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【政治】

一票の不平等訴訟で福岡高裁 昨年衆院選「違憲」

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 「一票の格差」が最大二・一三倍だった昨年十二月の衆院選は、有権者の投票価値が不平等で違憲だとして、二つの弁護士グループが全国で選挙やり直し(無効)を求めた訴訟は二十五日、福岡高裁(高野裕裁判長)が初の「違憲」判断を示した。選挙無効の請求は退けた。訴訟は計十七件あり、二十五日までに出された十一判決は「違憲状態」七件、「合憲」三件、「違憲」一件。国会の是正に向けた取り組みをどう評価するかが争点で、司法判断が分かれた。 

 二十五日は六高裁・支部で判決があり、福岡高裁以外では、東京高裁と名古屋高裁金沢支部、広島高裁松江支部が「違憲状態」で、広島、高松両高裁が「合憲」と判断した。

 衆院選の不平等訴訟では、最高裁が二〇〇九年選挙(最大格差二・三〇倍)、一二年選挙(二・四三倍)をいずれも「違憲状態」と判断。各都道府県に一議席を無条件に割り振る「一人別枠方式」が要因として見直しを求めた。

 国会は小選挙区の定数を「〇増五減」した区割り改定を一三年に実施。昨年の衆院選の格差はやや減少したが、〇増五減の対象以外の都道府県では一人別枠方式に基づく定数配分が残り、格差二倍以上の選挙区は全国十三カ所に上った。

 「違憲」と踏み込んだ福岡高裁判決は「一人別枠方式の構造的な問題が解決されておらず、憲法が求める投票価値の平等に反する」と指摘。選挙制度調査会で議論が継続していることなどを考慮しても「是正は不十分で、憲法が要求する合理的期間を過ぎていると言わざるを得ない」とした。

 「違憲状態」とした七高裁・支部の判決も「投票価値の平等に反する状態」としたが、国会の是正に向けた努力を踏まえて「合理的期間内に是正されなかったとはいえない」などと判断した。

 一方、「合憲」とした判決では〇増五減の区割り改定を「合理的だ」などと評価し、国会の取り組みは妥当と判断した。

 弁護士グループは全国十四の高裁・高裁支部に全二百九十五選挙区の選挙無効を求めた計十七件の訴訟を起こした。一審判決は四月中に出そろい、年内にも最高裁大法廷が統一判断を示す見通し。

 公選法は国政選挙の効力に関する訴訟の一審を高裁と規定している。

◆是正鈍い国会 続く警鐘

 一九六二年に日本で初めて、一票の価値の平等を求める訴訟が起こされてから半世紀余。衆院選をめぐっては一九七六年と八五年の二回、最高裁が「違憲」判断を示し、「違憲状態」も四回出したが、判決を受けた国会の動きは鈍く、小手先の選挙制度改革を繰り返してきた。

 昨年十二月の衆院選をめぐる訴訟では二十五日現在、各高裁で「違憲」「違憲状態」「合憲」と判断が分かれている。その前の二〇一二年衆院選をめぐる訴訟の高裁判決で「合憲」判断がゼロだったことと比べれば、高裁の判断が合憲寄りにシフトしたとも受け取れる。

 しかし二十五日の東京高裁判決が、衆院が是正の目標時期とする一六年十二月を是正期限とし「確実に期間内に立法措置が取られるべきだ」と指摘したように、司法が国会に警鐘を鳴らしている点は変わりない。

 昨年の衆院選をめぐる高裁判決が四月中に出そろうのを受け、最高裁大法廷は年内にも統一判断を示す見通し。国会は最高裁の判断を待つのではなく、有権者の投票価値の平等の問題に真剣に向き合い、抜本的な改革に早急に乗り出すべきだ。 (加藤文)

 

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