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 ――「2年で2%の物価上昇率」を目指した大規模な金融緩和を始めて、ほぼ2年です。これまでの成果をどう評価しますか。

 「総合的に見れば所期の効果を発揮している。確かに2%の物価上昇率の達成は、消費増税や原油価格の下落による影響があり、2年ぴったりでは難しい。だが、それでも消費者物価上昇率が2%に向かって上昇し続ける基調には変化がない。デフレ脱却への道は見えてきた。雇用環境も大きく改善した」

 「特に消費増税前の2013年度をみると、大規模緩和の効果はかなり大きかった。個人消費や輸出、企業の設備投資などが増え、実質経済成長率を引き上げたからだ。消費者物価も、緩和を始める前の13年3月には、生鮮食品を除いた指数で前年比マイナス0・5%だった。それが14年3月にはプラス1・3%となり、1年間で1・8ポイントも改善した」

 ――大規模緩和で急速な円安が進み、食料など輸入品やエネルギー価格が上がっただけなのでは。

 「食料品とエネルギーを除いた消費者物価指数の上昇率をみても、13年3月はマイナス0・8%まで落ちていた。それが、1年後の14年3月にはプラス0・7%で1・5ポイントも上昇した」

 「仮に円安によるコスト・プッシュだけで消費者物価が上がったのであれば、生産や雇用が減り、失業率が上昇するというスタグフレーションになったはずだ。実際は、需要が増えたことによる物価上昇と景気回復だった。円安でコストが増えて物価が上がったという批判は適切ではない」

 ――しかし、14年度は後半にかけて物価の伸びが鈍り続けています。

 「消費増税による消費の下押し圧力は、私を含めたほとんどの専門家の想定を超えて大きく、かつ長引いた。背景にはデフレが続く中で、所得の低い層が比較的増えてきていたこともある。消費増税後の14年5月以降、増税の影響を除いた消費者物価の上昇率は低下し始めた」

 「さらに同年7月ごろから原油価格が大幅に下落し始めたため、物価上昇率の低下の速度が速まった。原油価格が半年で半値にまでなるということも想定できなかった。この二つの原因が重なり、金融緩和の効果が見えにくくなった。大規模緩和の成果をみるうえでは、消費増税と原油価格の影響を除いて考えるべきだと思う」

 ――日銀はよく、「物価の基調が変わっていない」と主張しています。