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ヤマジカズヒデ×チバユウスケ 飾らないカリスマたちの音楽談義
インタビュー・テキスト:今井智子 撮影:中村ナリコ(2015/03/25)
The Birthdayのチバユウスケと、dipのヤマジカズヒデ。どちらも強い個性のバンドを率い、ステージでの存在感は抜群で、カリスマ的なイメージでは甲乙つけ難い二人だ。けれども話せば飾り気がなく、むしろ飾らなすぎるところが無愛想に見えるのかもしれない。確かに愛想を振りまくような男たちではないが、だからインタビューなどで彼等の応えはとても具体的で痛快だ。半端に抽象的な言葉を振り回し、こちらを惑わすようなことがない。
1991年にどちらも最初のレコードを同じインディーレーベル「UK.PROJECT」からリリースし(チバはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとして)、その後はそれぞれの道を歩んで24年のキャリアを培って来た。そんな二人が近年は共演の機会が増えている。二人のクロスポイントは1980年代のカリスマ的バンドのひとつ、ザ・ルースターズ。ルーツミュージックを独特な荒々しさで演奏した4人組(大江慎也、花田裕之、井上富雄、池畑潤二)で、今もメンバー全員が一目置かれるミュージシャンとして活躍している。彼等との関わりを軸にチバとヤマジは急速に距離を縮めているようだ。21年ぶりのソロアルバム『over sleeper』をリリースしたヤマジと話をしないかとチバに提案したら、多忙なレコーディング中にもかかわらず、快諾してくれた。
ヤマジカズヒデ
The Birthday、ART-SCHOOL、THE NOVEMBERSを始めとする数多くの国内バンドからリスペクトされるバンド、dip(ディップ)。豊田利晃監督からの信頼も厚く、2014年には映画『クローズEXPLODE』に出演。この劇中歌にも使用されたアルバム『neue welt』収録曲“HASTY”のPVには豊田監督演出の下、dipのファンと公言している板尾創路氏も友情出演した。ex.THE SMITHSのジョニー・マーもファンを公言している。そんなdipのサウンドを支えるのがヤマジカズヒデである。また、ルースターズの大江慎也や池畑潤二のバンドに参加。映画『I'M FLASH!』(2012年公開)でチバユウスケ、中村達也、KenKenという日本を代表するミュージシャンと主題歌を演奏するなど日本のオルタナティブロックシーンを語る際にはかかせない人物となっている。
dip Official web site
チバユウスケ
1968年、神奈川県出身。1991年に結成し、2003年に解散したロックバンド「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」の元ボーカル。1996年にシングル“世界の終わり”でメジャーデビュー。バンド解散後は、ROSSOなど様々なバンドやプロジェクトで活動。2006年には、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの元ドラム・クハラカズユキと、ヒライハルキ、イマイアキノブ(現在はフジイケンジにメンバーチェンジ)とともに「The Birthday」を結成し活動を活発化。2012年には、ソロプロジェクト「SNAKE ON THE BEACH」を始動させ、アルバム『SNAKE ON THE BEACH』をリリース。
rockin'blues-ロッキンブルース
The Birthday - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
(ザ・ルースターズは)それまで聴いてた音楽と全然違って、突き放した印象だった。まさに「最新型のロックンロール!」って感じたんだよね。(ヤマジ)
―まずお二人の共通点と言えば、好きなアーティストがザ・ルースターズだということかと思うのですが。ルースターズが活動を始めた1980年代は、お二人が中学生や高校生の頃ですよね。当時、まわりでも流行ってたのでしょうか?
チバ:あんまりね、まわりにいなかったよ。
ヤマジ:そうなんだよね。ザ・スターリン(遠藤ミチロウ率いるパンクロックバンド)とかが流行ってたよね。あと、アナーキー(仲野茂率いるパンクロックバンド)とか。
チバ:そうそう、アナーキー。みんな学校の椅子に「亜無亜危異」って漢字のステッカー貼ってたもんね。
ヤマジ:高校生には、ルースターズはマニアックだったんだよね(笑)。
―二人はルースターズのどういうところに惹かれたのでしょう?
