ベルリン=玉川透、パリ=吉田美智子、仏南東部セーヌレザルプ=青田秀樹
2015年3月25日11時44分
フランス南東部の山中に、乗客乗員計150人を乗せたドイツの格安航空会社ジャーマンウィングスの旅客機が墜落した事故で、日本外務省は25日、搭乗者リストに掲載された邦人2人について、いずれも独西部デュッセルドルフ在住の男性で、永田敏(ながたさとし)さん(60代)、佐藤淳一(さとうじゅんいち)さん(40代)と発表した。一方、AFP通信などによると、現場で飛行記録を収めたブラックボックス1個が発見された。
外務省は、実際に搭乗していたのかなどを含め安否確認を急いでいる。
発電設備などの販売を手がける西華産業(東京)によると、佐藤さんは同社の現地法人社員だという。同社の広報担当者は「搭乗していたのは弊社社員です」と話した。詳細を現在確認中という。デュッセルドルフの現地法人社員も「佐藤はうちの社員です。仕事でこの航空機を使っていたが、詳細は確認中」と対応に追われた様子だった。
一方、AFP通信によると、カズヌーブ仏内相は24日、墜落現場でブラックボックスを回収したことを明らかにすると共に、「数時間以内に分析にまわされる。事故調査が進む」と説明した。
スペインのバルセロナ発、ドイツ西部デュッセルドルフ行きのジャーマンウィングスの9525便(エアバスA320型機)は、24日午前11時(日本時間同日午後7時)ごろ、フランス南東部の山岳地帯に墜落した。旅客機には乗客144人と乗員6人の計150人が搭乗。赤ちゃん2人も含まれているという。仏メディアによると、オランド大統領は24日、「状況から見て、生存者はおそらくいないとみられる」との見方を示した。
墜落現場での捜索活動は難航している。仏政府は捜索に、救助隊員300人、軍警察300人、ヘリコプター10機、飛行機1機などを投入。だが現場は標高2千メートル級の山岳地帯。岩山が連なり、車両での接近は困難なため、ヘリなどで上空からの捜索に頼らざるを得ない。AP通信は24日、仏政府高官の話として、現場近くにヘリコプターが着陸したものの、生存者は発見できなかったと報じた。仏テレビは同日、墜落現場の上空を飛ぶヘリコプターから、黒ずんだ岩肌に事故機の残骸らしきものが大量に散乱している様子を伝えた。
仏メディアによると、仏当局者は同日夜、「安全のためヘリでの捜索はいったん打ち切り、明朝夜明けに再開する」と語った。
現場に近く、現地対策本部が置かれているセーヌレザルプの当局者の一人は朝日新聞の取材に対し、「現場は山が険しく、救助も捜索も困難だ」と語った。
ジャーマンウィングスの最高経営責任者は24日夜に再び記者会見し、航空事故の調査当局者や同社の技術者が現場に入ったと発表した。しかし、搭乗者の詳しい国籍については「確認中」としたままだった。
事故機が向かっていたデュッセルドルフ近郊のギムナジウム(日本の中高に相当)は24日、同校の生徒16人と教師2人が搭乗していた可能性があると明らかにした。スペイン語学級の10年生で、バルセロナで1週間弱の交換留学を終えて帰国する途中だったという。
25日には、ドイツのメルケル首相が墜落現場を訪れ、オランド仏大統領やスペインのラホイ首相と対応を協議する予定だ。
一方、独誌シュピーゲル(電子版)は24日、ジャーマンウィングスの事故機が墜落前日に、デュッセルドルフ空港で機体不良のため数時間、離陸できなかったと報じた。系列会社ルフトハンザの報道担当者は、同誌の取材に「機体前方の車輪の開閉扉に技術的な問題があったが、その後、完全に解決した」と説明した。
ジャーマンウィングス内部にも動揺が広がる。墜落事故を受けて24日、他の乗員らがデュッセルドルフ空港などで業務を拒否。その結果、欧州全体で約30便が欠航となったという。同社報道担当者は、業務拒否について「乗員たちの個人的な理由」と説明している。(ベルリン=玉川透、パリ=吉田美智子、仏南東部セーヌレザルプ=青田秀樹)
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