毎日ジワジワと損失が増えていった時期は焦ったし、選んだストラテジーが効果を発揮すれば、万歳したい衝動に...続きを読む
PR 2015/03/23
<動画のひとつを開く。画面はホテルの一室でカメラをセッティングする黒いTシャツの男を映し出す。長髪の男は角度を確認すると、小走りに部屋を出る。
その一分後に入ってきたのが人気メンバーのA子だ。A子は当時未成年。上は黒のTシャツ、下は白いジャージのパンツを穿いている。 その後ろから男も一緒に入室。(中略)男が退出すると、痩せてすらりとした体型のA子は、ジャージのパンツ、ストッキング、パンツを順に手早く降ろす。露になる臀部。A子は、あらかじめ用意されていた白いビキニの水着のパンツを穿き、次に上半身の着替えにかかる。(中略)
そうして緑や黒、ピンクなど計五種類の水着の試着を終えたのだった>
『週刊文春』の巻頭スクープは衝撃的である。AKB48のメンバーが所属している「オフィス48」の元取締役だった野寺隆志氏(38)が、こともあろうにAKB48の女の子たちを「盗撮」していたというのだ。
彼は2010年に「一身上の都合」で退社しているが、13年に小学生の女子児童に対するわいせつ行為で逮捕され、実刑判決が出ている。その取り調べの際に、ライターやボールペン状のカメラで盗撮をしていたと白状しているのだが、なぜかその件では立件されていない。
その膨大な盗撮動画や写真を週刊文春が手に入れたのである。動画は15時間75本もあるそうだ。冒頭に紹介したシーンはその一部である。
野寺というのはどんな人間だったのか。<「野寺さんは幹部の中でも現場に近い人。マネジャーのリーダーみたいな立場でした。同じくオフィス48の取締役で、劇場支配人でもあった戸賀崎(智信)さんの次に発言力があった。でも、野寺さんは権力をひけらかすことなく、現場スタッフに人気でした。お酒が好きで、後輩を飲みに連れて行ってくれたり、上に内緒で深夜にAKB48劇場を開放して、クラブイベントみたいな飲み会を開いてくれたこともありました」(元AKB関係者)>
AKB48のメンバーも気さくな彼に気を許していたという。その人間が自分の邪悪な欲望を満たすために盗撮を繰り返していたというのだから、彼女たちにとっても衝撃的だろう。
週刊文春によれば、<さらに悪質なのは、全ファイルの三分の一以上に上るトイレ盗撮だ。他の動画と同様、まずカメラをセットする野寺が映り、その後にメンバーが次から次へと映り込み、用を足す。その場面だけを切り取り、集めた上で、メンバーの名前を冠したファイルも存在した>というのだから、怒りと恥ずかしさで卒倒する女の子もいるだろう。
野寺は今年の初めに出所している。彼をインタビューしているが、ほとんど喋らずに逃げてしまったそうだが、それはそうだろう。週刊文春はある運営幹部に証拠の一部を提示した上で、今後の対応について訊ねたそうだが、運営会社AKSからはこんな回答しかなかったそうだ。「今の段階で事実関係を確認できていないため、コメントは差し控えさせて頂きます」
05年のAKB48の旗揚げ公演から今年で10年になる。<記念すべき節目の年に発覚した、この『重大事件』を無かったことには出来ない。野寺本人の罪は言うまでもないが、いま問われているのは、少女を預かる運営側の危機対処と管理責任なのである>(週刊文春)
現・元メンバーやその親たちに、運営会社や秋元康たちは何というつもりなのだろう。彼らはこの事実を警察から知らされていた可能性は十分にあるはずだ。また、この前代未聞の盗撮動画がネットに流れないという保証はない。そうなればAKB商法が根底から崩れることは間違いない。こうしたものが発覚するというのもAKB人気の終わりの始まりであろう。
3月18日(2015年)にアフリカ大陸の北端に位置するチュニジアの首都・チュニスで発生したテロ事件で死傷者は約70人、邦人3人も死亡している。『週刊ポスト』は、安倍首相はイスラム国の人質事件のあと、「彼らに罪を償わせるために人道支援する」「日本人には指一本触れさせない」といったのに、それを果たせなかったではないかと責めている。
安倍首相にいささか酷な気はするが、イスラム国がいっているように、日本人はどこにいても過激派の標的になる時代が来たことは間違いない。どうやって安倍首相は日本人の命を守るつもりなのか。集団的自衛権を行使すれば、ますます日本人の安全は脅かされることに彼は気がついていないのだろう。
安倍首相は3月20日の国会質疑で、自衛隊を「我が軍」と答弁した。麻生太郎副総理の「未曾有(みぞゆう)」などとは比べものにならない重大発言だが、安倍首相ご用達の大新聞は、情けないことに及び腰の批判しかしていない。
