ニュースリリース
(2015年3月2日)
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抗がん剤「Lenvima™」、世界で初めて米国で発売
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、米国子会社であるエーザイ・インクが、自社創製の新規抗がん剤「Lenvima™」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)を局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんの適応で、米国において2015年2月26日に新発売しましたのでお知らせします。このたびの米国での発売が本剤の世界で初めての発売となります。
「Lenvima」は、当社の筑波研究所で創製され、自社開発した新規抗がん剤です。腫瘍血管新生や腫瘍増殖に関わるVEGFR、FGFR、RET、KIT、PDGFRなどに対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な分子標的治療薬であり、特に甲状腺がんの腫瘍血管新生、腫瘍増殖に関与するVEGFR、FGFRおよびRETを同時に阻害します。また、本剤は、VEGFR2とのX線結晶構造解析から、新たな結合様式(タイプV)を有することが確認された薬剤であり、速度論的解析からは、素早く強力なキナーゼ阻害作用を示すことが確認されています1。「Lenvima」は、プラセボを対照とした臨床第III相試験(SELECT試験)において、無増悪生存期間を有意に延長し、高い奏効率を示した薬剤です。「Lenvima」投与群で認められた主な副作用は、高血圧、下痢、疲労・無力症、食欲減退、体重減少でした。米国においては、優先審査に基づき2015年2月13日に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)より承認を取得しました。
甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんの治療選択肢は限られているため、未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。2012年の甲状腺がんの新規診断患者数は米国で約52,000人と推定されています。
本剤は、現在、日本、欧州のほか、スイス、韓国、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリア、ブラジルで承認申請中であり、欧州では迅速審査品目に指定されています。引き続き、世界各国で本剤の承認申請を進め、承認取得後には当社が各国での販売を行なう予定です。また、本剤に関しては、肝細胞がんを対象としたグローバル臨床第III相試験や腎細胞がん、非小細胞肺がんなど複数のがん腫を対象にした臨床第II相試験が進行中です。
当社は、「Lenvima」を甲状腺がんの新たな治療選択肢としてお届けするとともに、引き続き本剤によるがん治療の可能性を追求し、がん患者様とそのご家族の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。
以上
<参考資料>
現在、「Lenvima」は、甲状腺がんに係る適応で、米国で承認を取得し、日本、欧州、スイス、韓国、カナダ、シンガポール、ロシア、オーストラリア、ブラジルで申請中です。また、肝細胞がん(フェーズIII)や腎細胞がん(フェーズII)、非小細胞肺がん(フェーズII)、子宮内膜がん(フェーズII)など複数のがん腫を対象にした臨床試験が進行中です。なお、レンバチニブは、日本(甲状腺がん)、米国(局所進行性または転移性甲状腺乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)、欧州(甲状腺乳頭がんおよび濾胞がん)の各当局より甲状腺がんの治療に関わる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。
本試験において、「Lenvima」投与群はプラセボ投与群に比べ、主要評価項目である無増悪生存期間 (progression free survival: PFS)を統計学的に有意に延長しました(p<0.001、「Lenvima」18.3カ月vsプラセボ3.6カ月(中央値)、ハザード比0.21(99%信頼区間 = 0.14-0.31))。また、「Lenvima」は、プラセボに対して統計学的に有意に高い奏効率(完全奏効および部分奏効の割合)を示しました(p<0.001、「Lenvima」64.8% vsプラセボ1.5%)。特に、「Lenvima」投与群では、完全奏効が1.5%(4例)確認されました(プラセボ投与群では0例)。「Lenvima」投与群において高頻度(頻度40%以上)に認められた副作用は、高血圧(67.8%)、下痢(59.4%)、疲労・無力症(59.0%)、食欲減退(50.2%)、体重減少(46.4%)、悪心(41.0%)でした。本試験は、SFJ Pharma Ltd.との提携のもと当社が実施し、本試験には欧州、米州および日本を含むアジア地域の100以上の施設が参加しました。
1 | Okamoto K, et al. Distinct Binding Mode of Multikinase Inhibitor Lenvatinib Revealed by Biochemical Characterization. ACS Med. Chem. Lett. 2015; 6, 89–94 |