きょう、全国10の道県知事選が告示され、統一地方選が始まる。4月12日と26日の2回にわけて、全国で1千近くの選挙が行われる。

 知事選では、北海道と大分で自・公の与党と民主党など野党が推す候補らによる対決となる。1月の佐賀知事選の農協改革のように、安倍政権の政策が争点となった知事選で敗北が続いた与党が踏ん張るか、先の衆院選で振るわなかった民主党が巻き返すかが注目される。

 一方、自治体の半数が「消滅可能性都市」になるとの民間研究組織の報告が発表され、首相が地方にも知恵を出すよう求める「地方創生」を打ち出してから初めての統一選だ。

 この状況をどう受け止め、未来にどう生かしていくのか。まさに自治の真価が問われる選挙となる。

 統一選は回を追うごとに低調になっている。昭和30年代までは80%前後だった各選挙の投票率は右肩下がりで、4年前の前回は50%前後に落ちた。

 無投票も目立つ。前回の無投票当選者の割合は市長17%、町村長47・9%、道府県議17・6%、町村議20・2%。町村部での高さが目立つ。候補者が定数よりわずかに多い議員選挙も含めれば、無風状態はさらに広がっていると見られる。

 自治体のかじ取りをできる人材が少ない、意欲はあっても職を捨てて立候補するリスクはとりにくい――。長らく指摘されてきた問題である。

 住民との垣根を低くするため、夜間議会や報告会を開くといった取り組みも増えてきた。だが、議会を通じて住民が自治にもっと参加していくには、抜本的な改革が必要だ。

 例えば、1人の有権者が複数票を投じる「制限連記制」を導入するなど、女性や若者でも当選しやすい選挙制度にする。夜間や休日を定例会にしてサラリーマンでも議員になりやすくする。住民が議会で直接発言できる機会を増やす。有識者からはこんな提案が出ている。

 要は議会を一部の「プロ」だけに独占させないことだ。そうすれば、政務活動費を特権のように浪費することもできなくなるはずだ。

 もちろん、一挙に進まない現実がある。だが、「消滅可能性」の深刻な危機は、政府の振り付けのもと役所主導で進められてきた「おまかせ自治」を改めるチャンスではないか。

 そんな志をもった候補者は、あなたの地元にはいないだろうか。短い選挙期間だが、じっくりと見極めてみたい。