東洋ゴム免震不正:機械で持ち上げ交換 技術的に未知数
毎日新聞 2015年03月25日 23時12分(最終更新 03月25日 23時26分)
東洋ゴムは25日、55棟に使われたすべての免震装置について、原則交換する方針を決めた。装置の交換はどのように行われるのか。
ゴムを使った免震装置は30年ほど前から設置が始まり、1995年の阪神大震災を機に普及が進んだ。地面と建物の間に装置を入れ、建物を空中に浮かせたような状態にすることで、揺れを伝わりにくくする。建物を頑丈にして揺れに耐える「耐震」と比べ、建物の損傷は少なく、家具も倒れにくい。日本免震構造協会によると、現在は全国の高層ビルやマンションなど約3300棟で使用されているという。
今回問題となっているのは、揺れを早く止める機能も持つ「高減衰ゴム」で、約700棟で使用されている。東洋ゴムのシェアは、ブリヂストンの約8割に次ぐ約2割だった。
免震装置はゴムの劣化を想定し、交換できるよう上下をボルトで固定する方式で取り付けられている。ボルトを外して建物をジャッキで数ミリ持ち上げれば取り換えが可能だ。建物を建て替える必要はないという。
しかし、ゴムの耐用年数は約60年。「今までに交換されたケースはほとんどないはず」(日本免震構造協会)といい、技術的に未知な部分が残る。特殊な製品のため在庫はなく、交換には工事期間と合わせると、半年以上かかる見通しだ。東洋ゴムは「1年以内を目指す」としている。通常は居住したまま交換できるが、1棟に少数の装置しか付いていない小さなマンションなどでは、建物のバランスを考慮して、一度にすべてを交換することも考えられる。その場合、入居者が一時的に退去を求められる可能性もあるという。
東洋ゴムが負担する費用もかさむ。高減衰ゴムの価格は一般的な大きさで100万〜200万円、大型建築物に使われるものだと600万〜700万円になる。交換にかかる費用は1基100万円ほど。2052基すべてを交換すれば、単純計算で数十億円の出費だ。これに工期の遅れによる補償費などを加えると100億円以上となる可能性もあるという。