【香港=阿部哲也】中国の国有化学大手、中国化工集団は23日、イタリアのタイヤ大手ピレリを買収すると発表した。買収額は71億ユーロ(約9200億円)と、中国製造業の国外買収で過去最大級になる見通しだ。中国企業は潤沢な資金で海外進出を加速し、世界の産業再編で主役に浮上している。
中国化工とピレリの持ち株会社が同日、合意した。中国化工がタイヤ製造子会社を通じ、持ち株会社から発行済み株式の26.2%を買い取る。残りの株式もTOB(株式公開買い付け)ですべて取得する方針だ。年内にも買収手続きを終えたいとしている。提示額は1株あたり15ユーロで前週末終値(15.23ユーロ)とほぼ同額。株価は身売り観測で上昇していた。
ピレリは1872年の創業。2014年12月期の売上高は60億1800万ユーロで、中国化工によると世界シェアは5位だ。中国化工のタイヤ部門である風神輪胎の売上高は1700億円規模。中国化工の任建新董事長は同日、「世界で活躍できるタイヤ企業として市場をリードしていきたい」との声明を発表した。買収後も「ピレリ」ブランドを存続させ、約3万8千人の雇用も継続する。
タイヤ業界では1988年、世界3位だったブリヂストンが3300億円で米ファイアストンを買収し、最大手になった。中国化工も今回の買収でブリヂストンや仏ミシュラン、米グッドイヤーなどに次ぐ大手となる。
ピレリは自動車レースの最高峰「フォーミュラ・ワン(F1)」への参加などで知名度が高く、1台数千万円の超高級車市場ではシェア50%を占めるとされる。中国化工は世界新車販売の4分の1を占める最大市場を母国とするだけに、中国勢の影響力が急速に増しそうだ。
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