神奈川や奈良など10道県の知事選が26日告示され、統一地方選が始まる。安倍政権が「地方創生」を掲げるなかで、地域を活性化する具体策を競う選挙になる。
今回の知事選は福井や徳島など6県で自民と民主が現職に相乗りしたため、政党色が比較的薄い選挙になるとみられる。民主党は岡田克也代表の地元である三重ですら独自候補を擁立できなかった。有権者からみれば選択肢が少なくなるだけに残念だ。
与野党が直接激突する北海道と大分では、自民、公明の与党が現職を、民主などの野党が新人を推薦、支援している。ともに4選を目指す現職の実績が問われる。
今回選挙がある地域をみると、神奈川と福岡以外はすべて本格的な人口減少局面に入っている。「子育てに優しい街にする」などといった抽象論ではなく、人口の減少に歯止めをかける具体策を各候補はしっかりと示してほしい。
産業政策や雇用対策も重要だ。どんな政策でどれだけ雇用を増やすのか。数値目標を明示したほうが有権者にはわかりやすい。
一方、少子化対策に取り組んだとしても、人口は長い間減り続けるだろう。地方財政も厳しい。自治体の「消滅」が話題になるなかで、地域社会をどうやって維持するのかについても聞きたい。
地方分権の進展で、知事の手腕が地域の浮沈に直結する時代だ。有権者も政策の具体性やその実現性をよく吟味してほしい。
知事選のある4月12日には41の道府県議選なども実施される。地方議員は国政選挙の実動部隊になるだけに、各党は議員選に力を入れている。大阪の府議選や市議選では大阪都構想の是非が最大の争点である。5月に実施される住民投票の前哨戦になるのだろう。
知事の権限が強まった分、それを監視する議会の役割は重い。しかし、実際には予算案や条例案を追認するだけの議会が多い。政務活動費の浪費も目立つ。
大阪のように独自の争点がある地域は少ない。各候補は身近な地域の課題を示し、その対策も併せて有権者に提示すべきだ。
4年前の統一地方選では道府県議選の平均投票率が初めて50%を下回った。知事選でも過去2番目に低かった。最近の投票率の低下には危機感を覚えざるを得ない。
地域のことは地域で決める。これが地方自治の原則だ。一票を投じてこそ、地域を変えられる。