異世界チートはフォークロアである
何故異世界チートものがここまで多くの読者を獲得するに至ったか。
結論から言おう。異世界チートは現代のフォークロアだからである。
噛み砕いて言おう。異世界チートは現代に生まれた御伽噺だからである。
フォークロア、つまり民間伝承は、度々そのコミュニティの願望を映す鏡となる。
たとえば「桃太郎」。桃から生まれた桃太郎はお供を連れて鬼を退治し財宝を持ち帰る。
たとえば「わらしべ長者」。ただの農民が物々交換のみで大金持ちに成り上がる。
彼らの成功は民衆の願望そのものといっていいだろう。
ストレス社会と言われて早三十年。不況と言われて早二十年。
現代社会に疲れきり飽き飽きし、どこかに逃げてしまいたいと思いつつ、自殺する勇気も無くただ漫然と生きてアニメやゲームで退屈しのぎをしている、少なくない若者達。
彼らにとって「異世界チート」は唯一の願望で心の拠り所なのではないか。
これらの小説を「評価」し、支持することで見えない他者と繋がれる「共同幻想」なのではないか。
その共同幻想を守るために、勢いあまって、ライトノベルを書かないなろう作家に向かって「あなたはラノベが書けないんじゃないか」などと暴言を吐いたり、「ラノベは純文学の進化系である」と言う評論家の戯言を真に受けたり(筆者は純文学とラノベはまったく異質のものだと思う)、異世界チート以外の作品を見ようともしなくなる。
これらの行き過ぎた発言も共同幻想を守るためだとすれば納得できる。とても許されたものではないが。
しかしこの現象は今のところなろう以外には波及していない。
とあるサイトでは「なろうのノリを他所に持ち込むな」とも言われている。
まるでネットが普及し始めた頃の2ちゃんねるのような言われようである。
異世界チートがネットに於ける2ちゃんねるのようにライトノベル界を席巻してしまうのか、なろう内の単なる流行で済んでしまうのか。
単なる流行で済んだなら筆者のこの文章は的外れなお笑い種で終わるが、もしこのまま本当にフォークロアになってしまう時が来たなら、筆者は彼らに言わなければならないことがある。
お前ら、現実みろよ。と。
そうならないことを祈っている。
だって、誰もが現実に希望を持てない世界なんて、とてもじゃないが生きていけないじゃない?
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