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ロボットスーツを医療機器に申請 難病治療に期待
3月25日 16時25分

全身の筋肉が動かなくなるなどの難病患者の治療に役立てようと立ったり、歩いたりする動きを補助して機能の改善を図るロボットスーツの開発を進めてきた茨城県つくば市のベンチャー企業が、医療機器として製造と販売をするための申請を25日、国に行いました。
承認されれば難病の新たな治療法として期待されます。
ロボットスーツは体を動かそうとする時に皮膚の表面に流れるごく弱い電流を検出して体に装着した器具をモーターで動かし、立ったり、歩いたりする動作を補助する装置です。
難病の専門医らで作る研究グループはALS=筋萎縮性側索硬化症や筋ジストロフィーなどの患者にロボットスーツを装着してもらい、歩行機能が改善するか試験を行ってきた結果、一定の有効性や安全性が確認されたということです。
これを受け、ロボットスーツを開発したつくば市のベンチャー企業「サイバーダイン」は25日、医療機器としての製造と販売をするための申請を厚生労働省に行いました。審査には1年程度かかる見通しです。
ベンチャー企業では承認が得られれば、医療費の負担軽減につながる健康保険の適用に向けた手続きも進める予定で、難病に悩む人たちの新たな治療法として期待されます。
「サイバーダイン」の山海嘉之社長は「難病患者にとって有効な治療法の開発は待ったなしだ。日本発のロボット医療機器として世界をけん引していきたい」と話しています。          

EUでは医療機器として認証

ロボットスーツは国内ではすでに高齢者のリハビリなど福祉機器として利用が始まっていますが、今回、医療機器として申請が行われたロボットスーツは全身の筋肉が動かなくなるALS=筋萎縮性側索硬化症や筋肉が萎縮していく筋ジストロフィーなどの難病治療に使うことを想定しています。
病気の原因そのものを治すことはできませんが、ロボットスーツを装着して繰り返し歩行訓練を行うことで、脳からの電気信号の伝達や運動機能の回復が期待できるということです。今後は脊髄損傷など、けがで体の動きが不自由になった人たちへの治療も視野に入れているということです。
このロボットスーツは、すでにEU=ヨーロッパ連合で医療機器として認証され、ドイツでは脊髄損傷で歩行が困難になった人の治療に使われています。労災保険で治療費の全額が賄われ、患者は無料で治療を受けることができます。また、世界最大の医療機器市場、アメリカでも医療機器としての承認審査が進められています。
日本政府はロボット産業の振興を成長戦略の柱の1つに位置づけていて、ロボットスーツの研究開発は世界をリードする技術として期待されています。

難病患者が寄せる期待

これまで有効な治療法がなかった神経や筋肉の難病患者は、ロボットスーツによる治療に大きな期待を寄せています。
ロボットスーツの有効性を確かめる試験に参加した新潟市西区の井上勝さん(66)は、全身の筋力が衰えていく神経の難病「球脊髄性筋萎縮症」を患い、長い距離を歩くことができません。
国内の患者は推計で2000人から3000人いるとされ、有効な治療法はありませんでした。
おととしから2年間、柏崎市内の病院でロボットスーツによる歩行訓練を行った結果、以前は30メートルを歩くのに2分ほどかかっていたということですが、先月には2倍の60メートルを1分半で歩くことができました。
井上さんは、「病気が進行したら歩けなくなってしまうと落ち込んでいましたが、歩ける距離が長くなってとても気分がよくなりました。自宅近くの病院でロボットスーツによる治療を受けられるようになるとありがたい」と話していました。

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