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いつの時代にあっても、人を動かすのは「感動」です。
「理屈」では人は動きません。人は感じて動きます。
だから「感動」という言葉はありますが、理屈で動く「理動」という言葉は世界中、どこにもありません。

いくら理論を説かれたところで、人は動きません。動いても力がはいりません。
人はそこに何かを感じたときにこそ、行動を始めるからです。

幕末維新も、幕藩体制の老朽化を憂うだけでは世の中は動きませんでした。
黒船来航の衝撃があり、不平等な日米和親条約への怒りがあり、さらに新しい時代への変革を押しつぶそうとした安政の大獄などがあって、武士たちの心に火が点きました。
そして一度点いた火は、まさに燃え上がる怒涛のような炎となったわけです。

もっと前の時代の「応仁の乱」(1467-1477)は、畿内を中心に全国を火の海にした大乱でした。
乱の発生原因は種々言われていますが、兄弟の争いという説が有力ではありますが、だからといってそれだけの理由では、あれだけ大きな内乱の説明がつきません。
それどころか、応仁の乱は、乱そのものがおさまっても、その後も何十年にわたって強盗や傷害、あるいは戦(いくさ)が続き、結果、世は戦国動乱の時代へと移行していったのです。

応仁の乱は、乱自体が収束しても、世に平穏は戻りませんでした。
たとえば京の都では、細川家の家人たちが西園寺家の屋敷に押し入って、そこにいた息女たちが着ていた衣類を剥ぎとって持ち帰ってしまったなどという事件も頻発しています。
貴族たちの荘園も、次々と武士や一揆衆に横取りされました。

この時代は、力さえあれば、なんでも手に入れることができると考えられた時代だったのです。
とにもかくにも強ければ、何をやっても許される。弱肉強食の畜生道がはびこるたいへんな時代だったわけです。
そしてこの時代が続けば日本は、お隣の半島や、その向こうの自称大国のように、力と支配、支配と隷属、上下関係だけが全ての苛斂誅求なウシハク国になってしまうところでした。




ところが日本は、そうはなりませんでした。
あらゆる価値観が崩壊し、力こそ正義となった時代の中にあって、しっかりと秩序と治安、世の中の平和と平穏、そしてシラス国を取り戻す種が蒔かれ、それが成長していったのです。

もうひとつ申し上げるなら、先般行われた伊勢神宮の式年遷宮ですが、神宮開闢以来、式年遷宮が国費で行われなかった時代は、この応仁の乱から始まるおよそ百年の時代と、終戦以降占領下に置かれた戦後の70年間だけです。
残念なことですが、応仁の乱以降の荒れた時代と、一見平和で豊かに見えるいまの日本は、実は「価値観の崩壊」という意味においては、まったく同じ状況にあります。

国が荒れるということは、人々の価値観が崩壊し、人々の心が荒むことをいいます。
では、応仁の乱がなぜ起きたのか。
実は、乱が始まる63年前に三代将軍の足利義満が「日明貿易」を開始しています。
足利義満は、明の皇帝から「日本国王源道義(にほんこくおうげんどうぎ)」という封号を与えられて、柵封王となったのです。
そしてなんと、「日本国王」は、室町幕府の公式な外交称号となっています。

日本は、たしかに「倭国」と呼ばれた弥生時代、支那の皇帝から柵封を受けていた時代はありました。
けれど、それも西暦478年に倭王武(雄略天皇)が宋に使いを送ったのを最後に、以降、一切日本は柵封を受けず、支那の王朝に支配された国ではなく、どこまでも対等な国を築いてきました。

607年の遣隋使においても「日出ずる処の天子、日没する処の天子」と、支那の皇帝と完全に「対等」な国であることを堂々と主張していますし、645年には「大化」という日本独自の元号を定めて、その元号はいまでも明治、大正、昭和、平成へとつながっています。
支那の柵封国(支那の支配地)は、支那皇帝の使う元号を使いますから、日本が独自の元号を持っているということは、日本は、支那に支配された柵封国ではなく、完全な独立国として、国が運営されてきたことを表します。
だからこそ、唐と高麗の連合軍による元寇も、日本は堂々と撃退しています。

足利政権は、もともと誕生が、鎌倉時代の「田分け」の相続制度によって、狭小に分割していた土地を、あらためて各地の領主たちのもとに広大な農地に統合するという、素晴らしい事を実現した一方で、全国の領主たちの領地を安堵した分、幕府時代の保有する土地は、けっして大なものではありませんでした。