自衛隊を「我が軍」と思っている安倍首相には、『週刊新潮』の以下の記事はショックだったであろう。休暇を利用して母親との観光旅行中にチュニジアでテロリストたちによって負傷した被害者のひとりが、ただの民間人ではなかったからだ。その人は結城法子氏(35)。銃撃された彼女は左耳などにけがを負い、現地の病院に搬送されて全身麻酔で手術を受ける事態となった。
その彼女の手記がいくつかの新聞で掲載され、そこには彼女が自衛隊中央病院に勤める陸上自衛隊の3等陸佐であることは書かれている。週刊新潮は彼女が負傷したことやその大きなショックがあることには配慮しながら、3佐といえば旧日本軍の少佐に相当する要職なのに、その手記には「臆病と感傷」しかないと難じている。
彼女は自衛隊員の健康管理などにあたる医官で、<「約200人の部隊を指揮するほどの職責を担っている。(中略)有事の際は海外に派遣される可能性もあります」(防衛省担当記者)
陸上幕僚監部広報室も「医官といえども陸上自衛官ですから、自衛隊員としての最低限の訓練は受けております」と認めているように、やはり結城氏は立派な我が国の「防人」の1人なのである>(週刊新潮)
そういう立場の人にしては、手記に立場を意識していない言葉が並んでいるのは如何なものかというのである。たとえばこういう箇所だ。<「外でも、救急室でも、多くの人がいて写真やビデオを向けられ、とても不快でした」「私は一日中泣いていたせいで目が腫れ上がって開けることができず・・・」>
週刊新潮はこう書いている。<ここには「被害者としての思い」が前面に押し出されているものの、他方で「何か」が決定的に欠けているとの違和感が拭い去れない。それは手記が徹頭徹尾「私」に終始しており、陸自3佐という「公の立場での思い」が見事なまでにすっぽり抜けている点に起因する>
また、彼女を取材しようとして大使館の人間とやり取りしている朝日新聞の記者の声を、<日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでした>と書いているところについても、週刊新潮はこう書いている(朝日新聞の記者は彼女の手記の後ろに、そのときのことについて書いている)。<手法の是非はともかく、メディアが被害者の生の声を聞こうとするのはごく自然な行為であり、彼女が矛先を向けるべきは朝日ではなく、テロリストであるはずだ。しかしながら、手記にはテロの犯人を非難する記述は一行たりとも見当たらない・・・>
そんな彼女に<国防の前線に立つ自衛官の自覚を感じるのが難しい>といい、それを象徴するのが<「結城3佐は、海外渡航承認申請書を提出しておりませんでした」(陸幕広報室)という点だ>と指摘する。
自衛官には私的休暇であっても日本を離れる際には、事前に届け出を行わなければならない義務が課せられているそうだ。彼女は無断渡航だったのだ。<「病院へ着くと、パスポートなどが入ったバックはとられて、携帯もなくなってしまいました」「日本大使館の方がいらして、日本の家族の連絡先を聞かれましたが、携帯がなかったので実家の固定電話しか分からず、なかなか連絡がつかなかったようです」>
こうした記述にも元陸上自衛隊北部方面総監の大越兼行氏は愕然とするという。<「家族との連絡よりも何よりも、真っ先に防衛省に連絡を入れて、自分が置かれた状況を報告し、何をすべきか指示を仰ぐことが自衛官には求められるはずです。それもせずに、手記を公表する・・・。彼女の一件が、自衛隊に対する国民の期待を裏切ることにつながりはしないかと危惧しています」>
彼女の場合、重傷を負ったわけだから、ここまでいうのは少し酷な気が私にはするが、我が軍隊だと考えている安倍首相はどう感じているのだろう。新聞記者はそのことについて質問するべきである。
週刊文春は「ゴールデンウィーク旅行 危険な観光地リスト」という特集の中で、こうしたテロに遭う危険性のある観光地をあげている。北アフリカに近いイタリア。今年に入ってベルギーやデンマークでイスラム過激派によるテロ事件が起きている。カナダでも銃乱射事件が起きた。当然のことながらアメリカは最も危ない。東南アジアでもインドネシアやタイの南部、さらにフィリピン南部のスールー諸島などなど。
結局、どこへ行っても危険は伴うということだ。比較的安全なのは国内旅行だけだというのでは、寂しい連休になりそうである。
元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。
【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか