ドイツ旅客機墜落前に「パイロット1名が操縦席から締め出されていた」
乗員乗客150名が犠牲になった火曜のジャーマンウィングス墜落事故で捜査当局が現場から回収したボイスレコーダーを調べてみたところ、通常通りの離陸後、パイロットのひとりがコックピットから出たきり閉めだされ、中に戻れなくなっていたことが判明しました。
匿名の調査官がNYタイムズに明らかにしたもの。
それによると、退席したパイロットは最初は穏やかにドアをノックしていたのですが、だんだん強く言い張るようになり、しまいには「ドアを蹴破ろうとしている音が聞こえた」(調査官)のだとか…。
なぜほかの操縦士たちがドアを開けて中に入れなかったのか、なぜ管制塔に連絡1本入れなかったのかは不明。
たぶん空中爆発ではない
書いてる途中で新事実が入ったので冒頭に持ってきましたが、もう一度、事故を整理しておきましょう。
火曜バルセロナを発ったジャーマンウィングスのエアバスA320は、離陸から30分後の10:30amに管制塔と音信が途絶え、10:48amに乗客乗員150名を乗せたままアルプス山中に墜ちました。墜落までの18分間、機長からはSOSすらありませんでした。
ジャーマンウィングス社CEOは24日の記者会見で「旅客機は上空38,000フィート(11,600m)の巡航高度に達してわずか1分で高度を下げ始めた」と言っています。
仏航空事故調査局(BEA)レミ・ジュティ長官によると、レーダーが途絶えたのは高度6,175フィート(1,882m)付近。墜落現場は高度約1,500mですから、空中爆発ではなく最後の最後まで飛んでいたものと見られています。ベルナール・カズヌーヴ仏内務大臣も、「テロの可能性を除外したわけではないが、残骸散乱が広い範囲に及ぶことから空中爆発の線は考えにくい。山肌に衝突したのだろう」と本日の会見で語っていました。
制御不能で真っ逆さま…でもない
高度を下げる時には管制塔の許可が要るのですが、それはなく、管制塔からいくら話しかけても返答はありませんでした。
と言っても、当初報じられたような「8分で真っ逆さま」ではなく、徐々に高度を下げながら18分飛んでいた…つまり、オートパイロットか手動かは不明ですが、ある程度の制御は効いていたことがわかっています。
こうしたことから航空専門家の間からは、「機内減圧では、酸素マスクが要らない高度10,000フィート(3,000m)まで下げるのが緊急対応だ。それをやっている途中で低酸素症で意識を失ってしまったのではないか」との見方も出ていました。酸素欠乏というと、操縦士が酸欠で意識不明に陥ったまま飛行を続け、最後は燃料切れでアテネ近郊の山中に墜落した2005年のヘリオス航空522便墜落事故が記憶に新しいところ。
仮に意識不明でないとするならば、操縦士たちは意図的に沈黙を守ったまま飛行を続けたことになります。フランスの捜査当局の人は匿名を条件に、「そちらの可能性も除外できない」とNYタイムズに語っています。まだ限られた情報しかないのでなんとも言えないが、と念押しした上で…
「何かが引っかかる」、「天気で見晴らしも完璧なのに、ノーマルな速度で交信ひとつしないまま高度を下げていくなんて、自分には奇妙に思えて仕方ない」
と言ってました。現場から回収したボイスレコーダーには使える音声も残っています。フライトレコーダーは記憶媒体が行方不明。そちらも見つかれば、より詳しい全容がわかると思います。NYタイムズが掴んだ新情報が本当なら、ちょっと普通の事故ではなさそうですね…。
バルセロナ発デュッセルドルフ行き旅客機にはドイツ、スペインの方をはじめ、計17ヶ国の人が乗っていました。R.I.P.
source: NYT -1, 2, New Scientist
(satomi)