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なろうで流行っている異世界チートはフォークロアである 作者:狗原悠乃

異世界に惹かれる理由

 筆者はまず「何故なろうに集う人々は異世界ものを読みたがるのか」を考えてみた。

 最初に浮かんだのは「現実逃避」というキーワードだった。
 なろうの主な読者層は中高生と言われている。(もしかしたら間違っているかもしれないが、おそらく男子中高生が大半を占めているのではないだろうか。その理由は後述する)
 勉強や部活、人間関係に疲れ、ああ現実は辛くて苦しいなあ、どこか面白い所に行って帰ってこれなくなってしまいたい、と思いながらネットでタダで読める小説を探していると、「異世界」とでかでかと書いてあるサイトがある。しかもよく読んでみると「チート」「ハーレム」という言葉まである。ここは天国だろうか、ここでなら妄想が具現化されているぞ! という具合で異世界ものの読者がひとり存在することになる。(ここで「チート」「ハーレム」に反応するのが「男子」中高生とした理由である。チートという単語に馴染みが深いのは普段からRPG等のゲームに親しんでいる男子だろうし、ハーレムに反応するのは男子なら言わずもがな)

 「現実逃避」とした点について少し触れたい。
 単なる「異世界」が良いのなら何も西洋風の、魔法が当たり前にある世界でなくても、時代劇でも近未来でも近過去(七十年代の日本など)でも、もっと言えばドラッグの世界でもいい、要するに現代日本でさえなければいいのではないか。
 と最初は筆者も思った。しかしそれは違う。
 なぜなら「チート」という語句も同時に重要な要素だからである。(「ハーレム」は他の媒体でも見かけるしおまけ的な要素が強いと思われるので今回は扱わない)
 読者は現実では「チート」に振舞えない。俺最強どころかダメ人間を自称している。
 たとえばそこに「現代日本で俺が最強になる物語」が現れたとしよう。自らを真面目系クズなどと自嘲しているタイプの読者がそれを受け入れるだろうか。
 答えは否、であると思われる。
 こんなに何もかも上手くいくんだったら苦労しないわ。と白けてしまうのではないか。
 と、ここで先ほどの物語の舞台を「現代日本」から「西洋RPG風剣と魔法の世界」に変えてみよう。
 するとどうだろう。幼い頃から親しんできた、成功体験のあるあのゲームの世界なら、「最初からつよいモード」なら、こんなダメな私でも好き勝手出来るかもしれない。このように読者は受け入れるのである。
 今「成功体験」とさらっと書いてしまったが、これは結構大きな要素であると思われる。それは読者がゲーム内でレベルカンストした時の強さをあらかじめ知っているからで、人は基本的に知っていることからしか想像出来ないからだ。

 だから「異世界」と「チート」が受け入れられた。

 さてここでもうひとつ大きな疑問が残る。
 それは「異世界チートものが何故ここまで多くの読者を獲得するに至ったか」である。
 
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