社説:地価の回復傾向 デフレ克服の追い風に

毎日新聞 2015年03月25日 02時30分

 国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は、商業地が全国平均で7年ぶりに前年比横ばいにまで回復し、住宅地も5年連続で下落幅を縮小して回復傾向が強まった。

 地価は東京、大阪、名古屋の「3大都市圏」や「地方中枢都市」の札幌、仙台、広島、福岡を中心に上昇局面に入っている。上昇率では地方中枢都市が3大都市圏を上回った。大規模再開発や住宅購入が、割安感のある地方都市に波及しつつあることがうかがえる。

 需要に支えられた地価の回復は、景気の持ち直しを示すものとして歓迎できる。資産価値が上がることでデフレ懸念を後退させ、企業の設備投資や家庭の消費を促す可能性もある。経済成長のきっかけになり得るということだ。この流れを好循環につなげたい。

 もっとも、投資としての不動産取引が増加していることは気にかかる。とりわけ都市部の商業地では、地価上昇への期待が先行し、不動産投資信託(REIT)や海外投資家による取引が活発になっている。2020年の東京五輪開催をにらんだ都内の湾岸部などでは、ミニバブルともいえる過熱感が生まれているようだ。

 背景には、日銀の大規模緩和をはじめとした世界的な金融緩和で金利が下がり、投資資金が調達しやすくなっていることや、大幅な円安によって日本の不動産の割安感が強まったことがあげられる。

 不動産取引はいったん過熱すると冷やすのが難しい。実需を超えた投機的な取引への目配りが必要だ。

 一方、地方では県庁所在地などで穏やかな回復基調を示しているものの、調査地点の7割近くでは下落が続いている。都市と地方の間で進展した二極化が、地方の中でも進んでいる格好だ。

 地価は、地域の活気を映す鏡ともいえる。人口減少、経済減速という悪循環を抑えなければ、地方は衰退するばかりだ。それぞれの地域の特色を生かし、観光などの産業を振興して雇用の場を確保したり、特徴ある子育て支援などの行政サービスで若者をひきつけたりする工夫が求められる。

 気がかりな動きは、東日本大震災の被災地でも出ている。住宅地の上昇率で全国1位から10位までを福島県いわき市が占めた。福島第1原発事故による放射線量が高い地域から移転する住民の受け皿になっているためだ。

 岩手県や宮城県の沿岸高台地区でも一時の勢いこそ一段落したものの、地価上昇は続いている。被災者の生活再建を進めるためにも、短期的な転売目的の取引などを監視し、抑制する必要がある。

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