この結果、足利政権は土地からあがる財政基盤が弱く、彼らはこれを補うために日明貿易(朱印船貿易)を始めるわけです。
当時のこの貿易は、記録がありますが、日本の文物を支那に持参すると20倍の値段で売れ、儲かったお金で支那で物品を買って日本に持ち帰り、これを売ると、またまた20倍で売れるというタイヘンなシロモノでした。
つまり一回、日明貿易をすると、航海に成功しさえすれば100万円の元手が、20倍×20倍で、400倍、つまり4億円に大化けしました。

このことが足利政権の台所をどれだけ潤したか。想像するに余りあります。
そして「よっしゃ、よっしゃ」の金権政治は、結果として極端な貧富の差を生むわけです。
そして貧窮のどん底に突き落とされた人々は、結果、野盗になるしか、生きる術がなくなってしまう。

そこへもってきて、日明貿易には、海外の素晴らしい「文物」とともに、濊族や支那人などの「人」も、もれなくついてくるわけです。
彼らの常識は、日本人の常識と異なります。
その彼らが、日本に住み着き、中には、日本人のような顔をして、日本人の常識では計り知れないような残酷な事件を引き起こす。
それが次々と行われれば、自衛のために人々は武器を手にします。
それが集団化すれば、巨大な一揆勢力になります。
この時代、一向一揆衆が国司を追い払って、自分たちの自治領を築いたりもしています。

こうして次第に、どうにもならないところまで国が荒れて行ったのが、実は足利政権時代であったわけです。
ところがその足利政権は、自分たちがしていることによって国が荒れていることが理解できない。
自分たちだけは、交易で豊かだからです。

要するに、ものすごく単純化してわかりやすくすれば、足利政権というのは、今で言ったら民◯党政権と同じです。
親中親韓売国路線であり、彼らにとっては、自分たちの関連企業が儲かることが「景気回復」であり、そのために世の中がどれだけ苦しくなろうが、一切知ったことではない。よく似ていると思います。

そんな体制が何十年か続いたら、国がどれだけめちゃくちゃになるか。
日本は、実際にそれを15世紀に経験してきているわけです。

ところがここに面白いことが起こります。
足利政権は、カネとヒマがありますから、連歌師を招いたり、源氏物語、伊勢物語などの教室を開いたりはしているのです。
つまり彼らの贅沢の中には、古くからの公家たちの「典雅な公家文化」への憧れがあったわけです。
殺伐とした世の中であればあるほど、そして足利家が金に明かした贅沢な将軍家であればあるほど、中世の典雅さが求められたのかもしれません。

こうしたなかにあって、実は「百人一首」は、応仁の乱が終わる頃まで、およそ230年間も眠ったままになっていました。
というのは、百人一首が編纂されたのは、藤原定家が70歳の半ばを過ぎてからの亡くなる前の数年間で、藤原定家は、百人一首の編纂後、ほどなくして死んでしまったからです。
百人一首は、そのまま、亡くなった定家爺ちゃんの「財産」として、書庫に眠ったままになってしまうのです。

ところが応仁の乱後の荒れた世の中において、飯尾宗祇(そうぎ)という蓮歌師が、どういうきっかけか、定家の蔵書の中から、この「百人一首」を見つけ出します。
そしてその内容を、陛下の信頼の篤い三条西実隆に伝えたのです。

三条西実隆は、当時の世にあって、国内最高の和学の大家とされていた人です。
彼は、百人一首を読み解くことで、一見すると恋の歌ばかりが連なっているように見えるその歌集の中に、藤原定家の、聖徳太子以降五百年続いた平和と安定の社会の姿、世の中が崩壊していく過程で人々が願った平和への思いが明確に描かれていることを発見します。
そしてそのことを、弟子たちに伝えていくわけです。

三条西実隆 肖像下絵(酒井宇吉氏旧蔵)
三条西実隆


この弟子たちというのが、細川家であったり、駿河の今川家であったり、九州の大内家であったりするわけです。
そして本来の日本の平和で安定した姿を、彼らも感動をもって百人一首から読み取るわけです。

こうして、強ければ、武器を持ってさえ入れば、富を独占していさえすれば良いと考えられた応仁から荒れた世の中で、人々の間に徐々に、日本人として取り戻すべき価値観が、具体的なカタチと感動をもって拡散しました。

そして気がつけば、戦国大名たちにとって、目指すは個人の蓄財ではなく、京の都に上って皇室を外護し、シラス国を取り戻すことに価値観が変わっていたのです。

人を動かすのは、感動であり、感じる心です。
百人一首の本当の意味を知っても、何も感じない人もいることでしょう。
けれど、感じることができる人がいれば、その感動は、かならず広がる、伝わる。
そして右を向いても左を見ても、同じ感動を共有する人が増えれば、そこから世の中の向きは一気に変わります。

