安倍政権は、このまま何事もなかったかのようにやり過ごすつもりなのか。

 国から補助金を受けた企業からの政治献金の問題である。

 西川前農水相が辞任した後も、安倍首相や菅官房長官、民主党の岡田代表らの政党支部、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にも同じような寄付が相次いで発覚した。

 だが、政治家側はいずれも「補助金を受けているとは知らなかった」「利益を伴わない補助金なので問題はない」などと主張している。

 一連の問題で明らかになったのは、補助金を受けた企業からの寄付が事実上、野放しになっている実態だ。企業の利益に全く結びつかない補助金は別にしても、こうした寄付は政治家への税金の環流になりかねない。企業側は罰せられるのに政治家側の責任は問われないのは、法の不備である。

 民主党は、補助金受給企業の情報開示を義務づけたり罰則を強化したりする政治資金規正法の改正を議論。維新の党は企業・団体献金を禁じる法案をすでに提出している。

 驚くのは自民党が法改正ではなく運用の見直しですまそうとしていることだ。閣僚辞任まで招いた問題なのに「のど元過ぎれば」の典型のような態度でいるのは見過ごせない。

 リクルート事件などを受け、政治腐敗防止をうたった20年前の「政治改革」の議論を思い起こしたい。

 選挙制度改革とともに、国民1人あたり年250円、総額300億円を超える国費からの政党助成制度が95年から導入された。政治家個人への企業・団体献金は5年後に禁止、政党への献金も見直すとされた。

 実際、5年後には個人への企業・団体献金は禁じられた。だが、政治家が代表する党支部への献金という形で、実質的にはいまだに抜け道のように残っている。税金との「二重取り」と批判されるゆえんだ。

 安倍首相は「企業・団体献金が即、悪いものだとは全く考えていない」「(問題は)民主主義のコストをどう分かち合うかということだ」と繰り返す。これまでの経緯を考えれば、開き直りというしかない。

 政界からは、企業・団体献金の全面禁止は現実的ではないとの声が聞こえてくる。

 すぐには無理だというなら、せめてもの一歩として、政党支部への献金という抜け道ぐらいはふさいではどうだ。この国の政治は、この程度も襟を正せないというのだろうか。