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WIRED VOL.15

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注目の情報技術人材育成プログラム、AIITの「enPiT」では何が学べるのか?

日本国内の15大学にて提供されている教育プログラム「enPiT」。そのうちの一校であるAIIT(産業技術大学院大学)では、最先端の情報技術を実践的に活用できる人材を目指す受講者たちが、チームごとに開発したウェブサーヴィスを発表した。昨年WIRED.jpで紹介して大きな反響を呼んだこのプログラム。1年を通して、受講者たちは実際に何を学ぶことができたのか?

 
 
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TEXT BY KYOKO FUJIMOTO
PHOTOGRAPHS BY DAIZABURO NAGASHIMA

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発表の場は、普段彼らが受講している教室を使って行われた。各チーム、教員と受講者全員の前で、開発したウェブサーヴィスのプレゼンテーションを行った。

AIIT(産業技術大学院大学)が無償で提供している教育プログラム「enPiT(Education Network for Practical Information Technologies)」。これは、文部科学省による「情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」のことで、AIITをはじめとする日本国内の15大学が情報技術を活用して、社会の具体的な課題を解決できる人材の育成を目標としたカリキュラムを組んでいる。

enPiTが対象とする教育分野は「クラウドコンピューティング」「セキュリティ」「組込みシステム」「ビジネスアプリケーション」の4分野で、そのうちAIITが提供しているのは、ビジネスアプリケーション分野のプログラムだ。なかでも同大学は、社会人にも積極的に門戸を開いており、さまざまな人材がプログラムに参加している。

このプログラムの集大成となる「産業技術大学院大学2014年度enPiTプログラム成果発表会」が、15年2月下旬に同大学にて開催された

アジャイル開発手法のひとつであるスクラムを中心に開発手法を学ぶ「スクラムコース」の5チームと、海外の大学と遠隔PBL(Project-Based Learning)を実施する「グローバルコース」の3チームが、自ら取り組んだプロジェクトを披露、優秀賞と最優秀賞が選ばれた。

実際に機能するウェブサーヴィスを開発

成果発表会のプレゼンテーションは、スクラムコースのチームから始まった。最初に壇上に立ったチーム・wassermannの作品は、ランチの店を提案する「aimai-lunch」だ。好みの男性を選ぶ感覚で写真や雰囲気、評判、または独自のアルゴリズムによる“運命”によって店舗を提案するサーヴィスを披露した。

チーム土曜日が発表したのは、3つの質問に答えるだけでおすすめの旅先を10カ所表示するという「タビノタネ〜海外旅行先レコメンドサービス」。旅行先を決めるとき、“知っている場所しか思い浮かばない”という当たり前を覆し、思いつかない場所まで提案してくれるという。

3番目のチーム・Tonikaの作品は、Twitterを利用して薬を飲み忘れないよう通知するリマインダーアプリ『TasQuel』。4番目のチーム・IRohashは、チケットの売り手と買い手をマッチングするチケット交換サイト「eXtick」を発表し、Project KUAが温泉情報に特化した地図情報サーヴィス「Qua Map」を披露し、スクラムコースの発表を締めくくった。

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海外の学生とチームを組む「グローバルコース」の発表は、すべて英語で行われる。

グローバルコースの発表は、すべて英語にて行われた。グローバルコースのトップバッターは、ロボット開発チームだ。AIITの学生はもちろん、ブルネイおよびニュージーランドの学生と共同でプロジェクトを進めた。完成した作品「BuddyBot System」は、慢性的な病気をもつ子どもが「薬を飲む」といったミッションを達成するたびにポイントを与え、ポイントを集めてロボットを組み立てていくというものだ。

日本人とベトナム人のチーム・Web開発Aチームは、FacebookやTwitterなどのSNSと連携し、クイズの作成や回答ができる投稿型クイズプラットフォーム「Socio Quiz」を発表し、最後のチーム・Web開発Bチームが、大学講義用ヴィデオ配信システム「BlueBee Video Hosting System」を披露。彼らは、Web開発Aチームと同じくベトナムの学生と共同で、YouTubeのAPIを利用した動画学習サーヴィスを開発した。

グローバルコースのチームは皆、海外の学生との遠隔コミュニケーションを通して開発を進めた。一般の学生ではあまり体験できない特殊な環境だったが、Web開発Aチームの学生は「言語が問題になることはない。さまざまな国の仲間とオンラインでコミュニケーションするにあたって、完璧な英語を話す必要はなく、前向きな姿勢でプロジェクトの成功に向かうことが大切だ」と述べた。

各チームのプレゼンテーションが終了後、優秀賞と最優秀賞が発表された。優秀賞にはwassermann(「aimai-lunch」)が、最優秀賞にはチーム土曜日(「タビノタネ〜海外旅行先レコメンドサービス」)が選ばれた。チーム土曜日はAIITや筑波大学、はこだて未来大学などによるenPiTビジネスアプリケーション分野ワークショップにも参加し、ここでも1位を獲得している。

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