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 中国雲南省昆明の大樹営地区を今月中旬に訪ねた。かつて少数民族のウイグル族が多く暮らしていた地区だ。だが、12年前に新疆ウイグル自治区からここに来たという男性は「ウイグル族は30人ぐらいまで減った」と嘆いた。

 きっかけは、昆明で昨年3月、170人以上が死傷した切りつけ事件。ウイグル族らが起こしたとされ、事件後に大樹営のウイグル族は部屋を貸してもらえなくなった。当局の締め付けも厳しくなり、銃を持つ警察が家を見回りに来ることも日常になった。

 「私たちはテロリストじゃないのに」と別の男性もため息をついた。不安定な生活に、妻と子どもを新疆に帰した。戻っても仕事がないため自身はとどまり、スイカを売ってなんとか生計を立てる。「みんな同じ中国人じゃないか。なぜ我々だけこんな目に遭わなきゃいけない?」。70代の老人の言葉が胸に刺さった。

 地区に唯一残るという新疆料理の食堂に案内された。肉詰めのナンは絶品だったが、彼らの苦境を思うと味を楽しめなかった。帰り道、武装警察の装甲車を目にし、足取りはさらに重くなった。(金順姫)