2015年03月26日

東直己「眩暈」(ハルキ文庫)

畝原シリーズ。
いつもの明美さん、貴さん、冴香さん、真由さん、
そして幸恵ちゃん。
塘郷さん、玉木さん、祖辺嶋さん、横山さん、
「ザ・ボックス」のコンシェルジェさん。
なんかもう、たまに会わないと寂しいくらい。

一見かっこいい畝原さんですが
依頼される仕事は
結構地味な調査屋であり警護であり。
実際に彼が活躍するのは
自分で見つけてしまったわざわざ突っ込む事件。
今回もタクシーで帰るところ、
偶然見つけてしまった少女。
それが殺害されて。助けられなかった思いから
犯人追求に挑む畝原さんは
お節介おじさんであり、正義感の強いおっさんなのです。

でも、それらの事件の背景にあるのは
われわれ世代(50代半ば以降の)が常々臍を噛むような
思いをしている「現代」の病理だからこそ
畝原さんの行動の「真っ当さ」に
強く強く共感するのであります。
そして、それでも畝原さんは
その病理は昔からあって、昨今喧しいわけとして
ネットやらメディアやら、喧伝する媒体が
多すぎるからであって、今に始まったことではない、
ときちんと冷静に受け止められるところが
また強く強く共感する点でもあります。
責任を自分で引き受け
損を承知で真っ正直に闘いを挑む、
そこはとってもハードボイルドですし。

家族を愛する男として
情けないところも好き。
貴さんとの息子に対するような会話も好き。

ストーリーの展開はいつも無理があるのですが
常々思うのは、
ストーリーはあくまでも畝原さんの人となりを語る
ツールに過ぎず、
東さんはきっと畝原個人を描きたいから
このシリーズを続けているような気もします。
畝原自身の存在感が生きるために
現代の歪んだ事件を敢えて多用しているのでしょうね。

もう1作品畝原シリーズが残っているので
もうちょっと時間を置いてから読みます。
楽しみは、とっておきましょう。
posted by 大ねこ at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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