「成果主義」偏重で
オフィスがギスギス
社員が働く環境の良し悪しは、企業の競争力に直結する。ハード面の環境としてオフィスがある一方、そこで働く社員のメンタルにソフト面で大きく影響するのが「評価制度」だ。企業の人事評価制度として、3ヵ月や半年といった短期スパンの結果にフォーカスして社員を評価する「成果主義」が注目されてから久しい。
もともとはバブル崩壊後の1990年代後半から2000年代前半にかけて、日本企業の多くが従来の年功序列型の報酬制度を維持できなくなり、それに代わるものとして成果主義を導入するブームが到来した。しかし、業績を上げるために導入したはずの成果主義は、ほとんどのケースで失敗に終わる。
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社員に「短期的」かつ「個人的」な成果を求めた負の影響として、過酷な目標設定による労働時間の増大や、自己成績アップを最優先することで生じる人間関係の悪化、労働モチベーションの減退といった多くのマイナス面が浮き彫りとなった。平たく言えば、「オフィス内の空気がギスギスした」ことによって組織がチーム力を失い、競争力の低下を招いてしまったのだ。
企業の人事を長年研究しているリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長によれば、アメリカの労働環境で発祥した成果主義の概念をそのまま日本企業に“移植”するという発想には、根本的な無理があるという。
「会社という機能集団の本質からすれば、『組織に貢献した社員に適切に報いる』という成果主義の原理原則は決して間違っていません。しかし、それを現実的に運用するのは非常に難しい。そもそも日本企業には“チームで働く”ことを前提とした風土があり、社員が力を合わせることが競争力の源泉でした。
にもかかわらず、成果主義で仕事の成果を100%個人に帰着させようとすれば、そこに無理が生じる。また、短期スパンで数字をあげることに腐心すると社員の考え方が刹那的になり、中長期的な視野でビジネスを発展させる取り組みが減るし、部下や新人の育成も疎かになってしまう。これは企業の屋台骨を揺るがす重大なリスクです」
その反省から、直近の10年間では多くの企業で「脱・成果主義」が叫ばれ、短絡的な成果偏重の評価制度をあらためる傾向が見られる。成果主義の要素を部分的に取り入れながら、その制度やオペレーションを改善して柔軟性を持たせ、より日本的な企業文化にマッチした形に慣らすという動きだ。