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【社会】

新座市が「慰安婦」展拒否 「啓発的事業」理由

ふるさと新座館の館長が市民団体に回答した文書のコピー

写真

 埼玉県新座市の市民団体が「慰安婦」をテーマにした中学生向けのパネル展を市施設のギャラリーで開催しようとしたところ、市教育委員会が内容を把握しないまま拒否したことが分かった。市教委は、ギャラリーの使用要領で許可しないと定めた「啓発的な事業」に当たるとするが、識者はこの要領自体も疑問視。市民団体は「表現の自由を侵害している」などと反発している。

 パネル展「中学生のための『慰安婦』展」は、「にいざジェンダー平等ネットワーク」が今月二十七日〜四月七日、市施設のふるさと新座館一階ギャラリーで、十三枚の展示を企画した。「戦後、『慰安婦』たちはどうなったのですか」といったQ&A形式の文章に、図や写真を添えている。韓国や中国、フィリピンの元慰安婦の証言も紹介している。

 共同代表の谷森桜子さん(67)らによると、一月二十二日、館長がいったん申請を受け付けたが、数時間後に「市教委の許可が必要」と電話があり、求められてパネル展のチラシを提出した。二月十日に文書で「使用要領の『啓発的な事業』に該当するため許可できない」と回答があった。

 この新座市民ギャラリー使用要領は、一九九八年に定められたとみられる。第六条では「各種事業、行事、活動等の啓発および推進を目的とするもの」は許可しないとあり、幅広く適用できるようにも読める。

 ネットワークは、使用許可を求めて市教委に請願を提出。市教委は二十四日の定例会で、全会一致で不採択とした。金子広志教育長(67)によると、館長や教育長を含む教育委員全員がパネルの内容は把握していないという。

 パネルは、東京都新宿区の「女たちの戦争と平和資料館」(wam)が制作。昨年十月から全国の希望者に貸し出し、公共施設など十七カ所で展示された。東京都三鷹市の市民団体「フィリピン元『慰安婦』支援ネット・三多摩」は一月、武蔵野市の武蔵野芸能劇場で戦争がテーマの写真展を開き、今回のパネルも展示した。

 wamの池田恵理子館長(64)は「公共施設が開催を拒否したケースは記憶にない。『慰安婦』は一九九七年度採択の中学校教科書に掲載されたことがあり、現在も高校の教科書に登場する。抗議を恐れて市教委が自主規制したのであれば由々しき問題だ」と話している。

【新座市民ギャラリー使用要領】

第6条 庁舎管理責任者は、次に該当する使用については、許可しないものとする。ただし、庁舎管理責任者が特別の事情があると認めた時は、この限りではない。

(1)宗教的活動を目的とするもの

(2)政治的活動を目的とするもの

(3)営利行為を目的とするもの

(4)各種事業、行事、活動等の啓発および推進を目的とするもの

(5)公序良俗に反するもの

◆「啓発」制限 使用要領は問題

 筑波大の手打(てうち)明敏教授(社会教育学)の話 「啓発的な事業」を制限する使用要領はおかしい。「中学生のための」とタイトルにあるなら、教育的な配慮から内容について一定の制限や条件をかけることはあり得る。

 ただ今回のケースは展示内容を十分に精査したとは思えない。日韓問題や歴史認識を背景に「慰安婦」というテーマに敏感に反応したのではないか。開催拒否は市民の学習機会を奪うもので、もっと慎重に判断するべきだ。

 

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