グリット(Grit)という言葉がある.
日本語では、不屈の精神や意志の力と訳されることが多い。
ペンシルベニア大学の心理学者、Angela Duckworth氏によると、このグリットこそが人生における成功の鍵だという。

YouTubeでは、
彼女がTEDで語ったセミナーを聞くことができる。
スピーチの内容を簡単にまとめると、以下のようなものになる。
1、成功にはIQや生まれつきの才能は関係なく、 鍵はグリットにある。
2、グリットとは、未来に向かって熱心に、根気強く長期的にやり遂げる力のこと。
3、グリットと生まれつきの才能は無関係で、努力によって伸ばすことができる。
彼女は27歳のとき、経営コンサルティングの仕事から教師へと転職し、ニューヨークの公立学校で数学を教えた。
その中で驚いたのは、テストの点数が高い生徒と、低い生徒との違いはIQだけではなかったということ。
最も良い成績をとった生徒の何人かは、特に高いIQを持っていなかった。
また、IQの高い生徒たちが良い成績をとったわけでもなかった。
その違いが何なのか、彼女は考えた。
現在のところ脳の学習能力を数値で測定できるものはIQだけである。
しかし、社会に出て成功することが、IQの高さや賢さでなかったら?
もし、意志の力が関係していたら?
彼女はそのことに興味を持ち、思い切って先生を辞め、心理学者になるために大学院に通い始める。
そこで、あらゆるレベルにおける競争下におかれた大人や子供を研究をする。
成功しているのは誰か?その理由は何なのか?
大勢の研究チームと共にウェスト・ポイント軍士官学校に行き、どの候補生が軍事訓練にとどまり、どの候補生がドロップアウトするかを調査したり、一般企業の中で、仕事を続けられるのはどのセールスマンで、誰が最もお金を稼ぐのかを調べた。
様々な状況下で、成功の予測因子として1つの共通点が見えてきた。
それはコミュニケーション能力でも、IQでもなく、グリットと呼ばれる力だった。
グリットとは、長期的なゴールに対する熱心さと根気強さのことであり、精神的なスタミナであり、未来へと向かっていく力のこと。
描いている未来を、現実のものとする力。
人生をマラソンに例えれば、自分の思い描いているタイムで完走する能力ともいえるだろう。
シカゴの公立学校で、何千もの高校2年生にグリット調査をした結果、グリットの高い生徒はほかの生徒よりもはるかに卒業する率が高いというデータが得られたという。
さらに興味深いことに、グリットの能力はIQの高さとは全く関係がないどころか、むしろ反比例しているケースもあったという。
失敗してやめれば、それは失敗として終わる。
成功まで続ければ、それは成功になる。
スタンフォード大学のキャロル・ドウェック博士が考案した「グロースマインドセット」は子供のグリットを伸ばす効果的な方法として知られている。
学習能力には限界はなく、おのおのの努力によって未来を変えることができるということを教えること。
チャレンジすること、努力することの必要性、つまりグリットの大切さを子供たちが学ぶことで、難しい問題に直面した時も恐れずに挑戦することがわかったという。
投資で成功するのも、必ずしもIQが高い人ではない。
やり遂げる力、グリットこそ、長期的な成功を求められるトレーディング稼業において最も必要とされる要素かもしれない。