とりわけ、力こそ正義という時代にあっては、人々は常に「生きるか死ぬか」という瀬戸際に立たされています。
これが数名から数十名規模の強盗団の時代なら、とにかく力の正義だけしか感じるところはありません。
ところが勢力が大きくなると、そうした「生きるか死ぬか」という時代にあって、いわゆるお笑いのようなものは、人々は受け付けなくなるのだそうです。
そんなことよりも、人はなぜ生まれてくるのか、自分はどう生き、どう死ぬべきか、といった、深みのあるものを求めるようになります。

応仁の乱以降、ほどなくして一向宗が全国にたいへんな勢いで広がったのもそのためといえますし、同様に百人一首も、取り戻すべき日本のカタチを感動をもって伝えるものとして、たいへんな勢いで普及していくわけです。

こうして戦国大名たちの思考は、ただ「強ければ良い」というものから、「日本を取り戻す」、「朝廷を外護して本邦の泰平を取り戻す」というものに変化していきました。
そしてそのために都に上ることが、武家の生きる目的になっていくわけです。

すこし考えたらわかることです。
ただ自分さえ良ければ、強ければ良いのだという思想なら、甲斐の武田信玄も、甲斐の国に入れば良いのであって、わざわざ巨費を投じて都を目指す必要などありません。上杉謙信も今川義元も同じです。

要するに武将だけでなく、その周囲の武士たちにも、またその家族の女性たちの間にも、取り戻すべき日本の姿が明確なカタチとなっていたからこそ、彼らは都を目指したわけです。

こうして戦国の大人たちの心を変えた「百人一首」は、江戸の泰平の世になると、カルタ遊びとして、子供たちに、楽しみながら学ぶツールとして普及していきました。
意味があるものだから、普及したのです。
歌がただの恋話なら普及などしません。一時的な流行になっても、そういうものはすぐに絶えて、新しいものにとってかわられます。
続いているということは、そこに何かがあるからなのです。

学者さんたちは、事件や事故を歴史のきっかけとして大きく扱います。
なるほどその方が、歴史が学びやすいです。
けれど、いかなる事件も事故も、その前に、そうした事件や事故を起こすだけの人々の心の動きがあるわけです。
時代の要請のような、人々の価値観の動きがそこに必ずあります。

その意味で、公家の家に強盗に入って、中にいる女性たちの衣類を剥いで持って行ってしまうほど、人々の心が荒廃した時代が、どうして収束へと向かい、江戸270年の平和と繁栄の時代を迎え得ることができたか。

そういうことを考えてみると、その裏側に、百人一首のすくなからぬ影響があるように、私には思えます。
このことは、これまでのように、百人一首=恋話としか読まない解釈では、絶対に辿りつけない真実であろうかと思います。
そしてこのことは、『ねずさんの日本の心で読み解く「百人一首」: 千年の時を超えて明かされる真実』を読むと、一層明らかになり、確信に変わります。




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コメント
No title
2015/03/25(水) 07:30 | URL | junn #p4GOlP7Y[ 編集]
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2015/03/25(水) 07:46 | URL | junn #p4GOlP7Y[ 編集]
No title
 今朝も、清々しく、感動するお話をありがとうございます。
 現代の、飯尾宗行祇+三条西実隆=ねずさんですね
そのために生まれてきたのでは、と拝察いたします。
2015/03/25(水) 10:30 | URL | えっちゃん #-[ 編集]
ねずさんの百人一首のご本が、日本人の魂の琴線に触れて、多くの方々が日本の素晴らしさに目覚める大きなきっかけになると想います。幕末も、賀茂真淵、本居宣長の流れを汲む国学者がシラス国の意義を継承し伝えてきたからこそ幕末の尊皇への高まりに成ったのです。だだ、残念なのは薩摩、長州だけが政治の中枢を握り他藩の尊皇の志篤い武士が遠くに追いやれた事です。いわゆる佐幕派と言われる武士階級の多くも実質は尊皇で優秀な人材が多くいたのに朝敵にされたのが維新の汚点だと思っています。真の尊皇、シラス国の意義を日本国民の共通認識にする日が近く到来すると想いますし、そうあらねばなりません。
ねずさんの百人一首のご本を確り読ませて頂きます。
2015/03/25(水) 10:35 | URL | 大阪市民 #-[ 編集]
両陛下パラオご訪問の詳細日程、宮内庁が発表 移動や時間考慮しご宿泊は海保巡視船に
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http://aixin.jp/axbbs/kzsj/kzsj7_hdir.cgi
2015/03/25(水) 10:58 | URL | 愛信 #EBUSheBA[ 編集]
No title
なんだかこの本を買うことが使命のような気がしてきました。是非買いたいと思います。