チバ:佇まいかな。最初に聴いたのは2枚目の『THE ROOSTERS a-GOGO』(1981年発売)。
ヤマジ:あ、俺も。それまで聴いてた音楽と全然違って、突き放した印象だった。歌詞も声も、ギターもリズムも。まさに「最新型のロックンロール!」(『THE ROOSTERS a GO-GO』のライナーノーツで大江が言っている言葉)って感じたんだよね。ルースターズはパンクではないけど、パンクを聴くきっかけになったと思う。
チバ:俺は、ルースターズはあと追いなんだよね。ジョニー・サンダース(ニューヨークパンクを代表するミュージシャンの1人。NEW YORK DOLLS、THE HEART BREAKERSの中心人物)や、Stray Cats(ブライアン・セッツァーを中心に結成された、アメリカのネオロカビリーバンド)が最初に聴いたロック。それでパンクにも興味を持ち始めて、The ClashとかSex Pistolsとかを聴いて、ルースターズとかTHE MODSとか日本のパンクに流れてる。
ヤマジ:ジョニー・サンダースは、俺も好き。
―まわりの友達が好きと言ってるようなものじゃなく、渋めをチョイスしたいという感覚がありました?
チバ:そういうのじゃないな。そんなカウンターアクション的なものじゃなくてさ。
ヤマジ:ぱっと聴いた印象だよね。直感的にこっちの方がかっこいいって。
チバ:そうそう。
―当時は、音楽の出会い方ってどういう形でした?
チバ:俺はカセットが回ってきたね。アルバム1枚入ってるのもあったけど、120分テープにいろいろな曲が混ざってるのもあった。友達や、友達の兄貴セレクションとか、先輩セレクションとかね。
ヤマジ:俺もそう。高校生の時、同じクラスの友だちがルースターズマニアで、そいつがテープをくれたの。スターリン、THE STREET SLIDERS(1983年にデビューした日本のロックバンド)、サンハウス(シーナ&ザ・ロケッツのギタリスト・鮎川誠が在籍していた、福岡出身のめんたいロックの元祖的なブルースロック、グラムロックバンド)とかも入ってたな。ジョニー・サンダースも、ルースターズを教えてくれた友達がくれたカセットに入ってて、「これが本物なんだ!」と思ったんだよね。今でも、ルーズでポップなロックンロールと、アコースティックの両面があるところが好き。
―最近の学生たちも、セレクションを作って友達に渡す習慣ってあるんですかね? もちろんカセットテープはなく、データでやり取りするだけだから……。
ヤマジ:俺、今でも友達に好きな音楽を教えてもらったりするよ。バンドやってない人の方が音楽いっぱい聴いてたりするのよ。で、いい曲教えてもらったりして。
チバ:ホントそうだよね。でも、これだけの年になってくると、新しいものがよくわからない(笑)。だからね、持ってるレコードを聴き直す方がいい。
ヤマジ:昔のを聴き直すと新しい発見もあるしね。
―チバさんはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT(以下、ミッシェル)時代はDJをよくやってたから、レコードをたくさん買ってましたよね。
チバ:あの頃は毎日のようにレコード屋に行ってた。今は、特に去年の10月ぐらいからはずっとレコーディングしてるから行かない。自分の感覚を邪魔されたくないっていうか。
ヤマジ:ああ、そういうのあるかもね。レコーディング中に新しい音を聴いて、それを取り込んだりすると、あとで絶対後悔するんだよね。「なんで軽々しく取り込んじゃったかな」って。
―他に「自分がこうなったのはこいつのせい」みたいなアーティストは?
チバ:うーん……Dr.Feelgood(ウィルコ・ジョンソンが在籍していたイギリスのロックバンド。1970年代初頭からパブロックシーンを牽引した)かな。
ヤマジ:じゃあ、俺はTelevision(1977年にデビューした、アメリカのパンクロック、ニューウェイブバンド)かな。これも誰かがくれたカセットに入ってた。
―それでチバさんはスーツの衣裳になり、ヤマジさんは……。
ヤマジ:普段着になって(笑)。
チバ:うまいこと言うね(笑)。