1960年代という熱い時代

村上さんこんにちは。『羊をめぐる冒険』が一番好きです。でも『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだときは小説の中の世界がなんだかこれまでよりもずっと近いような感覚を覚えました。

私は1960年代の日本文学と文化を研究しています。まだまだたまごです。村上さんはずばりこの熱い時代を経験した世代だと思いますが、当時読んでいてご自分にとって圧倒的だった作品はありますか? あるいは音楽でよく聴いていた曲はありますか? よかったら教えてください。よろしくお願いいたします。
(フランシス、女性、37歳、研究者)

1960年代に同時代的に読んで打たれたものというと、やはりヴォネガットとブローティガンは大きいですね。そうか、こういうやり方もあったんだ、みたいな清新さがありました。それからカポーティの『冷血』も背中から冷や水を浴びせられたような衝撃がありました。音楽では僕はドアーズのファンでした。当時はストーンズよりもビートルズよりも、ドアーズに惹かれていたかも。映画は「イージー・ライダー」に痺れました(今見ると、そんなでもないけど)。「2001年宇宙の旅」もショッキングだったな。有楽町のテアトル東京の大画面で見て、ひっくりかえったことを覚えています。今にして思えば、なんだかほとんど毎日が軽い衝撃みたいな時代だったな。あるいは僕が感じすぎだったのかもしれませんが。

村上春樹拝