読んでる最中に「なんだか今の時代の民〇党と同じだな」と思ってたらしっかり指摘されていて笑ってしまいました。
2015/03/25(水) 11:32 | URL | 鬼子 #-[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2015/03/25(水) 14:19 | | #[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2015/03/25(水) 14:21 | | #[ 編集]
No title
>そして「よっしゃ、よっしゃ」の金権政治は、結果として極端な貧富の差を生むわけです。

この「よっしゃ、よっしゃ」で、田中元総理を思い出しました。
今も田中元総理の人気は高いのですが、私はこの方に疑問を持っていました。
公共工事を行うことによって建設業が潤い、これの消費が産業全体に活気をもたらすとの政策が基本だったと思いますが、不要不急のものまで建設して気がついたら公共工事が産業のようになっていましたし、これをきっかけにに日本の国債は、毎年増加の一途をたどったような気がします。
そして、この頃の工事が近年寿命を迎え、保守工事と不要な建築物になったように思えます。

そうは言っても、国内の道路や交通機関のインフラ整備は必要ですから、これに防災も加えた公共工事が必要だと言うことを否定できませんが、あの頃にもう少し考えていれば、その後の日本の経済がもう少し方向性が違ったのではないかと思います。

また、日本の国全体では、建設に携わる業者が多くなりすぎていたのかも知れません。その後に、建設に関する予算を急激に減らすと、それはそれで仕事が足りなくなったら、業者の方は大変だったと思います。
例えば、無駄な工事というと怒られるでしょうけれど、瀬戸内海に3本の連絡橋はなぜ必要だったのかと思います。2本で十分でした。

今また、田中派にいた政治家が安倍首相の政策に対して注文を出しているようですが、日本の国のために頑張っておられる安倍首相に、妙な注文を出さないでいただきたいと思います。



ところで、在日外国人が数多く学校に採用されています。
彼等は教職員として勤務していますが、日教組に加盟していることはないのでしょうか?
もし加盟しているのであらば、日教組が民主党に献金している場合、外国人による献金となって、政治資金規正法に抵触する恐れはないのだろうかと思います。
2015/03/25(水) 16:06 | URL | ポッポ #-[ 編集]
ねず先生、よい本を作って下さって有難うございます。子供たちや、両親にプレゼントします。勿論、自分の為にも買います。私がいつかこの世を離れる時が来ても、本は遺ります。だから、子供たちには私の心(一部)としてこの本を持っていて欲しいのですよ。
人生の何処かで、迷った時にその迷いに応じたヒントがこの本の中から見付ける事が出来ると思います。 先人の遺された思いが、ねず先生の素晴らしい解釈と重なり、それは私の学びとなり、やがて子供たちの心となる。そんな素敵な妄想で幸せな気持ちになります。よい春になりそうです(笑)
2015/03/25(水) 16:37 | URL | 紫陽花 #-[ 編集]
No title
日宋貿易で潤った反面、社会不安をおこしたのは平氏。
平氏にあらずんば人にあらず・・とも言っていたが、
おごる平氏は久しからず・・源平合戦とあいなり没落。鎌倉幕府誕生。
平家物語の始めの文章のくだり。
・・たけき者も遂には滅びぬ、ひとへに風の前の塵におなじ


2015/03/25(水) 21:01 | URL | くすのきのこ #-[ 編集]
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私は、相手に対する尊敬の念を持たず、互譲の精神も、相手から学ぼうとする姿勢も持ち合わせない議論は、単なる空論でしかなく、簡単に言ってしまえば、単なる揶揄、いいがかりに他ならないものであると断じます。

ましてや、自分で質問を発したものについて、それぞれお忙しい皆様が、時間を割いて丁寧にご回答くださった者に対し、見下したような論調で応対するならば、それは他のコメントされる皆様、あるいは、それをお読みになる皆様にとって、非常に不愉快極まりないものとなります。

従いまして、謙譲・互譲・感謝、そして学ぶという姿勢のない連続投稿、粘着投稿に類する投稿をされた方については、以後のコメント書き込みを、管理人である私の判断で投稿の禁止措置をとらせていただきますので、あしからずご了承ください。
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