通巻233号「広場」が失われた2015年のJリーグを想う
霜越隼人(元J’s GOALプロデューサー)インタビュー<前篇>
(C)Tete_Utsunomiya
■目次
- ●パリ、福島、そしてロシアへ
ハリルホジッチ監督の通訳、樋渡群さんに期待すること - ●「広場」が失われた2015年のJリーグを想う
霜越隼人(元J’s GOALプロデューサー)インタビュー<前篇> - ●篠原美也子の月イチ雑食観戦記
第18回「春の歌めぐり来る頃」 - ●神戸開幕戦に見る「動員数に浮かれるなかれ」
徹マガ編集長代理コラム(金子雄太郎)
「広場」が失われた2015年のJリーグを想う
霜越隼人(元J’s GOALプロデューサー)インタビュー<前篇>
2015年のJリーグが開幕した。第1節の平均入場数はJ1が2万1539人(昨年が1万9215人)、J2が8798人(同7901人)と、いずれも前年の開幕戦よりも数字が伸びたのが嬉しい(もっとも、今季からリーグスポンサーとなった明治安田生命の社員とその家族が、かなり動員されたようだが)。私はカミサンと豊田スタジアムで名古屋グランパス対松本山雅を観戦し、とても楽しい時を過ごすことができた。
(参照)
とはいえ、今季のJリーグは何かが違う。それは、今季からJ1が2ステージ制になるからではない(その効果を実感するのはもう少し後になる)。昨シーズンとの一番の違い。それは、試合前や試合後に必ずチェックしていたJ’s GOALが、Jリーグ公式サイトと統合されたことで、もう見られないことだ。かつてのJ’s GOALのURLにアクセスすると、自動的にこちらに飛ばされてしまう。そしてJ’s GOALは、もはやアーカイブさえも残されていない。
2月1日に統合された新しいJリーグ公式サイトについては、Jクラブのサポーターはもちろん、ジャーナリストの間でもすこぶる評判が良いとは言えない。その点については、Jリーグのトップである村井満チェアマンも認めている。統合されたサイトは、(スタートしたばかりというエクスキューズはあるにせよ)ユーザビリティもよろしくなく、サポーターが求める情報を満足に提供できているとは言い難い。だが、それ以上にサポーターが不満に思っているのは、自分たちの「広場」が失われてしまったことなのだと思う。
(参照)
J’s GOALは、試合前や試合後の情報収集において、確かに便利なサイトであった。だがそれ以上に重要だったのは、サポートクラブに関係なく、皆が集える「広場」としての機能を持ちあわせていたことだと思う。われわれサッカーファンの遊び場が、気がついたら立ち入り禁止になっていて、でっかいビルが建設されている。そして「広場」の思い出は、根こそぎ無くなってしまった――状況としては、そんな感じではないだろうか。
今号と次号の2回にわたってご登場いただく霜越隼人さんは、株式会社スポーツエンターテイメントアソシエイツ(SEA)の代表取締役社長であり、03年からスタートしたJ’s GOALのプロデューサーでもあった。霜越さんとは、個人的にも15年来のお付き合いがあり、それだけにJ’s GOAL閉鎖後の動向が非常に気になっていた。今回ようやくコンタクトがとれ、これまで手塩にかけて育ててきたJ’s GOALが閉鎖されて以降のことを、じっくり聞かせていただくことができた。
もっとも、現時点で霜越さんが発言できることは、立場的にも非常に限られている。その点をご理解いただいた上で、このインタビュー記事を行間まで読んでいただければ幸いである。難しいタイミングであったにもかかわらず、われわれの取材にご協力いただいた霜越さんには、この場を借りてあらためて御礼申し上げたい。(取材日:2015年2月17日@東京)
(C)Tete_Utsunomiya
■「みんなで交流できる場」だったJ’s GOAL
――まずは霜越さんの近況から聞かせてください。1月31日にJ’s GOALが終了して以降、全国あちこちを行脚していらしたようですが、全国のJクラブを回っていたんでしょうか?
霜越 行脚とか大げさなものではないです(笑)。今のところ16クラブくらいですかね。こちらからお話を伺いに行ったり、あるいは連絡を取り合ったりしていたりしていました。
――それはJ1、J2、J3関係なく?
霜越 えっと、J3は行っていないですね。というのも私、J3はあまり接点がなかったので、よくは知らないんですよ。もちろん町田とか鳥取とか、J2にいたクラブはよく知っているんですけど。
――まあ、そうでしょうね。その16のクラブとは、どういったお話をされているんでしょうか? 差し支えない範囲で教えていただけますか?
霜越 われわれとしては、次のビジョンに向かわなきゃいけないわけですよ。Jリーグは、ファン公認サイトとJリーグ公式サイトを一本化するという選択をしました。けれど、われわれとしてはJ’s GOALが持っていた役割を無くすわけにはいかない。やはりコアなサポーターからファン層、Jリーグのファンの人たちに対して、何らかの情報提供や情報交流を仕掛けなければいけない。そもそも各クラブも、実際のところ、こんな形になるとは思ってなかったんでしょうけどね。
――クラブ側も、やはり寝耳に水だったんでしょうか?
霜越 話を聞いていると、そうだと思いますね。それもあるので、各クラブから「話をしませんか?」と連絡をいただきましたし、こちら側も「逆にお話をしたいんですけど」っていうのは結構ありました。そうした話し合いの中で、われわれとしてはクラブが連携して、もう一度サポーターが交流する場を作らなきゃ、という話は出てきました。
――つまり、一本化されたJリーグの公式サイトとは別に、各クラブの連係によるサイトを作るということですか?
(続きはメルマガで)