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文章読本の名著90冊から抽出した『究極の文章術』と、わたしが強力にお薦めする2冊

 上手になりたい全ての人に。

 文章術を紹介するエントリが定期的にもてはやされる。中身は似たり寄ったりなのに、なぜ? それは、文章「術」が好きだから。ほらあれだ、勉強「法」ばかりアレコレ試して計画するけど、勉強そのものはあんまり、というやつ。この本は、そんな人にピッタリで、かつトドメを刺す一冊になる。

 ご紹介の前に、わたしの方法をお伝えする。文章が上手になりたいのなら、次をひたすら繰り返すしかない(ソース俺、反論歓迎)。


1. 書け


2. 削れ


 これだけ。書き出しが決まらないとか、構成がまとまらないとか、悩みが尽きないのは分かる。でもこれしかないんだ。そして、1と2をやらないなら、文章読本を読んでも無駄。あれは、作家さんが小遣い稼ぎにらしいこと言ってるだけで、それだけでは参考にならぬ。1と2を繰り返していくことで、腑に落ちるんだよ。教則本だけで運転ができるかよ、泳げるのか? まず書け、そして削れ。

 もっとも、「文章読本を読むのが好き」という人もいる。さっき述べた、勉強「法」が好きな人だね。そういう「文章読本好き」のために、「文章読本」読本があるが、あれは他人のフンドシで出汁とった雑煮なのであって、そういう文の芸を楽しむもの。まちがってもそれで上手くなろうなどと期待しちゃいけない。

究極の文章術 『究極の文章術』の著者は、そういう芸人ではない。巷に数多にある文章読本から90冊を選び取り、そこから文章の書き方の定石を抽出する。見開き1頁で1冊を紹介する潔さは好感が持てるが、当然ながらまとめきれるわけない。バッサリ切り落とされて“ふいんき”しか残っていない。『理科系の作文技術』や『ロジカル・ライティング』が、たかだか1000字に凝縮できるはずもなく、むしろ、なぜこれをエッセンスと見なすのか? という著者の選択感覚が気になる。

 それでも、横断的に眺めることで、自分に向いているパターンを見つけることができる。一種のブックメニューとして読むのだ。なにを書くのか(発想術)、どう書くのか(構成・表現・説得術)まで、じつに様々なノウハウが、これでもかと集められている。谷崎潤一郎や山田ズーニーといった安心して読めるものから、素性不明のハウツー本まで、じつに沢山の文章「術」が要約されている。

 そのため、真逆の主張が面白い。梅棹忠夫が「KJ法で構成を考えよ」と語る一方、中谷彰宏は「構成なんて考えるな」と言い切る。「文章を貫く問い(=論点)を定めよ」という山田ズーニーと、「ともかく書き始めよ」という渡辺昇一。「冒頭にセリフをもってこい」というライターと「転より始めよ」というエッセイスト。「考えるスピードで書け」 vs 「誰に何を書くか絞り上げて燃料にしろ」など、どっちの言い分も、もっともらしい。ノウハウ化できる文章術は、ほぼ網羅されているから、ここからツマミ食いするといいし、そこから元の一冊に手を伸ばすのもありだ。

 だが、これ読んでやった気になっても、自分の文章は上達していない。もちろん、書いていないから。じゃぁどうする? そうだ、まず書け、そして削れ。

 その上で、わたしのオススメをご紹介。『理科系の作文技術』は基本として、「読めば読むほど上達する」チート的な2冊だ。


3. マネしろ


 上手な人の「型」というものがある。このストックが沢山あって、適切なタイミングに適度に使える人ほど、文章上手という。要するに、文章を書く上でのデザインパターンだ。

 もちろん、どこにもないオリジナルを編み出す型破りもいる。だが、守破離の「守」さえ守れない人は、"形無し"と呼ぶのがふさわしい。まずは「型」をひたすらマネしよう。一般に、沢山の文章を読んでそこから抽出するのが普通だが、もっと良いのがある。

 一冊なら、佐藤信夫『レトリック感覚』になる。レトリックとは、ずばり説得する技術であり、「型」のツールボックスだ。『究極の文章術』で紹介されている、あらゆるテクニカルな「型」の一切合財が入っている。『レトリック感覚』は、その使い方、勘所をレクチャーしてくれる。読めば読むほど上達し、困ったら辞書的に引くチートシートみたいに使うといい。

 もう一つは、野矢茂樹『論理トレーニング101題』だ。ひたすら実践あるのみ。どんなに解説書を読んでも、実技なしでは鍛えられない。論理を扱う様々な「型」が、問題→解答→解説形式で展開される。一問一問、順番に解いていくことで、着実に身につけることができる。出題レベルが高すぎるという苦情があるが、一度で諦めんな、繰り返すんだよ! と声を励ましたい。どうしてもという場合は、パターンを覚えてしまってもいい、「型」なんだから。

 カモリーマン向けのありがちな論理本100冊よりも、この一冊を繰り返すべし。論理の骨法を捕まえる方法を身につけたなら、今度は逆に、把握しやすい「型」をどう展開すればいいかが分かる。文章力とは論理力、これは感性ではなく、訓練で身につく。

論理トレーニング101題

 大事なことなのでもう一度。


1. 書け


2. 削れ


3. マネしろ

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