消費者とそれから加工品とか作るちっちゃな地場産業もネットワークありますよね。
加工品を作る。
そうですねドレッシングだったり。
それをつなぐことでそれをつないだ以上のものができていく気がするんですね。
そうですねそれも戦略のなかに少しだけ考えてやったんですけども…。
さいさいきて屋が変える地域農業。
そこにはこんなニューフェイスも
地域の小規模農家とともに躍進するさいさいきて屋がまた新たな取り組みを始めている
午後1時スタッフが店内を回り野菜や魚加工食品といった食材を集めてきた
実はこれ注文があった客に届ける宅配用。
去年の春から行っているサービスだ
運ぶのは朝島を回って野菜を集荷していたドライバーの
届け先はやっぱり島。
菅が自宅に帰る途中で宅配して回るという寸法だ。
宅配サービスを受けられるのは契約客のみ
現在およそ30人が利用している
こんにちはさいさいですが。
配達に来ました。
こんにちは。
この島にスーパーは2軒しかなく買い物は不便
結構便利ですか?仕事なんかで畑行くでしょそうしたらこんなにしてね「お買い物」が出たら私いつも「お買い物」のところここにチェックするでしょ。
注文は貸し出しているタブレット端末で。
71歳の村上さんも完璧に使いこなしている
小規模農家だけでなく地域まるごと支えるさいさいきて屋。
高齢化が進み買い物難民が増えていく今後をにらんだ取り組みだ。
地域の高齢者に配慮する一方で若者の支援にも力を注ぐ
この日訪ねたのは…
去年8月にデビューしたばかりの新米農家だ
こうした農家を定期的に回り栽培法などをアドバイスしている
珍しい野菜は武内が栽培を薦めた。
育て方をアドバイスするだけでなく高く売れる野菜の指南なども行っているのだ
経済的に成立しなければ結局若者も離れてしまう。
農業にずっと取り組んでもらえるよういち直売所が動いている
若者の就農支援ですけれども今治に若者が入ってきてるって考えていいんですか?戻ってきてるっていうことなんですか?いましたね数%。
その子供世代じゃなくてもうちょっと孫の世代がおじいちゃんおばあちゃんあんなことして700万800万も売るようになったら俺らだって…。
しかもなんかニコニコしてるし…。
そうですそうです。
そういうものがどこから発生しとるか。
でもうちの農業だったら本当に1こあたりの平均耕作がものすごい小さいんだったら僕63になったんですけど僕くらいでもできますかね?これから農業やろうと思ったら。
できると思います。
そうですか?腰かがめなくてもとれる作物ってありますかね?そういう農業もあります。
考えようかな。
ちょっと考える…。
おはようございます。
西坂の新たな取り組みは摩訶不思議。
何これ?
ふわふわ。
ほんとにふわふわ。
さいさいきて屋の裏の畑に集まったのは地元今治で農業を学ぶ高校生たち
ん?どんどん出てくる。
これは今治はタオルの町として知られるが原材料の綿は輸入。
西坂は高校生と一緒に純今治産のタオルを作ろうとしているのだ
ほんとにふわふわ。
収録を終えて村上龍はこんなことを考えた
2015/03/26(木) 22:00〜22:54
テレビ大阪1
カンブリア宮殿【客も農家も笑顔に!“巨大すぎる”直売所】[字]
年120万人が訪れる全国最大級の直売所「さいさいきて屋」。豊かな品揃えが客を圧倒し、特大イチゴ満載のタルトに行列ができる。客も農家も笑顔になる直売所の秘密とは?
詳細情報
番組内容
愛媛・今治市にある農産物直売所「さいさいきて屋」。地元の言葉で「何度も来て」という店名の通り、客を圧倒する豊かな品揃えを目当てに年120万人が訪れる。他では見たことがない特大イチゴ満載のタルトも名物だ。これほど活況の直売所が、なぜタオルと造船の町に生まれたのか。そこには高齢化する農業を逆手に取った独自の仕組みと直売所が地域社会をつなぐ核になろうという「規格外」の発想があった。
出演者
【ゲスト】さいさいグループ代表 西坂文秀【メインインタビュアー】村上龍
【サブインタビュアー】小池栄子
関連情報
【ホームページ】
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/
【公式Facebook】
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