2015年3月26日02時05分
踏切を渡ろうとした女性4人が電車にはねられ、2人が死亡、2人がけがをした東武伊勢崎線竹ノ塚駅(東京都足立区)事故から今月で10年がたった。
事故は、当時まだ手動式だった遮断機を係員が誤って上げたことが原因でおきた。ピークの1時間で57分も閉まったままの踏切での事故は、踏切対策を見直すきっかけになった。
国土交通省は全国3万超の踏切のうち、遮断時間が長いなど特に課題がある1960カ所で対策を進めた。線路の高架化などで130カ所以上の踏切をなくした。歩道を広げ、多くの歩行者が一度に渡りやすくするといった対策もとってきた。
だが、毎年100人前後が踏切で死亡する状況は変わっていない。当の竹ノ塚の踏切でも今月1日、死亡事故が起きた。
事故をゼロにするには、高架橋や地下道をつくることが最も効果的だが、多額の費用と手間がかかる。道路を管理する国や自治体、鉄道事業者の対応がなかなか進まないのが実情だ。
それでも、できることはまだある。10年前の事故で母(当時75)を亡くした加山圭子さん(59)は「一つひとつの踏切の実態に合わせた対策をとってほしい」と求める。
10年にほかの事故遺族らと「紡(つむ)ぎの会」を結成した。踏切事故が起きたと聞けば、できる限り現場を訪ね、原因を考えた。特急が時速100キロ超で通るのに、遮断機も付いていない山あいの踏切。警報機が鳴り始めると遮断機がすぐ下り、足の悪い人では渡りきれない都会の踏切。渡ってみると、感じることがたくさんあった。
たとえば子どもがよく通る踏切は優先的に遮断機をつける。お年寄りが多い地域は棒が下りきるまでの時間を延ばす。車いすの人が住む地域では段差をならし、立ち往生しても検知装置で電車に知らせるようにする。
「まず渡っている人たちの実態を調べることが大切です」
加山さんの提言には、すぐできそうなことがいくつもある。
鉄道事業者は列車の安全輸送を優先し、渡る側の安全対策は啓発が中心になりがちだ。
だが高齢化が進み、踏切を渡るお年寄りは増えている。社会環境の変化に合わせ、渡る人の目線からの安全策をもっと講じてほしい。
死亡事故が減らない現状を踏まえ、国交省は横断者数や過去の事故状況を踏切ごとにまとめた「カルテ」を新年度につくる方針だ。客観的なデータをもとに社会全体で知恵を絞り、踏切の危険度を下げていきたい。
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