(英エコノミスト誌 2015年3月21日号)

ドルの上昇は新興国の借り手を痛めつけることになる。

米国債のデフォルト・格下げ、世界経済への影響は?

主要通貨に対して急ピッチに上昇する米ドル〔AFPBB News

 米リーマン・ブラザーズ破綻後の3カ月間、世界経済が大きく崩れ、投資家が避難先を求めて奔走する中、米ドルは主要通貨のバスケットに対して5%上昇した。過去3カ月間でドルは11%跳ね上がった。過去1年間の上げ幅は22%と、数十年ぶりの急騰を演じている。

 ドルはまだ、未踏の領域には入っていない。例えば2000年代初頭には、1ユーロは1ドルと同じ価値があった。ドルの上昇は、世界の中で活力を欠く地域、特に欧州の輸出企業を助けるだろう。

 だが、これほどの規模の動きは大抵、誰かを窮地に追い込むことになる。そして今回、窮地に追い込まれる可能性が最も高い候補は新興国にいる。

 ドルが急激に強くなっている最大の理由は理解しやすい。欧州と日本が停滞にはまり込み、中国その他の新興国が減速する中、米国経済は比較的強く見える。国際通貨基金(IMF)は米国経済が今年3.6%成長すると予測している。

 米連邦準備理事会(FRB)は資産購入プログラムを打ち切ることで、すでに金融政策を引き締め始めており、現在は一段の引き締めに向けて素地を築いている。FRBは3月半ば、当局の計画の表現に用いる言葉遣いを変え、年内に利上げに踏み切る余地を自らに与えた。実行すれば、2006年以来初の利上げとなる。

 米国の金融政策が引き締めに向かう一方、他の中央銀行が依然緩和を続けていることから、投資家はドル建て資産からより大きなリターンを得ることができる。そのため資本が大量に流れ込み、ドルが上昇するわけだ。

新興国の借り手企業はダブルパンチを食らう恐れ

 ドル高の仕組みは単純かもしれないが、その効果は決して単純ではない。外国にモノやサービスを売る米国企業は打撃を受ける。S&P500株価指数を構成する企業の利益の4分の1前後は外貨で稼がれたものだ。また、ドルの上昇はインフレ傾向を弱め、利上げのタイミングに関するFRBの判断を難しくする。

 だが、ショックが生じる可能性が最も高いのは米国外の国・地域だ。世界中の企業、特に新興国の企業は自国通貨建ての債務と比べて低い金利に誘われ、ドル建て債務をどんどん積み上げてきた。