事例紹介
屋内でも快適なナビを! 東京駅の実証実験から見えた高精度測位の未来
(2015/3/26 06:00)
国土交通省国土政策局が「高精度測位社会実現に向けた実証実験」に関する報告会を2月20日に開催した。
同実証実験では複数の測位技術を検証し、その効果や課題を洗い出すことで、将来的な「屋内外でのシームレスな測位環境」をめざしたもの。この環境が実現すれば、さまざまな位置情報サービスを創出でき、特に東京五輪を2020年に控えた日本では、訪日外国人向けに分かりやすいナビゲーションが可能になると期待される。
ただ、現状では「屋内測位環境が普及していない」「屋内の電子地図がない」「ナビのために必要な地物(店舗・看板・トイレなど)の電子情報がない」などが課題という。また、屋内測位技術も多数開発され、それぞれ一長一短あるため、どんなときにどの方式が最適なのかを明らかにする必要もある。
そこで国土交通省が事務局となり、東京駅周辺を舞台に行われたのが「高精度測位社会実現に向けた実証実験」だ。15協力団体が研究・開発する技術で実際に屋内外測位を実践し、その精度や課題などを検証した。実施時期は2015年1月末。
その結果報告会の内容から「高精度測位の現状」をお伝えしたい。見えてきた歩行者ナビの未来の姿とは――?
実証実験の方法
昨今、測位技術としてさまざまなものが登場している。GPS以外に、Beacon(BLE)、Wi-Fi、地磁気、PDR、非可聴音などだ。実証実験は、事務局がエリア内に設置した70個のBeacon、既設のWi-Fiアクセスポイント、および各社が用意した機器を利用して行われた。
主な位置の推定方式は「近接性方式(フィンガープリント方式)」「三点測位方式」「環境分析方式」の3点。実験者は測位アプリをインストールしたスマホを片手に通路を実際に歩くことで、測位精度を検証した。まずはBeacon、地磁気、PDRの実験内容から、それぞれの測位技術の現状に触れたい。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 近接性方式 | 最も近い各種ビーコンのIDにひも付けられた位置を現在位置とする |
| 三点測位方式 | 位置が自明な各種ビーコンからの距離を電波強度から推定し、三点測位を行って現在位置を推定する |
| 環境分析方式 | あらかじめ調査した、場所ごとの電波環境や地磁気環境に最も似た場所を現在位置とする |
Beaconによる測位の現状
凸版印刷とリベラのグループはBeaconによる測位実験を行った。場所は東京駅地下の「丸の内ビルディング(以下、丸ビル)前」と「新丸ビル前」。丸ビル前にはBeaconが高密度に、新丸ビル前には低密度に設置されており、電波強度を基に三点測位を実施した。
結果として、Wi-Fi測位よりも反応速度が速く、多くの場所で誤差3〜5m以内で測位できることを実証。しかし、Beaconが少ない新丸ビル前は精度が安定し、Beaconが多い丸ビル前は不安定になる不思議な現象が見られた。Beaconが多い方が安定しそうなものだが――?
新丸ビル前の精度が安定したのは通路が狭かったことが理由。一方、丸ビル前は通路が広く、Beaconの設置数が多い柱に座標が吸い寄せられ、結果座標がふらふらとした軌道となって、8.3mの最大誤差を生んでしまった。このことから「三点測位の特性上、1地点にBeaconが多すぎると逆に精度が悪くなる場合がある」ことが分かった。
その一方で国際航業の実験では、Beaconが通路の片側に偏っていると測位結果も偏り、偏りを減らすようにBeaconを追加すると測位精度が向上することを確認。Before/Afterで平均誤差は4.22mから2.36mに改善された。
これらが示唆することは、Beaconは「通路の広さ」も考慮しながら、「数・配置」に気を配る必要があるということだ。
もう一つの課題は「メンテナンス性」である。電池式のBeacon端末は1〜2年ほどで電池が切れ、そのタイミングも個体によって異なる。大量設置時はメンテナンスに手間がかかることが予想される。
地磁気による測位の現状
ジャパンシステムと日本マイセロのチームは地磁気による測位実験を行った。その結果に触れる前に、地磁気による測位とはどんなものなのか。
地磁気による測位では、あらかじめ現場の地磁気データを計測してデータベース化しておく。これは場所ごとの環境情報と見なすことができる。実際に測位に利用する際は、歩行者のスマホで計測される現場とデータベースそれぞれの地磁気データを比べることで、最も環境情報が似ている箇所を現在位置とする。
検証は、丸ビル地下(地下街)、丸ビル1階(吹き抜け)、丸ビル地下前広場など(地下広場)、東京メトロ付近(鉄道付近)、丸の内仲通り(屋外)と広範囲にわたって行われた。
結果、屋内での平均誤差は約3〜5mに収まる上々な結果に。一方でエスカレーター・エレベーター・鉄道付近などでは最大誤差が40mに上った。「電気・鉄の影響を受けたのが理由」という。なお、屋外は平均誤差が9.3m、最大誤差が82m。こちらも車などの影響を受けて不安定な結果となった。
地磁気による測位は、信号を発する装置などが不要なのがメリットだが、一方で磁場が乱れている場所では利用が困難という弱点があるようだ。また、あらかじめ地磁気データを計測する手間もある。
計測はスマホを持って実際にその場を歩くのだが、広場などではある程度細かく格子状に歩かなければならないし、計測時のスマホの向き・角度も一定にした方が望ましい。向き・傾きが異なると、得られる地磁気データも異なってしまうからだ。実際の測位に利用する際、スマホの向き・角度が計測時と異なっている場合は、端末のセンサーを用いて補正をかけるのだが、「そのアルゴリズムにもまだ改良の余地がある」(ジャパンシステム)という。
PDRによる測位の現状
国際航業と慶應義塾大学のチームはPDRによる測位を検証した。PDRは「歩行者自律航法」と呼ばれる測位技術で、スマホの加速度センサーなどのデータを基に「どの方向にどれだけ移動したか」を推定するものだ。
実験ではスマホを持った歩行者が丸の内仲通りから丸ビルに入り、スマホ画面上の測位結果もその通りになっているかを検証した。結果、チェックインの成功率は4割。残りの6割は、丸ビルではなく隣の「丸の内カフェ」などに入店したことになってしまっていた。
PDRは最初の位置からどれだけ歩いたかという相対的な位置を示すものなので、初期位置を定義する必要がある。実験ではGPSで初期位置を計測したが、「その精度がそもそも悪かったのが原因」という。PDRを有効に活用するには、初期位置としばらく歩くとズレてくる現在位置をいかに設定・補正するかが重要となる。
さて、測位技術の現状をサマリーでお伝えしたが、もしかしたら「課題が多い」という印象を覚えたかもしれない。実はここまではあえて単体の技術ごとの実験結果のみに触れてきた。が、実際は複数の測位技術を組み合わせるのが現実的だと分かってきている。
次ページでは、より高精度な結果が得られた技術複合的な実験内容を紹介する。
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